識域のホロウライト

伊草いずく

1.Hollow White, Starry Sky

0.プロローグ

0-1.快晴、入道雲の下、撃鉄を落とす

 蝉の声が聞こえる。

 今を限りと身を震わす、わずか一週の残余しか持たない、短い命たちの合唱が聞こえる。

 ことの起こりはいつもその季節だった。

 肌を焼く陽射し、喉を渇かす熱い風。ビー玉を含んだガラス瓶、炭酸泡立つ冷えた甘み。

 眩しすぎる光の中で、思い出はいつでも澄み切って、いつまでも眺めていられそうなほど変わらず、輝いている。

 でも、いつかと違って、俺たちはもう知っている。

 すべての日々には、代償――失われるものがつきまとうということ。

 今、もう一度やってきたあの暑さの中で、俺たちは叶える。それぞれの心に秘めた、えられない〝願い〟を。

 支払いを要求する摂理をかたわらに、失われることが決まった大切なものを惜しみながら。望んだ結末みらいを、この世界に刻み付けるために。

 武器は空想ひとつ。賭けるのは命、ありきたりのありったけ。

 虚白と星銀――全てが願望イメージでできたこの空の下、二つのが結ぶこの話は、俺たち三人の出会いと、そして別れをめぐる、物語だ。

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