第50話 逆ギレーゼ
アオバたちと経験値の入りをチェックした二日後。
冒険者ギルドで再会した際、彼女らと一緒に行動しないかと誘われた。
「まー断られるとは思ってましたけど」
「少しは考えてくれてもいいじゃないですか」
アオバとマシロの二人が口を尖らせる。
その姿で分かるように即答で断った。
ホクトとナグモも苦笑いでそれを宥めていたので、予想はしていたのだろう。
「すまんね。集団行動が苦手なんだよね、俺。たまにならいいんだけど」
それらしい話はあの時もされていたが、男子二人とも話し合った上で一応言っただけ、だろうというのは何となく察せた。
枕に「駄目だとは思いますけど」って言ってからだったしねぇ。
経験値・日本円の入りを一緒に確認したのだから俺の返答も想像がついていただろう。
彼女らにとっては今まで四等分だったのが五等分になるだけだ。
だが俺は独占していたモノが一気に五等分である。
ちょっと耐え難いのは想像がつくだろう。
「誘ってもらったのは素直に嬉しいよ。その気持ちだけもらっておきます。それは置いといて、もうちょっと話せるかな?」
「それは構いませんけど」
「パーティに入って一緒に行動する、のでは無くて情報交換する方向で手を組まない?」
彼女らとの関係をどうしようかな~、とは考えていた。
レベルが上がる所を見せてしまったから、ね。
あれでバイバイとはいかないだろう事は想像出来た。
アオバとマシロの二人と行動したあの日の午前中に、俺のレベルは5になっている。
その時にスキル
あのタイミングでステータス上昇スキルがまさか全部レベル2になるとはね。
どうやらスキル習得の時だけで無く、スキルレベルアップでもエフェクトが出るらしい。
おかげで凄い顔されたよ。
でも一緒に行動するのはどうしてもなぁ・・・・・・必要だと思えない。
★☆
ブレザー学生服組の四人と別れて、冒険者ギルドの内部を進む。
俺の提案に対する感触は悪くなかったと思う。
だが今夜一晩考えてもらう事にした。
軽く質問し合ったりはしたので、一度持ち帰ってもらう。
こっちは良いけど向こうは四人。意思を纏める必要が有る。
勢いで話を纏めてしまい、納得して無い奴が後で裏切っても困る。
そんなことする奴は一度持ち帰ったくらいじゃ変わらないと思うけどね。
別に急ぐ話でもない。
そう、定期的に一人二人と一緒に狩りに行ってくれ、とか言われたからじゃない。
「秋野さんが入れば三人と二人で分かれて行動出来る」
とかそんな事言われると思わなかった。
決して断る方法を考える時間を作った訳じゃないんだからね!
うん、本当にどうすんべ。
俺としては基本情報交換だけで良いんだよなぁ。手に余るような仕事があればお互い手を貸し合うのは良いと思う。
予定が立てにくいし、率直に面倒くさいとしか思えない。
依頼の貼られている掲示板を見ながら考える。
現状できる依頼は無い。正確にはあるけど、無理してやるほどの事も無い。
この辺は一人だから出来る判断なんだよなぁ。
他にメンバーがいればそいつらの生活も考えなきゃならないし。
俺はスキル上げに集中したい。生活は最低限で良い。今は、だけど。
「よう、コウのあんちゃん。なんか良い依頼はあるか?」
後ろから声を掛けられた。強面受付職員ゴンザレスだ。
受付の外に出て来るのは珍しいな。
「いや、今後の為にどんな依頼があるのか見る様にしているだけ。今日も
「ふーん。あんちゃんは堅実で手が掛からねぇな。おかげで俺の出番がねぇのが困ったもんだ。かと言ってあんちゃんの同郷の奴みてぇになられても困るがな」
「同郷? にほ、ニフォン村の奴? なんかしでかしたの?」
「いや、しでかしたってほどの話でもねぇんだけどな。レベルが上がるのが早いからって調子に乗ってる感じでな、同時に登録した奴ら相手に威張り散らしてやがんだよ。
「ほほーう」
どうやら
これはブレザー学生服組からも似たような話は聞いている。マツオカグループだろう。
〝マツオカ〟というのは「日本人同士協力しよう」と言って回っていた男だ。
つまりゴヘーとか言う奴と同じチーム。冒険者として活動しているからもうパーティか。
何となくマツオカという男がリーダーっぽかったのでマツオカグループと勝手に呼んでいる。
ちなみにブレザー学生服組はアオバがリーダーっぽいのでアオバグループ。
再会した四人の同級生たちは道明寺グループだ。
こう考えるとカップルになると女子が強い。
なんでもあの後すぐに、再度二回目の会合をやったそうだ。
俺以外で集まったらしい。俺以外で。
それは良いんだけど、集まった一部とは協力関係を取り付けたらしい。となればそれが早いレベルアップのからくりだろう事は想像がつく。
って事は上手く行ってるのかね?
「こんな職業だからな、勇者とか英雄やらに憧れを持った奴がなるのは珍しくねぇんだけどよ。俺たちは選ばれた存在だ、素直に従えば悪いようにしねぇぞ! とか声高々と言って回ってるらしくてな」
あ痛たたたたたたたた。聞いてるだけで耳が痛い。
マジか。すっごく恥ずかしい存在ですよ、それ。
人の振り見て何とやら、だな。自分も物言いには気を付けよう。
「それで周りに迷惑かけないならまだマシなんだがな。まぁなんだ、あれよ、女の冒険者にな」
「えー、もうなんかしてるの?」
「おう、すきんしっぷ? とかなんとか言ってすぐに身体を触って来るらしい。で、拒否られると」
「あー、分かっちゃった。逆ギレして怒鳴り散らすんでしょ?」
「みてぇでな。ったくよぅ、困ったもんだろ?」
なるほど。なんかそんな性格の奴の話聞いた事あるー。
多分俺の中学の時の同級生の話だろうなぁ。
あれとは小学校の時も一緒だった。いや、幼稚園からだっけか。
親父にそっくりに育ったなぁ。というのが素直な感想だ。
そう、ゴヘイって奴だ。
あいつの親父は
俺たちが小学校卒業する年に更迭されたんだけど。
そりゃ上の学年の子を干して、下の学年の子をバンバン試合に出してりゃねぇ。
手伝いに来た父兄に文句言われて、逆切れして喚き散らしていた姿を良く覚えている。
子供心に嫌な記憶だった。おかげで野球が今でも嫌いだ。
生まれ変わってからも同じような事が起こるのか。
あの時干された一人が俺だ。
俺が目立つと邪魔して来るだろうなぁ、あのカス。
単純で分かりやすいから。
さてどうしてやろうか。
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