第73話 露店ぶらぶら ③
「そんな物を買ってどうするニャ?」
結局目
ホクホク気分のままマドロアさんの手を引いて歩いていると、後ろから声が掛かった。
見れば後を付けていたもう一人、予定通りだ。
「そりゃ買った以上は使うに決まってますよ。何かに使えるでしょ。あなたはミケアさん、で会ってるよね?
ぱっと見は猫人族に見える彼女の名前はミケア。
先日ゴンザレスからお勧めの魔物の話をされた際、断った代案で持ち掛けられた新しいパーティメンバーの候補である。
「人手不足だから無理」というのが断った最大の理由なので、「じゃー人数を増やせばよいだろう」となるのは流れとして普通だろう。
なので彼女が俺の後を付けて来ていた事にもすぐ気づけた。
彼女は目立つ。
年齢は俺と同じ十五歳。
冒険者としての登録は季節一つ分早いらしいので少しだけ先輩だが、その程度は誤差なので同期だ。
身長は160センチ程度で中肉中背の標準体型と言った感じ。
別に顔も悪く無い。むしろ普通にしてればよい方に入るだろう。
普通にしてれば。
種族は均人族、つまりヒュームだ。
だが猫耳に猫尻尾が付いている。
前世日本風に言えばコスプレイヤーで。
すごーく簡単に言うと猫人フェチの変態だ。
作り物の猫耳に猫尻尾。
猫人族を意識したデザインの衣類に装飾品。
噂通りの恰好で、遠目に俺を見ながら後を付けて来ていた。
そりゃ話を振られりゃ、相手がどんな奴だか気になるのは人のサガ。
そんな恰好をしてりゃ、こっちもすぐ気づく。
その格好をしている理由も有名だ。
彼女は猫人族に生まれたかったらしい。だがそうは生まれなかった。
残念だがこればかりはどうにもならない。
ならば猫人族と結婚しようと考えたらしい。
せめて我が子には猫人族の血を。
そう考えた彼女は成人し、猫人族の男子に積極的にアプローチし続けていた。
万年発情期女。
そんな感じで噂になっていたので俺も知っていた。
実際は三人ほどにアプローチして振られただけらしいが。
情熱的な彼女は猫耳男子がドン引きするくらい熱烈に迫ったらしい。
それを見ていた周囲はもっとドン引きした訳だ。
奇行はすぐ噂になる。
尾ひれ背びれが付いて面白おかしく、そして大袈裟になる。
マドロアさんと同じく、パーティに入れなくなったあぶれ者が彼女だ。
「冒険者ギルドで話を聞いたニャ」
語尾にニャを付ける徹底ぶり。
個人的には嫌いじゃない。別に猫人族男子に知り合いもいない。
なので別に俺に実害は無い。ゴンザレスが話をする分には構わないと伝えてあった。
「声を掛けて来たって事は前向きに考えてくれてるって事かな?」
「ウチの事知ってるらしいニャ。それでも拒否しないのニャ?」
「俺は猫人族じゃないし、組んで仕事する分には問題無いと思うけど?」
勿論猫人族とじゃなきゃ真面目に働かない、とか宣う様ならお断りだ。
だが別に腕は悪く無いと聞いている。
彼女は槍使いで、ちゃんとした武器を保有していて今もそれを手に持っている。
新人は金が掛かる。
装備品を既に持っているというのはそれだけでプラスポイントだ。
俺なんて短剣と、さっきさらに値切って1300ゼニーで手に入れた錆びた斧しか持ってない。
そんな俺が前衛ポジのパーティに、ちゃんとした武器を持った彼女が参加してくれるなら悪い話じゃない。
むしろその恰好でよく後をつけてバレないと思ったもんだ。
「あー、でも家の手伝いがあるんニャ。二日に一回しか冒険者の仕事は出来ニャいんだけど」
「ふーん。それは初耳だ。ゴンザレスの奴め。でも正規のパーティじゃなくて今は試しに組んでるだけだからそこまでキッチリ考えなくて良いよ。
今も行ける時は行くけど、駄目な日は行かないって感じでやってるし。参加してくれるならその日は三人で出来る事を考えて、しない日は今まで通り薬草採取に行きゃいーし。そんな感じでマドロアさんはどう?」
空気だが、ゴンザレスと話したときに彼女も同席している。
その話は知ってる訳で、なんか反応して欲しいもんだが無反応だ。なので変わらず手は放していない。
黙ってるだけなら兎も角、急に逃げ出したりされると面倒だ。
仮にいなくなったらもう、俺追いかけない。探すのも面倒だ。
だがそしたら明日会った時に気まずいじゃないか。
「カップルの中に入るのも気まずいもんニャ。でも仕事しないわけにもいかニャいし。それでも良いニャらよろしくお願いする事にするニャ」
「別にカップルじゃないからそこは気にしないで良いですよ」
そう言った俺の言葉に二人が驚いた顔をした。
なんでマドロアさんまで驚く?
別にカップルじゃないけど?
むしろカップル要素皆無だろ?
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