第25話 冒険者登録説明会(説明回)
説明会は職員が前に立ち、受講者がその前に整列して受けるという形式で始められた。
並んだ列を後ろから長めていると、小学校の朝礼みたいだなと思った。
最も受講者は地べたにそのままだが、着席して受けられた。
なので、校長先生の話が長すぎて倒れる生徒はでないで済みそうだ。
通っていた学校は雨でも降らない限り、必ず校庭で立って受けさせられた。
雨が降っても体育館で、なんだけどね。
なので何人かでるんだよ、倒れる生徒がさ。そりゃそうだろう。
夏場でも冬場でも、そうじゃなくてもキツイよ。成長期になんの拷問だっての。
卒業した後に自分の通っていた学校は遅れていると知ったんだが、今はどうなったんだろう。
変わっていると良いのだがね。
ま、そんなことより説明会だろう。集中しよう。
職員は三人。全員強面のおっさんだった。
受講生は五人ずつの列になって整列する。それが二十列。受講者はきっちり百名のようだ。
訓練所に入る人数まで、ではなくて百名の定員制なんだろう。
訓練所自体は広く、百人が入っていてもまだ全然余裕がある。
申し込んだ順に並ばされたのでやっぱりあの四人と一緒だったが。
知らん顔で、一番後ろで説明に集中した。
最初に各自に一枚づつ、穴が開いており、そこに紐が通されたカードが配られた。
なるべく常に首から下げているようにと伝えられた。
これが〝
表面に大きく G と表記されこちらの世界の文字で何かが小さく何行か書かれている。
この冒険者証は所有者の血や毛髪などを媒介にして、特殊な魔法技術で作成されているらしい。
その為に所有者本人にしか使用できないそうだ。
なるほど。登録の申し込みをした後に一時、間を取ったのはこれを作る為だったようだ。
冒険者としての活動は、基本このカードを基に行われるらしい。
説明会というのはつまるところ、このカードの使い方の説明をする場のようだ。
まず冒険者証の基本的な使い方としては〝身分証〟となる。
そこそこの、それこそ町の出入口に兵士が立っているような場所では必ず提出を求められるらしい。
出入りが記録される。代わりに入町税が免除、もしくは安くなるそうだ。
この街に入る時は持っていた羊皮紙を見せる事で無条件で入れてもらえたが、入町税はしっかり取られた。
次からは冒険者証を見せれば、この町では税金は掛からないらしい。
ただしそれは冒険者としての仕事をしている限りで、七日間冒険者ギルドの受付を通して仕事をしていない場合税金免除どころか、冒険者証を利用しての通行も出来なくなるそうだ。
冒険者証抜きで町に出入りしたい場合は、他に身元を証明できる物が必要になるようだ。
残念ながらそんな手段に心当たりは無いので、当面は七日に一度は仕事をする必要が有る。
これはこっちの神様の定める七日に一度魔物を殺さなければならないルールと喧嘩をしないので、上手いこと両立させれば良いだろう。
尚、七日に一度は仕事をしないと入町税の免除などの特典がなくなるだけで、冒険者登録が失効する訳ではないとの事。
失効に関する猶予はGランクの場合は三十日。
約一か月の間、全く仕事をしないとランクがひとつ下がる事になるらしい。
最低ランクの為に、Gランクはそれで失効となる。だがFランクに上がっていれば猶予は六十日に伸びる。
約二か月だ。そこからさらに上がりEランクになれば九十日、約三か月の猶予が出来るという形式の模様だ。
勿論そこからランクは上げ直しになる。だが、上のランクになればなるほど失効までの間に余裕が出来る訳だ。そりゃ冒険者ギルドもランクの高いヤツは勿体ないと思うんだろう。
逆に言えば低い奴はそこまで必要とされない、という事になる。
厳密には受ける依頼の都合や、各自の事情でも多少の融通は利かせてくれるらしい。
この辺は実際に仕事を受けながら、都度都度受付で聞いて対応するように言われた。
次に冒険者証は、銀行のキャッシュカードや電子通貨の役割も兼ねる。
冒険者登録したことで、冒険者ギルド内に登録者個人の口座を作られたとの事。
これでこの支部は勿論、各地にある他の冒険者ギルド支部でも入出金が出来るようになったらしい。
冒険者ギルドではあまり現金での取引はせずに、基本的にこの口座を使って報酬の支払いをするそうだ。
最もそれは冒険者ギルド内での話なので、外では現金を使用する事になる。
受付で頼めばいつでもお金を引き出す事は出来るそうだ。
「仮に牢屋にぶち込まれた時に、口座に金があれば冒険者ギルドが代わりに動く事が出来る。金を使うなとは言わないが、問題を起こしそうな奴はなるべく一定金額を残しておけ」
と職員が言っていた。
俺の事じゃないと思うけど、念のため多少は余裕を持たせておきたいと思った。
多分賄賂とか裏金とかも必要な世界だろう。
また冒険者ギルド内の各施設を利用するのにカードキーにもなるそうだ。
ここまで一枚で出来るとは恐ろしきは魔法文明。血や髪の毛を使うだけの事はある。
ちなみに髪の毛が無い場合は、他の体毛でも爪でも皮膚でも材料は何でも良かったそうだ。
一応痛くないように気を使ってくれたらしい。
それなのに血を取る事に文句を言った奴がいたけどな。
ここまででも充分凄いと思ったが、この冒険者証はここからが本領発揮だった。
目玉は二つ。
まず一つはステータス。
「ステータスオープン」や「ステータス画面で」はなく、この冒険者証の裏面に表示されるそうだ。
俺が現在所持している冒険者証は、裏面はまだ真っ白だ。
受付を介して一度仕事をすると、それから表示されるようになるらしい。
つまり仕事をしない限り、更新したステータスを知ることが出来ない。
冒険者証の裏面に表記されるのはレベルとステータスのみだが、冒険者ギルド側はこのカードを介してこちらの所有するスキルも見れるらしい。
便利だがそれはつまり、冒険者ギルドには全て筒抜けという事になる。
最初は仕方が無いが、あまり依存しない方が良いような気がする。
そして二つ目。
筒抜けに目を瞑ってもあまり余る利点があるのがこれだ。
『パーティ編成機能』
パーティを組みたいメンバーで冒険者ギルドの受付に行き、この冒険者証を出して『パーティの申請』をするとその面子でパーティが組めるらしい。
この場合のパーティとは言葉だけの仲間では無く、〝経験値の分配〟と〝魔法範囲〟の指定が実際に可能になる。
この世界ではレベルという認識があり経験値という概念がある。
それを手助けする事が出来る機能だ。
あまり離れると効果が無いらしいが、魔物を殺したその場にいれば経験値が分配されるらしい。
パーティに関してはこちらの神様に「行けば分かる」と言われていたが、この事だろう。
支援回復特化にスキル振りをした場合など、攻撃能力のない選択肢を選んだ人間が不利だと思っていた。
だが、これなら解決する。
最初に冒険者ギルドに向かわせられたことに納得だ。
〝魔法範囲〟に関してはパーティメンバーを選んで発動させやすくなるらしいが、もう少し腕を磨いてからになるだろう、との事だった。
他にも色々あるらしいが、後は冒険者として活動しながら確認してくれとの事だった。
確かにやってみないと分からない事が多いだろうから仕方が無い。
最後に
「ステータスやスキルだけでなく、この冒険者証を介する事で冒険者ギルドは討伐した魔物を確認する事が出来る。嘘の討伐報告は通用しない。それを頭に叩き込んでおくように。
そしてこれが最後になるが、人を殺した場合もその行為を確認出来る。
それを踏まえて行動するように」
と言われた。
実はゴヘイのカスを含め、他も面倒になりそうならこっそり始末出来ないだろうか? などと考えていたりする。
それを先に釘を刺されてしまった形になった。
日本人が死んだら何か起こるのか? 変化があるのか?
どうでもいい奴でそれを知りたかったのだが、とてもとても残念だ。
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