第9話 設定④
容姿は過去にやった事のある部位ならば無料で変更できるようだ。
髪型と眉毛が変更出来た。
そして髪型を変更すると、髪色も変更出来るようになった。
なるほど。やると選択肢が増えるパターンもあるのか。
だが純日本人顔で化粧をする訳でもない十五歳の頃の俺の顔には、派手な色の髪は似合わなそうだ。
なのであまり派手な髪色はやめておこう。
対し髭は選択肢にない。
これは多分生涯で髭を伸ばしたことがなかったからだろう。無精ひげという選択肢は無かった。
・・・・・・別にあってもそれは選ばないんだけど。
とは言ってもどれも向こうで生活していれば、こっちと同じように勝手に伸びるだろう。
なので深く考えるのは止めた。まさか死ぬまで変化しないとかじゃないだろうし。
「ヒッヒッヒ、終わったようだね。まだ時間は少し残っておるようじゃぞ? もう良いのか? 後で後悔するかも知れんぞ?」
「そんな悩む所も無いですしね」
外見をどうしたいか。ではなくて、送られた先で〝不便じゃない〟事を基準に考えた。
どうせ元は自分だ。有料の所に手をつけないので死ぬ前とは大きくは変わらない。
大事なのは清潔感と生活しやすさ、だろう。
髪型は長さは耳くらいで、ツーブロックに決めた。
ブラック気味ではあったが髪型の規則は緩い会社だったので、前世ではロン毛から短髪までしたことがある。なので結わけるくらいまでの長さの選択肢はあった。
だがロン毛は色々面倒だったのですぐ止めた髪型だ。洗って乾かして整えてで手が掛かる。
元々一回やってみたかっただけで伸ばしてみただけだし。
髪を伸ばしてみる前は、結わけば楽だろうと思っていた。
だが実際伸ばしてみたらそうでも無かった。
引っ張られるとね。結構抜けるんだ。
何が? 髪がだ。
何かで見たが男と女では髪質が違うという話で、男の髪は長くなると自重に耐えられないと聞いた。
歳を取って髪質に腰が無くなるとさらに顕著になるらしい。
男と女、どっちにハゲが多いかを考えて、俺は髪を伸ばす事を考えるのを止めた。何でもそこそこが良いんだよ、そこそこが。
顔に掛かるのも慣れないとうざかったし。
短髪も同じ。毎度整髪料が面倒なのと、伸び掛けが汚い、だらしなく見える。
送られた先で髪を切る店があるか分からないからこれは無しだ。
短髪こそ小まめに店に通う必要がある。
あとはどちらも仕事でヘルメット被る時に微妙だった。
向こうで多分ヘルメットより重いだろうと思われる兜なんかを被る可能性がある。それを考えると整髪料ベッタリの髪型は避けたい。
整髪料付けない程度での短さだと多分すぐ伸びる。それもちょっとな。
なので最悪濡らして手櫛ででも整えられる程度の長さにしておいた。
ツーブロックなのは前世でデスクワークをする時はメガネを掛けていたから。俺は耳の上は毛が短い方が、メガネの納まりが良かった。あと横の毛があると横が膨らんでバランスが悪い。これはきっと毛質の問題だろう。元が自分なら毛質も変わらないだろうし。色も特に変えずに黒髪のままで行く。
眉毛も中学時代のボサボサは止めて、キチンと整えている社会人の頃の形にしておいた。
眉毛も伸びる。伸びると重くなる。そして垂れるのだ。昔そんな首相がいたとかいなかったとか。
大人になったら定期的に整えた方が良い。
「一つ気になるところがあって、多分体格が十五歳の頃の自分と多分違うんですよね。確かこの頃はもう少し背が低くて細かったと思うんですよ」
俺は中学時代に一気に背が伸びたので、十五歳の、どのタイミングに戻るかで背が結構違う筈だ。
中学卒業時には180センチを超えていたが、中学三年に上がったばかりのときはまだ170センチくらいだったと思う。
死んだ今の次期に戻るなら、今は五月の終わり。
身長の正確な記憶は無いが、間違いなくもっと低く細かった。
そして大人になってジムに通い始めるまでは割と細い方だった。
だがアバター画面の中の俺は死んだ時とあまり変わらないように見える。
「ヒヒヒ、別に十五歳の時のお前さんに戻した訳じゃないからねぇ。
長く戦わせたいっちゅーあっちの神の希望じゃから若くはしてやることにした。
じゃが十五歳の頃の姿に正確に巻き戻すというのは結構骨が折れるんじゃよ。出来んとは言わん。言わんがやるとかなり面倒なんじゃ。
じゃから死んだ時のまま細胞だけ若返らせただけじゃ」
「あー・・・・・・ってことは仮にですよ? 十五歳の時細くてかっこよかった男がいたとして、そいつはおっさんになって太ってたとします。そいつを送る場合だったら太ったままって事ですか?」
「それはあたしゃらのせいじゃないじゃろうに。死ぬまでの自分の行いじゃ」
「ごもっともです、ハイ」
そんな奴がいたらご愁傷様だな。若返るって聞いたら誰だって期待するだろうに。
若くて格好良かった頃に自分に戻れる!!
って思ってたら体型はそのまんまでガッカリってか。
ちょっと笑えると思ってしまった。
でも確かに、太るような生活をしていたなら自分が悪いな。
そう言われてみれば十五歳からスタートって言われただけで、細かい説明はされてないし。別に若返るとは一切言われてないんだよね。
歳を取ってからそう聞かされると、勝手にそう感じてしまうだけで。
それにしても長く戦わせたいってハッキリ言われてしまった。
何となくそんな気はしてたけど、やっぱりか。
でもそれなら死ぬまでずっと肉体の最盛期、とかにしてくれれば
「そう頼まれた訳じゃないからねぇ。別にあたしゃらがあっちの神に気を使ってやる理由は無いじゃろ?」
「・・・・・・ですね」
何か思惑がありそうですね。これは触れない方が良さげな話題。
・・・・・・振る話題も思いつかないし、先に進めるかな。
うん、もうこのまま送ってもらおう。
「ヒーッヒッヒ、あたしゃは察しの良い子は好きじゃよ。
残念ながらまだ決めることがあるんじゃがな。ヒヒヒヒヒ、逃げられないよぅ?」
「いや、別に逃げようとした訳じゃないですよ? 話題を変えられなかっただけで。あれ? もう買えるもの無いですよね? 残金もきっちりゼロですよ?」
「ヒヒヒ、やれば分かる事じゃよ」
との事なので容姿の選択画面を終えて、スキルの選択画面も確定させる。
一応レ点が外れてないかはチェックしてからだけどね。残高がゼロのままだから無いとは思うけど、確認大事。
すると画面が切り替わ、切り替わ、切り替わらない? おや?
画面は変わらないまま、新たに文字が表示された。
<< 詰め合わせ満腹セット三点と初心者向け装備セットを纏めて購入されたそこのアナタ >>
<< 今だけ、これだけ、アナタだけに。満腹セットの各項目より2スキルだけ! >>
<< 2スキルだけレベル1をプレゼント。さぁ奮ってご選択ください >>
「テレビショッピングかよ!」
「ヒッヒッヒ、テレビショッピングだったら買う前に言ってるじゃろうな。これは買った後だから違うじゃろイーヒッヒヒ」
「そりゃそうだけど。何で神様がテレビショッピングを知ってるんだって話。
・・・・・・これもお導きなんだろうから感謝していただきますけどさ!」
「ヒッヒッヒ、素直なのは良い事じゃよ。そんな良い子にはサービス情報じゃ。
選択肢の中に買えないスキルがあったじゃろ? あれはいくつかのスキルをある程度のレベルまで育てないと覚えられないスキルなんじゃよ。じゃからスキルを二個づつ、レベル1にしか出来ないお前さんは、今は絶対選べないスキルなのじゃ。時間が勿体ないから外して考えるんじゃな」
あー、あった。選べないスキル。何個もあったよ。
やっぱ前提条件付きか。強力そうなのが結構多かったもんな。
で、教えてくれるって事はもうそんな時間が無いんだろうな。
確かにそれに構っていると時間が勿体ない。
「なるほど。分かりました、では買えるスキルで二個を関連させて考えます」
「ヒッヒッヒ、素直な男は好ましいものじゃな。
ではさらにおまけ情報じゃ。あっちに行ったらスキルの素養なんて概念は無い。これは今この場所だけのモノじゃ。
という事を覚えておくんじゃな。取れないスキルの素養を持っている、という事をあっちに行ったらよく考えてみることじゃ。
さて理解したら何も聞かず、何も言わず進めるんじゃな。ボチボチ残り時間も厳しいじゃろう」
「分かりました。色々ありがとうございます」
ヒッヒッヒと言う笑い声を聞きながらモニター画面を向き直った。
どうやらこの感じだと急いだほうが良いんだろう。
何て思いながらモニターへ向き直った次の瞬間。
老婆の女神に顔を向き直していた。
思いっきり婆さん女神は横を向いていたけど。
その横顔は笑いを噛み殺しているように見えた。
くそぅ。何も言うなってこっちかよ。
「ヒーヒッヒッヒッ、女神のお導きじゃよ」
「分かってます。分かってますけどぉ・・・・・・何も言いませんし、文句はないんですけど!」
何か納得いかないと言うか、悔しいと言うか。
「ヒッヒッヒ、じゃろうな」
影魔法に勝手にレ点が付いてやがんの。
しかも色が違う方! これ俺が自分で外せない奴ー。
※※※※※※※※※※※
2024/09/06
髪色は初期設定で自由に選べたという部分を追加
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