2章 2人目

先天性

「せ、先生。これって?」

「よく検査してみましょう」


 ☆☆☆


 私は28歳で子どもを出産した。父親は33歳と私より年上で包容力のある人だった。そんな人との子どもはとても嬉しく、喜ばしがった

 両家の父や母も子どもが出来たこと、出産に対してとても喜んでくれていた。


 腹を痛くして産んだ子どもは大きな泣き声で元気に産まれてきてくれていた。だが、産まれてからしばらくしてのことだった。妙に黒目が大きいなと感じていた。


 それだけならまだ良かったのだが、妙に涙の量が多く光を極端に嫌がっていた。まだ産まれたばかりということもあって何かしらにびっくりしているんだろうと思い込んでしまっていた。


 子どもが生まれてから2ヶ月経った頃だった。子どもの黒目が何か白く濁っているように思えた。病院に行く前に自分で調べてみようと検索をかけるとヒットしたのは【先天緑内障】というワードだった。もしそれに該当するなら早めに行った方がいいと私がソワソワと病院へ行く準備をしていると旦那は私の肩をポンと叩いた。


「な、なに?」

「どこ行くの」

「病院」

「え、なんかあった?」

「先天緑内障の可能性が」

「……車すぐ出すよ」


 旦那は家事、育児にも積極的に参加してくれる人で、車もすぐ出してくれた。私は赤ん坊を抱っこし車に乗り込み病院へ向かった。


「今日はどうされましたか?」

「あの、子どもの黒目が白く濁ってる感じがして。すごく不安で調べた【先天緑内障】じゃないかって」

「ふむ。ほかに症状ありますか?」

「えっと。これがそうなのか分からないですけど、黒目が変に大きかったり涙の量が大人と比べても多いというか」

「……調べてみましょう」

「えっと、なにか私することありますか?」

「お母さんにはお子さんが暴れてしまう可能性があるので、少しばかり抑えてもらうか、麻酔を使うか。どうかですね」

「……比較的大人しいと思うので麻酔はなしでお願いしたいです」


 検査のために赤ん坊が暴れないよう抑えながら検査を進めていった。色んな検査を行った。隅角検査や眼圧検査、専門用語が多すぎて調べるのは大変だった。


 検査が終わったのは1時間後の事だった。


「検査結果が出ました」

「は、はい」

「早期発見で良かったです。先天緑内障です」

「……そうですか」

「このまま発見できず、放置していると失明の可能性もあったので、お母さん本当によく見つけてくださいました」

「治るものですか……」

「えぇ、もちろん。今後の治療ですが眼圧低下の促進のため手術を行い様子を見ていく感じになります」

「……分かりました」

「まだ不安であればご質問を」


 病院から家に着いたのは午後16時を過ぎた頃だった。


 私は赤ん坊を寝かせて、ソファに座り込んだ。まさか元気に産まれてきてくれたと思っていた子どもが先天の病気を持ってきてしまったなんて、自分のせいだと自分を責めた。


「……ユウコ」

「ヒロ。ごめんなさい」

「え?」

「私が病気もなく産んであげれなくて」

「な、何言ってんだ。君のせいじゃないだろ!」

「ご、ごめん」

「謝らなくていいから!」


 ヒロは私の頭を優しく撫でてくれた。少し心が落ち着いた。


 数日後のこと、手術を行うこととなった。


 数時間後、無事に手術が終わった。


「ありがとうございました」

「これからは眼を守りながら、ゆっくり治していきましょう」


 私たち家族が何とか紡いだ。そんな感じに今は思えていた。だけど、この病気から私たち家族は壊れて行った。

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