運命

第9話

「あんたぁ起きなさーーーい!!!」

 俺はスマホのアラームを使わない。その代わり、毎朝俺を起こすのは『目覚まし母さん』だ。

「ほら! さっさか起きる! じゃないと遅れんで!!」

 母さんは関西出身だから、たまに語尾に関西弁が出る。そして言葉に勢いがある。

「おはよ」

「ほら、ちんたらしない! ご飯冷めるから早く降りてきなさーい!!」

 階段の下からでもはっきり通る声。近所迷惑にならないか、不安に思うこともある。俺は近所の人に申し訳なく思って、急いでリビングに向かった。

 今日の朝ご飯は鮭の塩焼き。しょっぱいから、一切れの鮭でご飯2杯は行ける。俺は飯を食いながらニュース番組を見ていた。

『大注目!! サウスポー中学生! 仲良しバッテリーの練習に潜入!』

 そんな見出しが流れると、中学3年生の野球少年が取材を受けている映像が流れた。

『これからの意気込みを教えてください。じゃあまず、ピッチャーの佐原くんから』

『俺ら2人で同じ高校に進むことが決まったので、絶対に2人で甲子園に行きたいです』

『キャッチャー川岸くんは?』

『俺も同じ気持ちです。甲子園に出て、2人でチームを勝利に導けるように、今から頑張っています』

 俺はニュースを見ながら身支度を整えていた。

「いってきまーす」

 ニュースのことを思い出すと、あの2人と過去の俺が重なった。

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