第6話 設定①


「ゲームのキャラメイクみたいだな」


 次に進むとアバターの外見を弄れるようだ。アバター画面が大きくなり、左側の選択肢画面が小さくなった。

そんな事は置いといて左の選択肢画面を下へとスクロール。

 スクロールするほど選択肢の数は無く直ぐに画面は止まったが、先ほどと同じく NEXT と BACK の文字があった。

一度 BACK を選ぶと種族選択画面に戻った。

それを見て一安心。


「戻れるなら急ぐことは無い」


 ここでは何もせず NEXT を選んで次に進む。

容姿を弄らないのかって?

人によっては最大の労力を注ぐ選択肢になるのかも?

 だが正直な所、別に俺は自分の容姿に大きな不満は無いのだ。

勿論細かい不満はあるよ?

 でも今、このタイミングで大騒ぎして変えるような必要性を感じていないだけだ。


 これまでの人生で、女にキャーキャー言われたような経験は無い。

無いが何度かの恋はして来れた。

だから次も別にこのままで行けるならそこまでの問題はないと思っている。

 性欲はある。女を抱きたいとは思う。

だが外見で異性にキャーキャー言われて股を開いて欲しいとは思えない。


 ・・・・・・いや、思えなくなった。

 正直な所、思ってたことはある。あるのだけれど。


 なーんか自分がエルフになったアバターを見たら虚しくなった。

それまでは多少、願望というか欲望はあったんだけどさぁ・・・・・・

そんな男を羨ましい、俺も経験してみたいなくらいは思っていた、んだが。


 だが勝手に美化されていたエルフの姿の自分のアバターを見て、これは何か違うと感じた。

多分それで女にモテても虚しいだけだろう。

自分の中で何かがストンと冷めた感じがしている。

なので容姿の変更に関してはこの先を確認し、余裕があったらその時に考えれば良い。


 なので次に進む。

次はスキルを選ぶんだろう。婆さん女神からは聞いたので残るのはそれだけだ。

 下にスクロールしていくと、ここでも NEXT と BACK の二つが表示されていた。なのでまずは一安心。

 ここまでならまだ戻れる。

この先は分からないけどな。

 何でこの順番なのかは知らないが、この先がどうなるかは分からない。

だが聞いている情報はここまでだ。最後のつもりで取り組むべきだろう。


 NEXT を選択し、先に進むとスキルの選択肢は多かった。

選択肢画面がモニター画面一杯に広がり、アバターが右上の方に追いやられ小さく表示されるだけになった。

 スキルに外見は関係ないらしい。

んーそりゃそうか。関係あったらちょっと問題だ。選ぶのが面倒になる。

外見が良くなるスキルを買うという選択肢が出て来るから、だ。

やはり見た目は大事だ。さっきがあぁは言ったが良い方が良い、それは絶対。

だが関係無いなら、スキルを独立して考えられる。




 改めてここから、が問題だろう。

スキルのある世界という事はだ、兎に角重要なのはスキル。という事になる。


 ここに来て、あの婆さん女神の言ってた事を思い出した。

「隅から隅までよく見ろ」と言われたが、確かその時はその前にスキルの話をしていた。

「それを踏まえてスキルを選べば良いのか?」と問うた俺に対しそう言った筈だ。


 だから隅から隅まで見ろと言うのはきっとスキルの事だろう。

種族とか容姿の選択肢は関係ない、ハズ。絶対とは言えないけど。

 間違っていたとしてもだ。

先にスキルを把握しておく事が無駄になりはしないだろう。

時間が余ったら戻って確認すれば良いだけ。


 なので細かく見る前に流し見をしておく。

上から順に見てってもなぞるだけじゃ頭に入らないからな。先ずは全体を見て確認しておく。

ざーっと下まで眺めて見ると、大きく四つに分かれているようだ。



 先ず一番上。そこに一つ、スキルじゃないのがある。


『 初心者用装備セット 』NEW   ¥150.000   〝オススメ〟


 ご丁寧におすすめの文字が躍ってやがる。

そりゃ初心者用の装備がセットになってりゃおすすめだろうけどさ。

装備じゃなくてスキルを買うんじゃなかったっけ?


 そしてここからは選択肢に値札が付いているようだ。そういや〝買え〟という指示だったな。


・・・

・・・・

・・・・

 よく見たらモニターの少し内側に枠線があり、その一番上のフチ、その真ん中ら辺に装飾された枠が有り、その中に


 ¥1.000.000


という数字があった。小さっ。


 やべぇ気が付かなかった・・・・・・

 我ながら抜けている。

だが俺は時々やるんだよこういったポカ。過去にそれでやらかしたこともあるようなないような。

次の人生は気を付けよう。

改めて婆さん女神の『隅から隅まで見ろ』という言葉を噛みしめておく。

 試しに『 初心者用装備セット 』を選んでみると頭にレ点が付き、表示金額が ¥850.000 に変わった。

なるほどこれが ¥0  になるように調整するのか。

ちぃ・・・・・・覚えた。

今後はもう少し注意深く見る様にしよう。本当に。

 再び『 初心者用装備セット 』を選択してレ点を外す。

金額がきっちり ¥1.000.000 に戻った。

ふむ、取ったり外したりで調整は出来るようだ。


 ならば気を取り直して次だ、次。

『 初心者用装備セット 』 から下にはスキル名がずらりと並んでいる。

 それでもただ羅列されている訳では無いようで、先述の通り三つの塊に分かれている。見た所上から〝戦闘系スキル〟〝魔法系スキル〟〝生活系スキル〟と言った感じだ。

 ただし俺の独断と偏見であり、あくまでも仮の仕分けです。実際の人物団体に関係はありませんよっと。

だって別に分けられかたは何も表示されていないんだもん。


 〝戦闘系スキル〟から見ていくと

『短剣術』『片手剣術』『両手剣術』『槍術』『弓術』『斧術』なんてお決まりの名前が続いて行く。

 やっぱりゲームみたいだな・・・・・・

そして『~~術』の羅列が終わると

『剛力』『俊足』『鉄皮』『小器用』『忍耐』『挑発』『鷲の目』『鷹の目』『攻撃力向上』『回避力向上』『回復力向上』なんてスキルの名前が続く。

 うーん、『剛力』と『攻撃力向上』とか、『俊足』と『回避力向上』とか被ってないか?

細かい所が気になるのが俺の悪い癖。気になりますね~。

なんだが、個別に調べるのは後にしようか。

 前半が技術スキル系統で、後半が補助スキル系統って感じだろうか? 多分微妙に違うのも混じってるけど。まぁいい、先を調べよう。


 次のスキル名の羅列は〝魔法系スキル〟だ。

これも同じ感じらしい。前半が技術っぽいスキル系統で、後半が補助っぽいスキル系統っぽく並んでいる。


『火魔法』『水魔法』『風魔法』『土魔法』

なんてお決まりの魔法に

『無魔法』『光魔法』『影魔法』

ふーむ、この辺までひっくるめて属性魔法って所かな?

『幻影魔法』『氷魔法』『雷魔法』『空間魔法』『聖魔法』『召喚魔法』『妨害魔法』

やっぱゲームっぽい。だが法則がさっぱり分からない。

はいはい、考えるだけ無駄むだムダ。で、次。魔法名の付いたスキルはここまでで、この後が補助っぽいスキル。

『高速詠唱』『詠唱時間短縮』とか『威力強化』『魔力回復量増加』『消費魔力量減少』『最大魔力量増加』なんて感じ。

 おっと『空間把握』がこっちにあるな。魔法関係なのか。

戦闘系もだが補助系のスキルの方が多い。多いという事は、だ。

・・・・・・・なんだっけ? まぁいいや、次。


 スキルの羅列、最後の塊は生活系スキル(仮)


『鍛冶』『錬金術』『薬学』『解体』 なんてロープレお決まりのスキル。

『採取量増加』『所持量増加』『移動力強化』『鉱石発見』 ここにも補助スキルが。

『料理』『建築』『楽器演奏』『安眠』『裁縫』 という仮に生活の名前を付けた要因のスキル。

『盗術』『罠知識』『暗視』『歩行術』 なんてそれっぽいスキルも。

『騎乗』『友愛』『幸運』『地図作成』 地味に重要そうなのも。


 ・・・・・他にも『房中術』と『精力増強』なんていう気になるスキルもあった。

俺も男の子だしね。無いよりはあった方が良いんじゃないかと。

下手よりは上手いって思われたいし言わせたい。



 さて、見るも見たりスキルの羅列。

その数、一つの塊が三十五個。

掛ける事の三つなのでスキルの合計は全部で百と五つだ。



 ・・・・・・かなり多いな。

 これ選ぶ方に面倒くさがらせるのが目的なんじゃねーかな?

選ぶの面倒がらせて、分かりやすいスキルだけを買わせる、ってのが目的な奴。

 だとしたらこれを作った奴は賢い。

俺、既にかなり面倒くさくなってる。

 あの婆さん女神の言葉がなかったら分かりやすいスキルだけを選んで買って、先に進んでいた可能性が高い。なんという孔明の罠だ。危ねぇ。


 折角助言をもらっているんだから一つずつ見ていくか。

その為の五時間だしな。

 ふむふむ、『短剣術』を選んでみるとその説明文が出て来た。


『短剣を使った戦闘術。短剣使用時のみ使用可』


 ・・・・・知ってるよ。それだけかい!

他もクリックしてみるが簡単な文しか出て来ない。

 〝システム〟さん、不親切!


 が、スキルの名前をクリックしてもそれで購入の決定が決まる訳じゃないようだ。

買うまでに何段階か順を追わねばならないようだ。


 えーっと、スキルのレベルは1から5までのようだ。

だがその前に素養という項目がある。素養? 良く分からない。

兎も角、こんな感じのようだ。


『短剣術の素養』    ¥ 30.000

『短剣術レベル1』   ¥ 20.000

『短剣術レベル2』   ¥100.000

『短剣術レベル3』   ¥250.000

『短剣術レベル4』   ¥400.000

『短剣術レベル5』   購入不可


 他のスキルも同じ仕様のようだ。

最大レベルのレベル5は百万円じゃ買えないようだ。

 というのもこの金額は累計では無く、単体の買い値だから。

つまり


最初に素養を買うと三万円也ー。

その素養をレベル1にするのに二万円掛かりまーす。合計で五万円です。

レベル1になったスキルをレベル2にするのに今度は十万円が必要です。合計で十五万円頂きますよ。

レベル2からレベル3にするのに必要なのは二十五万円。合わせて四十万円です毎度ありー。

レベル3からレベル4にするには今度はなんと四十万円必要で。つまり八十万円お願いしまっす。

これで残高二十万円。レベル4に四十万円必要ってことは当然、レベル5は最低でもその倍の金が必要になるだろう。

だからレベル5にはなりませんよ、って感じか。


 レベル4のスキルを買った場合、残金は二十万円。

その場合レベル1ならスキルを四つ買える。

レベル2を買うと十五万円必要なので、レベル1をもう一つ買える。

 この場合は何か一つのスキルが超強い感じか。

補助スキルの多さを考えるとどうなんだろうと思ってしまう所だが。


 レベル3のスキルを買った場合、二つのスキルをレベル3で買える。

この場合でも残金が二十万円、なので上と同じ状況だ。

 違うのはレベル3を一つにすれば、レベル2を最大四個買える。

レベル1でなら十二個のスキルを買える。

 俺は特別偏ったスキル編成にしたいとは思わない。

だったらこっちの方がバランスが良いんじゃないか? ふむ、悩むな。


 最大レベルをレベル2で満足するなら、最大九つのスキルがレベル2で所持出来る。

もっとバランスを考えるならこっちかな。レベル1でさらにもう二つ買えるし。


 レベル1で我慢すれば最大二十のスキルを買って持って行ける。

バランスを手数と考えるならばこの方が良いかも知れない。


 なんてことを考えていたらここで『 初心者用装備セット 』の項目が目に入った。


 あー・・・・・・・装備ってどうなんだろ?

もしかしてこれを買わないと・・・・・・裸であっちに送りこまれるのかな?

 だとしたら絶対買わなきゃいけない奴じゃんか、これ。

わざわざスキルと一緒に並べてある訳だし。


 はー・・・・・・分かった、買うよ。買えば良いんだろ?


『 初心者用装備セット 』 は十五万円也。

レベル1スキルなら三個相当。

レベル2スキルと同額。


 うーん、中身が何だか分からないとスキルの方が良い買い物な気がして勿体ない。

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