第71話 露店ぶらぶら ①
レベル6になり、アオバたちと話し合った翌日。
薬草の採取から帰って来たあとは露店を冷やかしていた。
昨晩は良い話し合いだった。
アオバたちも無事にいくつかの魔法スキルを習得しているらしい。
ゼロよりはイチが良い。
成果が出ているおかげで関係は良好だ。
そして一番知りたかった事も知れた。
正直バグかと思っていたことが、(おそらく)仕様だと確認出来たのは大きい。
現状仮説だが。
『筋力値 上昇(小)』 『速度値 上昇(小)』 『耐久力値上昇(小)』
『器用値 上昇(小)』 『魔力値 上昇(小)』 『精神力値上昇(小)』
『運のよさ上昇(小)』
このステータス上昇スキルが
最近なんだかステータス値と計算が合わなくなってきたなと思っていたんだが、
どうも武術系スキルのレベルが上がると
『器用値 上昇(小)』『魔力値 上昇(小)』『精神力値上昇(小)』『運のよさ上昇(小)』のどれかに。
魔法系スキルのレベルが上がると
『筋力値 上昇(小)』『速度値 上昇(小)』『耐久力値上昇(小)』『器用値 上昇(小)』のどれかに。
生活系スキルのレベルが上がると
全部の中からどれかに、影響があるような感じがする。
今回ナグモが最初から持っていた『筋力値 上昇(小)』がレベル2になり、風魔法を覚えた事でなんとか仮説が立てられた感じだ。
見つけたのはホクト。あいつは時々鋭くてびっくりする。
結局その法則を見つけ出すのに時間が掛かって今日も寝不足だ。
いまのところ
① 先ずステータス上昇系スキルを持っている事。
② その時に他のスキルを持っているとステータスに影響を及ぼすのではないか。
③ 上にある通り、武術系スキルだと魔法系ステータスに。魔法スキルだと武術系ステータスに影響があるのではないか。
という所まで当たりをつけた所で、眠気が限界に来た子が何人か出たので打ち切った。
眠いのは全てこの③のせいだろう。こいつのおかげで掴み切れないでいる。
勿論まだ仮説の段階なので、今後違うパターンも出て来る可能性もある。
だが多分大きくずれてはいないだろう。
どちらにせよこうなってくると
「スキルの多さがステータスにかなり影響するよね」
という結論に至るのは誰だって同じだろう。
今日からアオバたちも、さらに本気でスキルの習得に力を入れていくらしい。
アオバたちの現在のレベルは俺より一つ上の7。
日本人に与えられた
〝異世界へ移動した日本人への餞別〟というシステムさんの恩恵を受けられるギリギリの、レベル10までは兎に角ひたすらスキル習得に励むと決めたらしい。
俺よりチャンスは少ないがそんな事小さな問題だ。
レベルが上がって恩恵を受けられなくなる前に気付けた事は大きい。
今朝採取に行く前にもう一度確認したが、レベル上げなんて後回しにすることで改めて一致した。
マドロアさんやゴンザレスには悪いけどな。こればっかりは仕方が無い。
俺たちにとって一生を左右する問題だ。
特にステータス上昇スキルを全部持っているのは現状で俺だけだ。
アオバたちも最優先でこっちを目指すらしい。
今習得しても恩恵が受けられるレベル10までにスキルレベルはMAXにならない。
だからこそ絶対に上げられるところまで取りたいのだそうだ。
ちなみに俺のステータス上昇スキルは今全部レベル3。
ベースレベルは6なのでまだ少し、ね。余裕がある。
焦る必要は無い。
「おばちゃん、これって何て名前の草?」
「これはソレッポ草って種類の草だよ。買ってくかい?」
それは知らない名前の草ですね。
資料室で見た資料には無かったと思う。
「ほうほう、どんな効用があって何に使うんです?」
「さぁ? 知らないねぇ。意味があれば分かる奴が買うだろ? 何だい、冷やかしかい? ならあっち行った行った」
このBBAぁ。特に意味も無く、適当にその辺の雑草を並べてただけくせえ。
聞いただけで手で追っ払われるのは初めての経験だよ?
こちらの世界は現代日本とは、モラルという観点が根本的に違う。
騙されて買ったならそいつが悪い、という現代日本とはまるで違う価値観なので注意が必要だ。
最も日本にもそんな考えの奴はいたけどな。
だからこそこうやって定期的に露店や店を巡って、物を見る目を養う必要がある。
そしてそうやって養った目だから気づくことがある訳で。
露店巡りを始めてから距離を開けて着いて来てる奴がいる事も俺は気づいている。
しかも女だぞ、おい。それも二人だ。
ついにモテ期が到来、なんてこともなく。一人はマドロアさんだ。
定期的に餌付けしていた効果があったようで、最近は採取が終わった後もうちらに混じりたそうにしているのは気づいていた。
けど元日本人の集まりだしねぇ。呼ぶ訳に行かないからスルーしてた。
レンタル会議室を借りて宿代わりにして、さらに内部で〝ルーム〟使ってるしね。
一人だけ〝ルーム〟を使えない人を混ぜるのも微妙じゃないか。
互いにやりにくくなるだけだ。
それにしてもついに無言で追いかけて来るようになったか。
着々とストーカー化してる。これはメンヘラ女の気がありそうだ。
変に拗らせ進化しても怖い。鞄の中に包丁とか入れてるようになられてもなぁ。
なので偶然会った事にして一緒に買い物をしておくか。
角を曲がって視線を切った隙に手頃な路地に飛び込む。
追いかけて来たところをdバッタリ! って寸法よ。
パンでも咥えてれば完璧だ。
「はーい、いらっしゃい冒険者のお兄さん。ここから先は通行料が必要ですよ」
飛び込んだ先にはゲヒた笑い顔を浮かべる汚い男が数人いやがった。
お約束の展開だ。
「ヒヒヒヒヒ、大人しく従えば命まで取らねぇからよ」
「それとも無理矢理ひん剥かれてぇか!?」
「ぼ、ぼくちんはその方が嬉しいんだな、ブハッ」
一人だけふっくらしたデブが頬を染めて言った。
のでつい殴ってしまった。
「キモイわ!!」
「てめぇ!! 俺たち『マドクル』に逆らうつもりか!」
いや、マドクルとか名前言われたって知らんし。
そういやそろそろ俺たちもなんか名前を名乗るべきじゃないかってマシロが言ってたな。
無難にサムライとかヤマトで良いんじゃねぇかな、と思ってる。それっぽいので。
間違っても勝手に日本代表みたいな名前を名乗ってはいけない。
殴り飛ばしたおデブちゃんを足蹴にしながらそう考えていた。
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