第39話 基礎値
「それじゃ、お楽しみのレベルとスタータスな。最初だから見方を一応教えておくぜ」
買い取り依頼をしたときに渡したコウヨウの冒険者証を、ゴンザレスがテーブルカウンターの上を滑らせる。そしてコウヨウの少し手前でそれをくるっと裏返した。
だが冒険者証の上にてのひらを置いて、見えないようにしている。
受付の職員を通して取引をしたのでこれで一回仕事をしたという扱いになり、そこには更新された個人情報が記載されているだろう。
「あんちゃんのレベルは1だ。ちょっと驚いたぜ?
若いのに達観してるからもうちょいと高いかと思ってたからよ」
ゴンザレスの言葉にコウヨウの後ろまで寄って来ていた三人もまた頷いた。
カウンターがあまり広くないので買い取り時は後ろに離れて待っていたのだが、ステータスには興味があるらしい。一気に人密度が濃くなった。
「それは珍しいの?」
「あんちゃんみたいに他所から移動して来れば何らかの経験してるからな、3とか4で始まる奴も珍しくなねぇよ。だけど別に1の奴も普通にいるから気にしなくて良いぜ。俺がちょっと意外だと思った、それくらいだ」
(元は三十路のおっさんだしな。若返ったからっていきなりヒャッハーとか叫べないよ。
ただ多少浮かれている部分はあるけどな。
それでも生活の心配が先に来る。なのであまり表には出せないよ)
本人に達観しているつもりはなく、周囲に気を配りながら行動しているだけだ。
だが同い年の者と比べたらどうしても冷めた感じにはなる。
こればかりは本人にもどうしようもならない。
「それに考え方によっては悪くねぇんだ。基礎値が分かるからな」
「ふむ、基礎値、とは?」
コウヨウはゴンザレスはなく、面倒を見てくれることになっている三人に聞いてみた。
教える経験値を積んで欲しいからだったが、誰も目を合わせなかった。
「はい、知らないんですね」
「がはははっ、冒険者ギルドの職員でもないと意識しないモンだからな。
レベル1のステータスってのは持って生まれたモノがもろに出てるんだぜ。だからよ、今後伸ばす方向性の参考になるんだ。
とは言ってもやっぱり好きな事をやった方が上達が早い。だからあくまでも目安でしがねぇがな」
冒険者には冒険者なりの見方がある。
対しそれに応対する冒険者ギルド職員には、職員なりの見るべき箇所がある。
これは三人が今後新人を指導する時にも役に立つだろう。
「まぁ、コウのあんちゃんのステータスじゃさっぱり参考になんねーんだけどな、がはははっ」
「えぇ~、期待させといてそりゃねーよ」
唇を尖らせるコウヨウ。ゴンザレスは軽く笑って話を続ける。
「がはははっ。んじゃ説明するぜ、あんちゃんよく覚えておけよな。
上から
となっている。初期値は必ず1から9で、10になることは無いって話だ。俺も10は見た事がねぇ。
今後のあんちゃんの行動次第で数字は変化するし、あくまでもこれは冒険者ギルドの技術で可視化したもんでしかねぇ。此処に載らないステータスもあるって言われているから参考以上にはすんなよな」
「それはわかったけど、何で俺のステータスは参考になんないのさ?」
「おう、そこな! 見ろよ、コレ。
ステータスオール〝8〟な。
全部高水準の奴とか俺ぁ初めて見たぜ? 普通は良くても5とか6くらいだからな。 8なんて一個あればかなり高評価なんだぜ?
俺はこれに何を伸ばすか、なーんてアドバイス出来ねーっての、がはははっ
まぁあんちゃんは好きに生きろってアドバイスが無難だろうな、ぶははははは」
笑いながらゴンザレスは冒険者証の上に置いてあった手をどかした。
そこに書かれていたステータスは
『 アキノ 』 レベル1
HP 30
MP 10
STR 8
AGI 8
VIT 8
INT 8
DEX 8
LUK 8
とあった。
(おーる、すてーた、す はーち?
あれ1から9までって言って無かったっけ?
普通って何? 5か6???? なにそれ美味しいの?)
大笑いするゴンザレス。その対応に目をパチクリして戸惑うコウヨウ。
意味が分からず、一瞬の静寂が場を包んだ。
その静寂を破る笑い声は、コウヨウの真後ろから聞こえてくる。
「ぷっ、くくくくっ、なにそれあははははっ」
「っ、・・・・・・・・くっ、すまん、ふははははっ」
「(プルプルプルプルプルプルプルプル) っーー、お腹痛いです」
人外と呼ばれた三人に笑われた事で、どうやら自分も人外扱いだった事に気づき赤面するコウヨウ。
(て、転生したせいなんだからねっ、一緒にしないでちょうだいっ!!
なんて言ってもなぁ。多分この感じだと他の元日本人も皆人外扱いのステータスなんだろうな。それはそれでニフォン村出身者が目立つなぁ。俺としてはあんまり目立ちたくないんだが・・・・・・
けどそれ以上に
「チートヒャッハー!」
しそうな馬鹿が出そうで不安だ。出身が同じってだけで一緒くたにされたくないんだが)
というコウヨウの不安は、後に的中する事になる。
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