第8話 設定③


「いえ、色々試してみてる所です。今はスキルの構成を参考にしようと思ってまして」


 我ながら苦しいな。っていうか何で俺言い訳してるんだろ。

別に嘘じゃないんだけど、取り繕う必要無いんだけど? そもそも心読まれているし。

何で心の中でキチンと言っておこう。エルフは第二候補以降の押さえですよっと。


 そのエルフは3つの値段の種族があるが、どれも魔法剣士って感じの構成だ。

安いのが戦闘系スキル多め。

真ん中のが魔法系スキル多め。

お高いのがどっちも満遍なく揃ってるといった感じ。


 代わりにエルフは生活系が一切無い。

残金でそっちを揃えるのが無難かなってのが俺の感想。


 ドワーフは4パターン。

魔法スキル系豊富、戦闘スキル系豊富、生活スキル多めの職人系、肉弾魔法戦士って感じでしっかり分かれている感じがする。

あくまでも個人の感想です。

 だが、得意なのがハッキリしつつも他もしっかり押さえてる感じに俺には見えた。

職人系でも戦闘スキルは入っているし、逆に他三つでも生活を多少押さえている。

こっちを買うなら残金で得意分野を伸ばす方向で補助スキルを買い足す方向だろうか。


 獣人族はよく分からない。

魔法スキル系の種族がいる獣人族もあれば、魔法スキルは一切無い獣人族もあった。

全部戦闘スキル系の種族なんだけど、得意武器が違うだけって種族もいた。

魔法スキル系、戦闘スキル系、魔法戦士系ってバランスの種族も。

なのでこれについてはそっとBACKボタンを選択したので特に考えてない。


「イーッヒッヒ、しっかり確認は済んだようだね?」


「そりゃーもう。お花摘みは終わったんですか?」


「ヒヒヒ、神にその必要は無いから気遣いは無用じゃよ」


 歳だから近いんだろうなぁ、なんて考えた部分はしっかり読まれたので、エルフの言い訳も聞いてくれたんだろう。そこを何も言ってくれないのが引っかかるんだけどね。

 スルーされると余計気になると言うか、何か突っ込んで欲しいと言うか。


「ヒッヒッヒ、そんな事より残り時間は二時間を切っておるようじゃぞ。モタモタしていて大丈夫なんじゃろうかね~」


 おっと、もうそんな事より時間ですか。

夢中になっていたんで残り時間なんて気にして無かったぜ。多めにくれた事にもう一度感謝だ。


 ・・・・・・一瞬また光った気がするけど。

きっと気のせいだろう。

 そんな事よりタラタラやってるとすぐに時間切れになる。その方が怖い。


 ならばもう、ここで悩んでても仕方がないかな。

 均人族 ヒューム〟に戻してスキルを嚙み合わせていく事にするか。

他の種族のを見のでスキル選びの参考になった。

自分が欲する構成は何となくイメージ出来た。


 エルフを消して、〝 均人族 ヒューム〟を選択してスキルの購入画面まで進める。

するとその画面を老婆の女神が覗き込んで来た。

いや、そんなに移動してなくても見えてますよね?

頭が邪魔で俺が見えないんですけど?


「ヒーッヒッヒ、感心感心。ちゃんと言った通りに全て目を通したようじゃな。最初と何かが変わっているじゃろう?」


 そんな事言われても俺の顔の前にあるのは老婆の女神の頭だ。後頭部。

その後頭部で画面が見えませんよ。なんて思っているとその頭が退いた。

顔を見なくてもニヤニヤしているのが分かる。わざとやってるのは分かっていますって。

 そんな些事よりも画面変化だ。

モニター画面を覗き込んで見ると・・・・・・


「うっわー、ずっるぅ」


 そんな言葉がつい、口から突いて出た。


「反則だろ・・・・・・ 何だよ〝素養詰め合わせ満腹セット〟って。しかも一つさん、じゅうま、んえんって・・・・・・」


 最初の〝 均人族 〟を選んだ時は勿論、その後のエルフ、ドワーフ、獣人族でこの画面に来た時にも間違いなく無かった選択肢だ。


「ヒヒヒ、スキルを全部確認すると表示される特典じゃよ。女神の導きに感謝することじゃ、ヒーッヒッヒ」


「そりゃーもう、感謝はしますけど。しまくりますけどさ」


 まさしくチートじゃん。有り難いんだけど、なんか心苦しい。

この辺は日本人気質だよな。なんか自分だけってのがズルく感じてしまう。


 まぁ誰が見てるでも無いし、有難くいたただくけどね!!


「ヒッヒッヒ、気にしない気にしない。向こうに行ってからも時々祈ってくれりゃいいんじゃよ」


「あー、はい。なんかちょくちょく祈る事になりそうですね」


 神に感謝する場面なんて少ない方が良いんだけどね。

この感じだとちょくちょくこの選択肢が出た事に感謝する事になりそうな気がするけど。



 まー、そん時はそん時って事で、先にスキルの購入だ。

ご丁寧に〝素養詰め合わせ満腹セット〟はそれぞれ三つの塊の一番上に少し大きく表示されている。

new!! って小さい文字が点滅しているが、そんな装飾表示は要らないと思うんだ。


 とは言え、ここまでお膳立てされて買わない選択肢は無いだろう。

 〝素養詰め合わせ満腹セット〟は一つ三十万也。

三つなので九十万円。

 スキルの羅列の塊は一つ三十五個。合計百と五個。

単独で買うと素養は一つ三万円だ。

なのにセット価格は破格過ぎる。素養一つが一万円を切ってしまう。


 ただしこれを買ってしまうと〝初心者向け装備セット〟が買えないという問題があるが。

だがこのお得感考えると諦めるしかない、かな。

 スキルのレベルを1にするのに追加で二万円が必要なので、あと五つのスキルをレベル1にして持って行ける。

装備が無いのは不安だが、それで何とかするしかない。

まぁフルチン転生も恥ずかしいのは最初だけだし・・・・・・ガンバロウ。


「ヒヒヒ、お前さんはまだまだ坊やじゃな。あたしゃが言った言葉をよく思い出してみる事じゃ」


 またこいつ引っかかった。とでも言いそうな楽しそうな顔で婆さん女神が言う。

「隅から隅まで確認しろ」以外に言われたっけな?

 ねーな? ねーよ?

ならもう一回確認しろという事だろうか?

 生活系スキルの〝素養詰め合わせ満腹セット〟を買うために下の方へとスクロールしていた画面を一番下までスクロールしてみる。


 ・・・・・・何もない。

となれば上か。


 マウスホイールっぽいところをクルクル回して一番上に。

するとここにも new!! の文字があった。

 ふむ、装飾じゃなくてアピールでしたか。教えてくれて有難いです。

〝初心者向け装備セット〟が十五万円から十万円に値下がりしてやがった。


「・・・・・ピッタリ百万ですね」


「ヒッヒッヒ、余計な事考えずに済んだじゃろう?」


 馬鹿の考え悩むに似たりってか。あれこれ色々考えてたのが本当に馬鹿みたいだ。

まー向こうに行ったら多分スキルのレベルを上げなきゃいけないだろうから、無駄にはならないだろうけど。

 ふーむ。実はスキルが決められなくて、時間切れになりそうだったらお高いエルフに決めちゃおうかという腹案もあったのよね。スキル構成がね、割と好みだった。

それだけだよ、他に他意は無かった。本当だ。


 高いだけあって強そうだったしね。

考えてみたのだが〝魔法剣士〟って悪くないと思うのだ。

 ゲームとかだと中途半端になることが多いけどさ。

でも勇者とかだって言っちゃえば超強い魔法剣士だ。

 最も勇者は魔王に対する〝鉄砲玉〟とも言えるんだけど。


 勇者云々は置いといても、向こうがどんな世界だか分からないし。

それならば色々出来た方が融通が利く。

 利かなくなったら他のスキルを伸ばせば良いんだし。

少なくとも存在するスキルの名前を、百五種類は知ってる訳だし。

 これは大きなアドバンテージだと思う。

だったら器用貧乏ではなく、万能型を目指せば良い。イッツ、オール、パーフェクトだ。


 〝 均人族 《ヒューム》〟でバランスよくスキルを買い魔法剣士として頑張る。

これを草案として走らせていた。

 時間切れになりそうならお高いエルフを買って最低限の戦力を確保する。

という腹案があった。


 草案で悩むから腹案が必要だった訳で、

〝素養の詰め合わせ満腹セット〟のおかげで下地が綺麗に埋まる。

初心者向け装備セットも値下がったしな。

アレコレ悩んで決められないくらいなら、これで良いんじゃないか。うん、そうしよう。



「えっと時間が余っても大丈夫ですか?」


「ヒッヒッヒ、それで決めたんじゃな?」


「えぇのお導きに従おうと思います」


 婆さん女神だけどな。

 そこまで信じて良いのかと思う気持ちが無い訳じゃ無いが、別にこれが罠でも特に困らない。

多分努力は必要なんだろうけど、そんなのどれを選んでも何を選んでも一緒だ。楽な道など無い。

でももし、仮にだが、あるとしたなら女神のお導きであるこの道なんだよな。


「ヒヒヒ、お前さんが決めたなら送ってやるさ。

じゃが折角あたしゃのお導きに従うって言うならばじゃ。もうちょっと隅から隅まで確認してもらわないと困るんじゃがな。

まだまだ不完全じゃぞ?

 これはおまけじゃが、容姿の部分で無料で弄れる所があるんじゃ」


「えっ、マジで?」


「イーヒッヒヒ。あたしゃが嘘なんか言うもんかい。時々本当の事を言わないで黙っているだけじゃ。

髪型とか髭とか眉毛とか、前世で変えた事あるとこは切り取って全部選択肢に入れてあるんじゃよ。長さの調整が出来る。人間はその辺が面倒くさいからねぇ。

まだ時間がある事じゃし、多少変えてからでも間に合うじゃろう」


 ホラ、早くしな。と言われて一つ選択画面を戻す。

試しに髪型を見ててみると本当に変えられるようだ。これはビックリ。

 そもそも容姿には全く手を付けていない。なのに時間を余らせて進もうなんて。

ちょっと自意識過剰さんっぽくて恥ずかしい。

勿体ないからちゃんと弄ろう。勿論無料の範囲で。



 アバター画面の中の俺は、死んだ時よりも若く、髪の毛も短い。というか坊主だ。

これから推察するに、向こうで始めると言われている十五歳の時の姿だろう。


 十五歳と言えば中学生くらいだろう。三年生あたりかな?

俺は中学の時は運動部に入っていたので頭は丸めていた。

これは校則というより部の規則だった。高校で伸ばせるようになり少し洒落っ気が出た。

それ以来あまり短くはしたことがない。あまり良い思い出でもないからだ。



 別に坊主で転生したとしても、どうせ髪の毛なんて直ぐ伸びるけどな。

とは言っても十五歳の子供の頃のままよりも、大人になって身だしなみに気を使うようになった部分は持って行きたい。

 清潔感は大事だろう。向こうに美容室があるとも限らないし。

ここでしっかりやって行こうと思う。

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