第87話 No rain, no rainbow ⑤ びーばっぷ
車座になった七人。
その真ん中に幼女が一人。
彼女は自分を囲む七人の中から、誰を選ぶか悩んでいる所だ。
「悩むとこカメが、やっぱりこの人にお願いしたいカメね」
選んだ先は・・・・・・・
「結局俺かい」
「無難と言えば無難でしょうか。コウさんが見つけた訳ですし」
「他に相性が良い人がいる、と言っても誤差カメよ。
断られて、次に会った人であり、相性もその次くらいに良いカメ。運命を感じるカメ」
アオバの言葉に亀幼女が言う、が、そんな運命は要らない。
「さて困ったな。俺は絶対選ばれないと思ってたのに」
日本人七人、全員が消極的で誰も「自分が契約したい」って言う人がいなかった。
そこで恨みっこ無し。亀幼女に選んでもらおうと言う話になった。
どうやら俺は失敗したらしい。
「アキノ、あんたねぇ・・・・・・・怖がってたし、選ばれない気がしてたのは分かるけどさ」
「多分ワザとネ。怖い態度見せて自分以外に任せる気だたヨ」
サユリン正解。バレテーラ。
怖がって俺は避けると思ってたんだが。
「何か嫌な理由があるんスか?」
「下ネタ的な話になるから・・・・・・・女子の前ではちょっと」
という俺の言葉でサユリンとアオバは察したらしい。
リサリサとマシロは分かってないようだ。
「言え」とせがまれ、「下ネタになるから」と返すも「それでも良いから」と譲らなかった。
「・・・・・・・
あー、亀って隠語なんだよね。アレの」
「アレじゃわかんないですよ?」
「そーよ、はっきり言いなさいよ」
言ったら怒る癖に。
ちなみにまだ左右に抱き着かれて腕を押さえられております。
この体勢で怒らせると一方的に攻撃されまくりなんだよね。
言うしかなさげだけど。
「アレはアレだよ。男性器の。
・・・・・・だからチ〇コだよ」
男性器でリサリサが真っ赤になって、マシロだけが首を傾げていた。
サユリンは下を向いてた。多分笑いを噛み殺してたな、こいつは。
アオバは面白そうに眺めてやがった。男二人は我関せず。無表情で終わるのを待ってる感じ。
「うー」
モロに表現した俺をマシロが唸りながら睨む。
怒らないって言ったから怒れないらしい。
リサリサは俺の腕を抓ってるけどね。反撃できなくて辛いっす。
内腕は敏感だからやめてほしい。
「ちなみにそれを言ってしまったのでもう、誰も引き受けないと思います。
責任取ってコウさんが契約してください」
「しまった。これが噂の孔明の罠」
確かに。言ってしまえばみんな意識する。そうなれば誰も引き受けてくれない。
「なんか可愛い名前とかつけてあげれば紛れるヨ」
「うーん、俺にとっては名前が一番問題なんだが。
昔やってた有名なヤンキー漫画があってさ。結構前に終わってたから、漫画喫茶で一気読みした事があるんだけど。
その中で主人公が自分の男性器に名前を付けてるって言うシーンがあってさ。
それが良いカメって書いてヨシキって読むんだ。なんかそれが頭に残ってて亀って聞くと仙人とかタワシよりその話が先に思い浮かぶ」
「・・・・・・」
静寂が場を包む。
何言ってんだこいつ、という空気がビンビンに突き刺さる。
そんな事言ったって仕方が無いじゃないか。
何が印象に残ってるかなんて人それぞれだし。
俺に取ってあの漫画は喧嘩のシーンなんかより、そのネタが印象深かったって話である。
途中から顔のアップのコマばっかりだったし。
「ヨシキ以外で」
「賛成」「異議なし」
俺が契約する事になった話なのに、俺の意見は聞かれずに進んで行くこの理不尽さ。
でも多分全部俺が悪い。
「と言っても名前なんて思いつかないから。
ちょっともじって『シキ』でどうかな? 女の子の姿でも問題なくない?」
今更他に良い名前は思い付きませんよ?
これが俺の精一杯。
「まぁ・・・・・・コウさんが契約するんですし。コウさんが良いならば」
「そうね。アキノが契約するんだしね」
なのに名前に干渉して来たのは何故?
別に良いけど。
「それじゃ亀っ子、改めて契約をよろしく。
それが終結された時から、お前は『シキ』と名乗ると良い」
「良く分かんなかったけど契約するカメー。
ボクは『シキ』カメね? 名前ありがとうカメー。
それじゃやるカメよー」
『シキ』がそう言うと俺と彼女?の下に同じ紋様の魔法陣が現れた。
ふむふむ、こうなるのか。
『召喚精霊〝ジュエルタートル〟より召喚契約を求められています。
契約しますか? yes / no 』
俺の脳内にシステムさんの声が響く。
「契約しますか? だって。 するする。
でもその前に魔法陣写真撮っとこ」
「軽いわね・・・・・・でもせっかくだから」
俺がスマホを取り出しカメラを起動しているとリサリサも腕から手を離してスマホを構える。
反対側ではサユリンも離れた。
あーおっぱいの感触が。ちょっと勿体ない気がする。
周囲では他のメンバーも写真を撮っておくことにしたようだ。スマホを取り出している。
電波が入らなくても記録媒体としても充分優秀だもんね、スマホ。
なので全員持ち歩いている。
カメラ機能だけで充分役に立つ。
だが残念。
「写ってませんね?」
「マシロのもだよー」
「こっちもっす」
「僕のも」
俺も同じくだ。
魔法陣、写真には写らないらしい。
摩訶不思議アドベンチャー。考えても原因は分かんないだろう。
「じゃーしゃーない。契約、ぽちっとな」
誰も知らないようで、何も反応が無かった。
だが契約は成立した。感覚で分かった。
そして再びシステムさんの声が脳内に響き渡る。
『システムより通達。
全てのプレイヤーに先駆け、プレイヤー名:アキノ コウヨウが三つの新規術法を解放したことを確認しました。
これに伴いプレイヤー名:アキノ コウヨウ に、〝先駆者〟の称号を送ります。
他のプレイヤーの皆さまも頑張ってください。
同じくこれに伴い、一時凍結されていたスキル〝生活魔法〟が解放されます。
同じくこれに伴い、〝ルーム〟内を拡張、又生活家電が設置出来るようになります。
プレイヤーの皆様の益々の活躍をお祈りいたします』
なんか伴いが多かったが、アナウンスが終わった。
「うん? この内容って・・・・・・ひょっとして」
「聞こえてますね」
「マシロも聞きました」
「やっぱ全員同じ内容なのよね?」
どうやら元日本人全員に聞こえたらしい。
「お祈りされちゃたけどね」
「それも何かの隠語?」
「隠語っていうか、就活とかで落とされると送られてくる書面に良く書かれてる〆の言葉。
別に悪い意味じゃないんだろうけどね。それで有名ってだけ・・・・・・多分」
他に使われないからそれが有名なんだろう。
昔に比べて手紙なんて送らなくなって来てるらしいし。
高校生くらいだと知らないかもね。
バイトの面接くらいならそこまでしないだろうし。
合格者にのみ連絡、とかだろう。
「先に言っておくけど俺に三つの術に心当たりはないよ?
錬金術と今得ただろう召喚魔法が術なのかな? ならその二つは確定だろうけど。
よく分からないから〝ルーム〟に入って確認して来る。
最悪、確認もしくは何かに手こずったら今日は出て来ないから、その前に話す事があれば決めておきたい」
そう言うと全員が頷き、それぞれの意見を言う。
今日は元々集まる予定ではなかった。変な亀を見つけたから俺が呼び出して集まった訳だしな。
議題はそんなにない。情報交換は別日に予定されている。
なので主にカレーの場所の話をして終わった。
どこで作るかが一番の問題だ。火を使うし、外に出たらそのまま野営だし。
可能なら全員〝ルーム〟に入れる場所が良い。それで決められずにいる。
特に長引く事なく確認は終わる。
なんにせよこうやってスムーズに話が進むのはありがたい。
最初に会った四人と一緒だったらダラダラと長引き脱線しまくっただろう。
「それじゃ〝ルーム〟に入る」
「はいー、おやすみなさいコウさん」
「何かあれば無理しないで寝てしまってください」
「こっちは勝手にやってるネ。あ、もし出て来れそうならビールが欲しいナ」
「サユリさん、飲むとアキノに絡むから駄目よ」
こっちの面子はあっさりしたもんだ。
おかげで楽で良い。
「おっと、シキを入れられるかもう一度試してみるか。
駄目だったらすまんが」
「うっす、面倒みとくから大丈夫っすよ」
「朝までここにいてもらう感じでしょうけどね」
それで問題ない。というかそれ以上出来ないだろう。
入らなかったら明日、元の場所に置いてくるしかないし
頷いて「よろしく」と言って幼女の着物の衿を掴んで・・・・・・
「あっ」
「あれー消えちゃったよ?」
「ってことは・・・・・・入ったって事?」
「・・・・・・そうなるネ」
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