第107話 〝ルーム〟の拡張
闇夜に紛れて〝ルーム〟に入る。
別に安宿を借りて入っても良いのだが、〝ルーム〟にただ入るだけなら外の設定から入った方が楽だ。
問題は人に見られる事と、寝泊まりの黙認されている場所であるかどうか。
ぐっすり寝て起きて〝ルーム〟から出る。そこが人の家の敷地だったとしたら?
敷地に居座っている訳では無い、としてもそこで出入りしていたら不審者だろう。
それが問題無い、という奴はやれば良い。勝手にな。
だが俺はそれで「どこに隠れてた?」なんて事を聞かれたくない。
なので見極めが大事。知らない場所なら素直に野営をした方が安全だろう。
ダリーシタの街ならそろそろ問題無い場所くらいは判断出来る。
なので今日は、試しに人気の無い場所から入ってみた。
〝ルーム〟は前回のポイズンオレンジトードで稼いだ金で少し拡張している。
これまでは漫画喫茶のフラットシートくらいの広さだったが、現在は四畳半くらいの広さになっている。
倍くらいに広くなったが、敷かれていたマットは無くなってフローリングの床になった。
風呂トイレは変わらず、3点のユニットバス。
ここも拡張できる選択肢が増えていたが、金が足りず断念した。
部屋を広くするのに三万円。
結果、入室料金が掛からなくなった代わりに月に三万円が必要になった。
家賃は前払いなので、拡張と同時に引かれた。日割もなく満額が容赦なく。
これでポイズンオレンジトードで稼いだ六万円が殆ど無くなるという、ね。
ただこれで、条件を達成したようで選択肢が増えた。
家具家電が置けるようになった。
家具家電は店舗を契約する必要が無く、〝ルーム〟の設定で設置出来るようだ。
ただし設置するにはその分の広さと、また別に日本円が必要になる。
置くスペースが無ければ、日本円があっても設置できない。
最も置くスペースを作っても、買う金が無いので置けないが。
先ずは洗濯機か、それとも冷蔵庫かと悩んでいる。
今はお風呂場で手洗いしている。早急に何とかしたいが、冷蔵庫も捨てがたく悩む。
少し残金があったのでお値段以上のお店で三つ折りのマットレスを買った。
おかげで少し寝やすくなって重宝している。
それプラス〝シキ〟のペットベッドとたらい他細々を。
これで日本円の貯蓄は吹っ飛び、毎日の魔物狩りでやりくり生活に戻った。
ポイズンオレンジトードで稼いだ現地マネーは知っての通り。
こちらはあまり手を付けないで残していた所を副支部長にごっそり持っていかれた。
同じく毎日の魔物狩りでやりくりしている。
救いなのはその前に、現地産の必要物資を買っておいた事。
中古だが、鍋二つと野営用のテントを買った。
野営では周囲に他の冒険者がいる機会が多い。なので現地産を選んだ。
便利さでは日本産に劣るだろうが、テントはどうせ〝ルーム〟の出入口にする用途が主だ。なので安物を買った。
普段は広げた四畳半の片隅に畳んで置いてある。野営は今後も行うだろうから、その時に引っ張り出せば良い。
鍋も同じ。現地産の方が目立たない。
合同依頼を受けると、野営時に他のパーティと協力する事が多いらしい。先日のゴブリンの集落壊滅依頼の時もそうだった。
あの時はシチューを先輩パーティに振るまった。それがかなり好評だったらしい。それ目的でまた組もうと冗談で言われたくらいには人気があった。
作ったのがリサリサだった事もあるだろう。殆どの参加冒険者、特に男がもらいに来たくらいだ。
おかげで俺は食い損ねたが、代わりに先輩冒険者からも色々もらったので良い経験だった。
このシチューの話はどうやら広まっているらしく、サクマのパーティや狐野郎とナルシスエルフも知っていたが。
なので先日、自分たちにはくれないのかと騒がれた。
来るのを知らなかったに、わざわざ作ってる訳無いだろうに。ま、知ってても俺は作らないが。
自分の事は自分でやる。
これは八人のルール、ではなく元日本人に対して俺が求めている姿勢だ。接待なんてありえない。
鍋は今後、台所を設置出来たらそちらでも使えるだろう。
ちなみに調理器具は殆ど百均コンビニ産だが、何とかなっている。
と、色々考えるのは楽しい。だが先に立つモノが無いと何も出来ないのが現実だ。
今後は金策が優先だ。と、いつも言っている気がする。
結局貧乏暇なしで、ドカッと稼ぐか、安定した定期収入の手段がいる。
だが、約束は破られた。
ポイズンオレンジトードは当面、狩りに行かないつもりだ。行っても冒険者ギルドが喜ぶだけ。虚仮にされて尚、そんな事をしようとは思わない。
しばらくは我慢だろう。他の事を優先する。やることはいっぱい思いつく。
例えば召喚魔法とかね。
システムさんを確認すると、少し表示が変わっていた。
召喚魔法の中に、 〝蛇〟 という項目が増えてレベルが2になっている。
これは心当たりがある。昼間の狩りの結果だろう。
どうやら狩り中でも小まめに〝ルーム〟に入って確認しないといけないようだ。
さすがにパーティを組んでいると難しいが。
そのマドロアさんとは夕飯を食べに行ったが、行く前に余計な時間を取られたのであまり楽しめなかった。軽くご飯を食べながら今後の事を相談して、解散した。
一応また一緒に行動しようという話はしたが、余計な方もやらなきゃならないことではある。明日以降動かなきゃならなくなった。
それは兎も角、今日はグリーンスネークを7匹と、毒持ちのレッドスネーク4匹だった。
表示は
〝蛇〟 レベル2 (15 / 30)
となっている。15が経験値で、次のレベルアップの数字が30なのだろう。
数字はまたメモしおいて要計算だ。
一応レベルアップしているみたいだけど、変化は分からない。なにか変わったのだろうか?
「シキ、これ何か分かる?」
『んみゃ~、ふぁ~~~、何カメか?』
寝そうになっていたシキに声をかけてシステムを見てもらう。
シキもシステムは見れる。だが操作は出来ないらしい。
普段〝ルーム〟で何をしているのかと言うと、用が無ければ殆ど寝ている。
こっちは週一で魔物を狩らないと死ぬ。
それどころか毎日魔物を狩って日銭を稼がないと飢えて死ぬ、というのに。羨ましい生活だ。
『ん~~~。多分だけど食べた魔物の性質を、使える魔法に乗せられるっぽいカメ?』
何で疑問文なんだ? と思ったが、多分ハッキリと理解出来てないからだろう。
何となく分かる、俺もこちらに来てからそういう時がある。システムさんのせいだ。
シキもまたシステムさんの影響を受けているんだろう。
「ん、ありがとう。外出たら試してみる。寝てて良いよ」
「んみゅ。おやすみカメー」
魔法絡みとなると〝ルーム〟内では試せない。この中ではスキルを一切使えなくなる。
かと言ってせっかく入ったのにすぐ出るのも微妙だ。明日で良い。この後、他にやることが出て来る可能性もある。
ちなみにスキルの類は一切使えないが、体力魔力は回復する。
シキと契約してゼロになったMPは翌朝には全快していた。
アオバも烏と契約して、一度ゼロまで減ったらしい。すぐ〝ルーム〟に入って寝て回復させたらしいが。
彼氏がいたけど、野営の場だったしな。俺も立ち会ってたし。
おそらく今後、新しい魔物を見つけて契約した人も魔力がゼロになるだろう。
是非知らずにやって発情して盛って欲しい。俺のいない場所で。はっはっは、これは内緒にしておこう。
あとは鍛冶スキル。
世話になった工房に、スキルを習得した報告もいかねばならない。斧も借りたままだ。
ついでに自前で材料を用意するから、少し教えてくれないか頼んでみよう。
鉄鉱石が採れる場所も調べておこう。買う余裕はない。
出来るだけそのついでに依頼も受けたい。
最後に二階から落ちた間抜け野郎の治療だ。
ある程度条件を付けないと、当日ゴタゴタするのは目に見えている。
チームジャパンの猿どもに話させるのは確定だが、それを聞いたけど治療は手伝わない、なんて言い出される可能性がある。
歩けるくらいは回復してるんだから、適当な治療で誤魔化しても良いんだけどな。
どうせなら情報を抜くか、爆弾をぶっこむかしておきたい所。
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