散りゆく命と新たな事件
刃物が腹に突き刺さる。痛いと言うよりも熱い。腹部から大量の血が流れ出るのを肌で感じる。身体が徐々に冷たくなっていく恐怖で身体が震える。気力で這いずりながら外に出よう、出ようとしていると、ストーカー女は大笑いする。
「ギャハハハハハッッ!!!!」
「な、なにがおかしいんだ……」
「何故、そうも生きようとする。何故あんたは社会から見捨てられていたくせに手のひらを返されて社会に出たのに人を恨まない。人を殺さない?!」
「それが人間だろ……」
「分かんないなあ。私なら世間を恨んで、恨んで、恨んで、恨んで私を捨てたヤツら全員殺すなあ」
「そうかよ……」
大量の血が流れ出る。体育館の床は真っ赤に染まる。這いずったせいで傷口が開いたのか鋭い痛みに変わる。喋る気力すらなくなり目を閉じるしか無くなった時だった。
「死なないでよッッッ!!!」
「お前が刺したんじゃねえか」
「やめて、死なないで。お願いッッ!!!」
「ははは……」
最後に見た光景は女がポロポロと子どものように泣く姿だった。
☆☆☆
「こりゃまた派手に……」
「最近こんな感じで人が死ぬの多くないっすか?」
「あぁ、自殺が殆どだったが今回は他殺か」
55歳未だに現場の刑事をやっている。ここ数年の間に死者が増えていっていた。それも自殺が多く、今回は他殺。明らかな死への希望を見出している層が多いことがこの日本を終わらせにかかっているんだと思っていた。
「おい、立て」
「……わたしの、私のぉぉぉぉ!!!」
「お前が刺したんだろ」
「アアアアアアッッッ!!!」
「叫ぶな!」
他の刑事3人に女を連れていかせ、俺は現場のおかしい空気感を変えるために、そして現場を見てしまった生徒たちのアフターケアに回った。
「皆さん恐ろしい光景を見せてしまい申し訳ありません。生徒さんの中に具合が悪くなってしまった子はいませんか?」
特段具合の悪そうな生徒は居なかったが1人の少女が吐いてしまう。
「我慢してたんやな。すまんかった」
俺はハンカチをひとつ渡し、少女が吐いた部分も自分らで掃除することを言い、生徒たち、そして教師を避難させた。現場検証が始まったのは翌日のことだった。
「アンベさん!」
「おう、どした」
「どうやら、殺された被害者ですが我々が追っていて、他の奴らに先取りされた……」
「……あの毒親の子どもが死んだ時のか」
「えぇ」
「……しゃあない。殺したやつは捕まえたんや」
「えぇ。アンベさん俺らも次の事件行きましょ」
「あぁ」
事件は各地に渡り多発していた。それを1件1件こなしていくのは大変だったが誰かが助かる顔を見るのは大好きだった。
だがそんな俺に悲劇が襲った。
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