第98話 拾い物は
その後順調に寄って来たゴブリンを狩り続け、夕方になる前にはござる、俺と順番にレベルアップ。
俺のレベルアップ時の全員の白けた表情と言ったらもう、ね。
マドロアとミケアは俺が上がるのを見に来たようなモノだろう。
前回のレベルアップ時に二人とは一緒にいた。ならば今回も見たい、となったのはある意味自然だと思う。前回も結構スキルを得たし。
二人と一緒に仕事した一昨日、不自然に切り上げた自覚もある。
二人ともその日にレベルアップしたのに、俺のレベルは上がる前に仕事を終わらせたし。
断っても良かったのだが、受け入れたのには俺にも目的があるからだ。
慣れて欲しいという理由だ。人に、ね。
各々が。
サユリサのところはパーティにもう一人、現地女子がいるがアオバたちは現地人と全く接点持たない。
これは後々あまり良くないだろう。大きなお世話なのは分かってるが、ついでだ。
マドロアとミケアも似たようなものなので。
二人は仲が良い。あぶれ者同士という事もあったのだろうが、知らないうちに随分親しくなっている。
だが代わりに、他の女性をシャットアウトするような感じがある。
虎人族のイリアをパーティに参加させた事があるが、あまり打ち解けなかった。
むしろ受け入れたくないような雰囲気を感じた。
俺とイリア、マドロアとミケアと別れて喋る感じになってしまい、二回目でイリアが
「やりにくくてな。何か悪いからもう参加するの止めとくよ」
と言って来て、それ以降は参加してくれなくなってしまった。
ちなみにそれ以降も何度も飲んで泊まってはしているので、俺との関係が悪くなった訳じゃない。
という事は女子同士の関わりが問題だろう。
良くならなくても良いが、少しだけ接点を持っておいてもらいたかった。
なんかあった時に知っているか、知らないかで大きく変わるだろうし。
さて、四人ともレベルが上がった。
日本人だけなら撤退後、安全な所で〝ルーム〟に入って取得スキルを確認をする流れだろう。
だが現地人であるマドロアとミケアがいるのでそれは出来ない。
これも狙いの一つ。
どこまで情報を開示するのかを、考える時間が欲しかった。
今回は街に帰ってから改めて、という事で話は通してある。
なので撤退だが、今日はダリーシタの街ではなく近くの村に戻る。そこで野営だ。
どうせ明日もレベル上げならば、同じ場所でやった方が面倒がない。
餌もそのまま使えるしね。むしろ明日はその餌が戦う、まである。
また来るのも面倒なので、今晩は全員で野営だ。
なら〝ルーム〟に入れた方が良いんじゃないかって?
それをさせない為にマドロアとミケアを連れて来た。
〝ルーム〟頼りだと他の冒険者と一緒になった時に困る。
これもせっかくだから慣らしておいた方が良いと思った。
先日の騒動後、ゴンザレスと話したときに言われた話がある。
そろそろ〝
レベルやランクに制限はない。新人でも集まって、難しめの依頼を受けて問題ない。
実際今期の新人冒険者は既に何度も組んでやっているらしい。
ただチームジャパンのぼんくらどものせいで、元日本人は
それも俺が「仲間でも子分でもないよ」とアピールした事で、今後はそれを含めて色々と話が来るだろうという事だった。
「確かに急に増えたわよ。アキノの方は何人くらい来たの?」
食事の準備をしながらリサリサと話していると、問いかけられた。
今日のシチュー当番は俺と彼女だ。
あやうく今日もカレー(甘口)になりそうだったのが、マドロアとミケアの参加を認めさせた時にシチューへと変更させた。
香辛料が強いと現地人にはきついかも知れないからね。
そういった意味でも彼女らの参加は俺には必要だったのだ。
「俺のとこまで話が来たのは三人かな」
ジャガイモみたいな野菜の皮を百均コンビニで買ったピーラーで剥きながら答える。
あの日の騒動以降、話が来たパーティ加入希望者の話だ。
俺のパーティは少し複雑で、ゴンザレスともう一人、マドロア担当の受付職員がふるいにかけてからこちらに話が来る形なので、他にあったとしても把握していない。
「いいわね。うちの所は十四~五人きてるんだけど? 何人かそっちでもらってよ」
「要りませんな」
リサリサの所は15人ほど来てるらしい。それも野郎ばっかり。
野郎に前から遠巻きに見られているとは聞いていたが、これは想像以上だ。
分からなくも無いけど。
リサリサは勿論、サユリんも美人さんだしな。
俺だって選ぶ時は多少、顔は見るし。
思春期のボーイズがワンチャン狙って、彼女らのパーティに入りたい気持ちもわかる。
だが彼女らは他にござると現地人の女性がもう一人いて、四人パーティだ。
レベル10まで上げて冒険者ランクが上がらないと五人までしかパーティを組めない。
残る枠はひとつ。
その上でサユリんは、やっぱり男性メンバーを増やしたくないらしい。
彼女は実は、まだナグホクともそこまでは打ち解けていないしな。
苦手だったものが急に大丈夫になったりはしないのだろう。
そしてもう一人の、現地人の女性も訳アリだ。
その子は過去にチームジャパンに乱暴された女性だ。性的な意味で。
初期に奴らに騙されてパーティの壁をさせられ、あまり上手く出来なかったって事で責められて、その流れで教われたらしい。
詳しくは聞いてないが、それがトラウマになっているとの事。
今回も声は掛けたが、男性が四人もいるってことで参加できなかった。
そんな男性一切お断りの状況で、野郎ばっかりがパーティに入りたがる。迷惑でしかないだろうね。
ちなみにアオバらパーティにも何件か話は来ているらしいが、こちらは問答無用で一切合切お断りである。
ダブルカップルパーティだからね。しゃーない。
「そういえば聞いた? あんたの同級生のシラトリって人、サクマの所追い出されたらしいわよ」
「ほほーう。それは初耳だ」
サクマは俺がオークレディと心の中で呼んでいる回復職の女性だ。
あそこも魔法系の装備をしている人間に偏ってたから、仕方が無いと言えば仕方が無い。
シラトリも魔法系の装備だったしな。エルフなのに。
エルフは初期設定が魔法剣士系のスキル取りだ。
なので、偏らせた編成にする事に俺は抵抗がある。
「それでなんかね。わたしたちのとこと、アオバのとこ、どっちにも加入希望出してるのよね。節操ないよね」
「・・・・・・・それはマジで節操ねぇな」
追放からの成り上がりサクセスストーリー、ではなくて寄生プレイをご希望ですか。
救えない奴。せめてどちらか一方に限定すれば良いものを。
そのアオバらは夕飯作りには参加していないので話が聞けないが。
彼女らは怪我したカラスの魔物を拾ったので、それの世話をしている。
襲って来たゴブリンが持っていた。
ゴブリンの集落から少し離れている場所で待ち伏せをしていたので、今日現れたのは恐らく斥候偵察役か、食料調達の役割で狩りをしていたゴブリンだったのだと思う。
何匹か獲物を持ったままだったゴブリンがいた。
基本的にはナグホクござるが相手をしたんだが、戦闘中に追加で現れたゴブリンは俺が始末した。
騒いでれば駆けつけて来るのは必然な訳で、最終的には俺が始末したゴブリンの方が多い。
騒ぎの場所に駆け付けて来るからね。大概は寄ってきたところを投擲でザックリだ。
何度か「そこだー」って言って茂みにナイフを投げたら、何もいなかった事もあったけど。
そうやって俺が始末した奴のうち一匹が、両手にカラスっぽい魔物を持っていた。
片方は死んでいたが、もう一匹は衰弱していたがギリギリ生きていた。
「ねぇ、あのカラスなんだけどさ、魔物なのよね? 治して大丈夫かな?」
アオバらが面倒を見ているカラスの魔物に視線をやると、リサリサがそれに気づいて尋ねて来た。
それを聞いちゃうかー。魔物だと思ってても、亀を街に連れ帰った男だよ俺は。
「耳を寄せてくれる?」
そう問うと、「息とか吹きかけないでよ」と言いながらも寄せて来てくれた。
やってやろうかと思ったけど、危ないからやめておく。
リサリサは手に包丁を持ってるからね。人参もどきを切っている最中だった。
小声でささやく。
「あのカラス多分だけど〝召喚精霊〟だよ」
言い終わるとリサリサは顔を離し、目を見開いてこちらを見るも何も言わない。
同じく目に強く力をいれて、頷いてやる。
この場所は周りに、何組も他の冒険者パーティが野営をしている。皆、間引き依頼を受けたパーティだ。
すぐ近くではマドロアとミケアもいて、料理の支度を手伝ってくれている。
言葉にしてわざわざ教えてやる必要はない。
確認出来ていないが、〝召喚魔法術〟は今回のレベルアップで確実にアクティベートされただろう。
召喚魔法が使えるようになったのは感覚的に分かる。他にもだが、今は我慢だ。
その俺の感覚に伝わって来るモノがある。
〝あれとは契約出来る〟だろうと。
見つけた時はレベルアップ前だったので気付かなかったが、今なら分かる。
この感じだと複数の召喚精霊とも問題無く契約は出来そうだ。
最もアレはアオバが助けると言ったカラスだ。
だから助けた。
それが無ければ殺して夕飯のおかずになっていただろう。
実際片割れを今、ミケアが焼いていたりする。
優先権は彼女にある。
彼女が自分で契約すると言うなら、それが良い。
そうなれば明日彼女も〝召喚魔法術〟がアクティベートされるから。
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