第32話 恋愛? 興味深々です。
翌朝。熱も完全に下がり、体調も万全になった。
これでもう安心。そう思っていた頃が、俺にもありました……。
「恋梨君おはよう。」
「お、おおはよう。右京、さん。(か、かわいい。)」
「どうしたの恋梨君? 何だか前みたいに自信なさげ?」
右京さん可愛いな。何でこんな可愛いギャルが俺に話しかけてきてんだ?
あ、友達だからか。
「気のせい、だよ。」
「えぇ? そうかなぁ。なーんか様子が変だよねぇ。」
「昨日ちょっと熱が出て……。多分、その……せい。」
「え!? 今日は大丈夫なの?」
「う、うん。」
ヤバイ。女子と話すのがめっちゃ照れくさい。昨日までの完全無欠な俺はどこかに行ってしまったようだ。
ただでさえ右京さんは可愛くてフレンドリー。童貞で年齢=彼女いない歴のモブの俺がうっかり惚れでもしたらどう責任取ってくれるというのか。
「おはよう恋梨。今日はいつもと様子が違うな。」
「おはよう雷人。」
「恋梨君昨日熱が出たんだって。」
「マジか? 今日は休んだ方が良かったんじゃないか?」
「大丈夫大丈夫。」
本当は全く全然だいじょぶくない。女子相手にこうも照れるなんて、恋愛を諦める以前の俺に戻ったみたいじゃないか。
今の俺がミイちゃんや莉々伊ちゃんに迫られでもしたら、あっという間に食われ、骨までしゃぶり尽くされてしまうに違いない。
言うなれば、飢えた狼二匹に狙われている子羊状態というのが俺の現状だ。
学校休めば良かった。彼女欲しい。
「あまり無理すんなよ? ダメなら保健室に行け。」
「そうそう。無理は良くないからね。」
「あ、ありがとう。」
雷人はマジで神。そして右京さんはマジ女神。
女子相手に意識しないよう努めれば努める程、昨日までのように接する事が出来なくなってしまった俺は女子と話すたびにどもったり、ボーっと受業を受けたりしていたら、いつの間にか放課後になってしまった。
皆には変だと散々言われ、もしかしたら余程具合が悪いのではと心配され続けるのが少し辛い。
しかし変だ。せっかく恋愛を諦めたというのに、俺はどうしてしまったのか。
あと彼女欲しい。
「むっくんどうしたの? 今日は何か上の空だったね。まだ体調悪い?」
「え? あ、えっと……ちょっと。」
現在は恒例の放課後指導室タイム。
職権乱用教師のミイちゃんはジッと俺を覗き込んで様子を伺っている。
「うーん。体調は悪くないみたいだけど、何か悩んでる?」
鋭い。
いや、鋭いで片付かないよなこれ。どんだけ俺の事見てんだよ。俺の事好きなの?
あ、好きだったな。意識したら余計緊張してきた。
「あの、ミイ……こ先生。」
「二人っきりの時はミイちゃんでしょ?」
まつ毛長げぇ……。良い匂いもするし、顔の造形が整ってるよなぁ。
って顔が近い。やめてくれ。既に誘惑されてしまいそうだ。
マズい。俺が恋愛に興味が戻ったという事を悟られるのは危険だぞ。
「あ、ちょっと今日は……家に早く帰らないと……。」
「そうね。病み上がりだし早く帰った方が良いよね。車で送ったげる。」
なんだと……?
「いや、危ないから……一人で帰れるし。」
「危ないから送ってあげるんでしょう? 何言ってるの?」
ミイちゃんと二人きりが危ないって言ってんだけど? 主に性的な意味で。
でも良く考えればミイちゃんは超絶可愛くて巨乳だぞ。俺は何が不満なんだ?
めちゃカワじゃん。ワンチャンどころかいつでもウェルカム状態じゃん。冴えない俺からすれば天上から降り立った女神様じゃん。
付き合ってしまうのもアリかも……。
待て待て。俺はミイちゃんが好きかどうかも分からんのに失礼だろ。
「お、お願いします。」
「任せなさい。」
俺の馬鹿。本当に馬鹿。今は危険が危ないって思ったばかりじゃん。なんで流されてんだよ。
マズい。焦って頭痛が痛くなってきた。
もう自分でも何を考えているのか分からない……。
「あら担任の……。」
母よ。頼むから買い物に出掛けていて欲しかったぜ。
「川井美伊古です。むっく……武太君の体調が心配なので送ってきました。いつもは私と仲良しこよしなのに、今日はやけに無口で……。」
「わざわざすみま……仲良しこよし?」
「間違えました。お友達と仲良しこよしです。」
「え? あ、そうですか。どうせ先生が可愛いからって緊張でもしてたんでしょ? 先生は可愛いからあんたのものになりゃしないんだから、緊張しなくて良いのにね。」
なんと息子に失礼な母だろう。確かに第三者目線からはそう見えるだろうけど。
あとミイちゃんは色々と発言が危ない。
「そんな事ありません!」
「え? あの……。」
「失礼しました。息子さんは大変良い男なので、あまり心配なさらなくても大丈夫ですよ。すぐに彼女作って秒で結婚しますので。」
秒で結婚するのは無理だろ。
というかあまりミイちゃんと母さんを接触させない方が良いな。すぐにバレそうだ。
「まぁまぁ、先生ったら気を遣ってあんたを褒めてくれてるわよ? もう少し男を磨かないとね。」
「磨き過ぎて変なのに目を付けられたら面倒なのでそのままで結構です。」
「……え?」
本気でマズい。もうバレる。
「あー! 具合悪くなってきたなー! なんだか無性におかゆを爆食いしたいかもなー!」
「あんた、元気じゃない……。」
とにかくミイちゃんを早く帰そう。
「ミイちゃんは早く帰らないと風邪がうつるかも! 今日はありがとう! さあ帰って帰って!」
「え? あ、うん。お大事にね?」
ミイちゃんは車に乗って去って行った。と言ってもすぐ近くのマンションに住んでいるわけだが。
一先ずは安心だな。色々とバレる前に帰ってもらう事が出来た。今日一日の俺がおかしい原因を考えながら部屋でゆっくりしよう。
「さて、ちょっと休もうかな。」
俺が家に入ろうとするなりガシッと肩を掴まれ、まるで万力で締め付けられているかのような力を感じた。
振り返れば母が怖い顔で俺を睨んでいる。
「あんた……まさかとは思うけど、先生と付き合ってるの?」
な、なんでバレた……。
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