第6話

「まぁ、夢語りはここら辺にしてそろそろ帰るか」

 麦茶を飲み終えた鮫島が紙コップを捨てていた。

「そうだな」

 俺は勢いよくリュックを背負った。その時右手首が痛んだ。

「おいおい、陽介は手首脆いんだから。気をつけろよ?」

 脆いっていうのは、骨が弱いわけではなく、幼い頃の大怪我が原因。野球を見に行って、何を思ったのかファウルボールに体当たりしたらしい。

「そうだな。怪我したら甲子園行くどころの騒ぎじゃないからな」

 俺と鮫島は誰もいない真っ暗な校門を出た。

「じゃあな」

 鮫島は寮に住んでいて、帰り道は俺と真逆。だから校門ですっかり別れてしまう。

「また明日」

 俺は、自転車に跨る鮫島を背に帰路に立った。

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