仲間

第15話

 とりあえず、俺は捻挫している両足が治るまで、入院することになった。右腕と両足が使えないとなると、かなり苦労が多い。そのせいで情緒も沈んでいた。

「俺、どうして男の子を助けたりなんかしたんだろう」

 俺がそう呟くと、見舞いに来た鮫島はベット横の椅子に座った。

「お前のしたことは、間違ってなんかねぇよ」

「だけど、そのせいでこんな怪我して。お前らにも迷惑かけて」

 鮫島はやれやれと言わんばかりの様子で、はぁっとため息をついた。

「あのなぁ、お前が思うほどお前は強くないんだよ。お前がいなくなると、俺らは弱小になるとでも言うのか? お前1人いなくたって、俺らは負けたりしねぇ。ちゃんと勝ってくるから。安心して見てろ」

 俺の心はふっと軽くなった。

「ってか陽介、お前生きてただけ奇跡なんだろ?」

 俺が事故に遭った時、直前に運転士がブレーキを踏んでいなかったら、今頃俺は空の上だったらしい。

「生きたくても生きられない人だっている。そもそも生まれて来れない子だっている。そんな世界で、お前はあんな事故に遭っても生きてるんだ。だったらせめて楽しそうに生きろよ。そんな暗い顔したところで、ただ時間が過ぎていくだけなんだぞ?」

 確か、本当は鮫島には弟が出来るはずだった。だけど、死産となってしまったせいで弟に会えなかったと、涙ぐみながら話してくれたのを覚えている。

 そのせいか、この言葉にはやけに深みがあった。

「わりぃ、そろそろ部活戻らなきゃ。これ、買ってきたから。これ食って元気出せよ」

 そう言って鮫島が俺に渡したビニール袋には、俺がいつも食べているエネルギーゼリーが入っていた。

「あ、ありがとうな」

 俺は去っていく鮫島に慌てて言った。鮫島は片手を挙げるだけして、病室を出て行った。

 鮫島の背中は、俺が知っているよりもずっとたくましく、大きかった。

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