第10話
「俺ら2人で、絶対甲子園行こうな!」
泣きながらあいつと約束をした。あれはもう3年も前のことだ。
中3の夏、県大会決勝。勝てば全国大会進出が決まる、大事な試合だった。
9回の裏。1点差。俺らが相手を0点に抑えれば勝てる、という状況だった。
俺がいつも通りに投げられていたら、絶対に勝てていた。だけど俺は、今までに無い程の緊張を感じてしまっていた。
最初の打者に軽々ヒットを打たれると、俺の手は震えて、コントロールなんて利かなくなってしまった。
指先に力が入らず、球速も落ちた。そしてあっという間に満塁となってしまった。
ベンチからの励ましの声も、俺の耳には届かなかった。
次の一球。
弱々しく俺の手から離れたボールは、相手のバットに綺麗に当たり、大きな弧を描いて、見事にセンターの頭を越した。
その瞬間、相手のベンチ、スタンドから大きな歓声が上がった。俺は全身の力が抜けて、その場に崩れこんだ。
あの時の悔しさはとても鮮明に覚えている。あいつと涙が枯れるまで泣いた。
そして2人で甲子園に行くことを決めたんだ。
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