第3話 刺されて死ぬ運命



 あー、なるほど。つまり嫌と言っても絶対に断れない奴だよね? これって?


「イーヒッヒヒ、話が早いね。あたしゃが見込んだだけの事はある」


 いつの間にか見込まれていたらしい。俺なんかやっちゃいましたか?

やってねーよな。まだ数度言葉を交わしただけなんだけど?


 うーーーーーん。

でもどーせ断れないならさ。

何を言っても無駄だろうから大人しく引き受けます。


 けど、出来る範囲で構わないので説明だけお願いします。

訳も分からずやらされてもね、やる気に関わって来る。


 出来る範囲で最大限の、説明は欲しいです!!!!


 どうでしょうか?


「ヒヒヒ、もちろん勿論モチのロンじゃ。素直なのは良い事じゃよ。

ごねたら説明無しで送り込む予定じゃったんじゃがな。

それだけでお前さんは見込みがある、あたしゃがそう思うのは分かるじゃろ?」


 わかんねー。全然わかんねー。

さすが自称神。やはり人権なんて意識は、欠片も持って無いようですね。


「イーヒッヒヒ。神が人間に対してそんなもん、持つ訳がないじゃろうに。

では説明するぞ。

 先ずは大まかな流れからじゃ。

この世にはいくつもの世界がある。それぞれが独自に様々な形で動いておるのじゃよ。

 あたしゃらが管理する世界。それはつまりお前さんが今まで生きていた世界じゃがな、ここは複数の神々が関わって管理している世界だったのじゃ。あたしゃもその一柱じゃよ。

 そして全く別の世界が他にいくつもあるのじゃ。あたしゃらとは別の神がそれぞれを管理しておる。

 一柱で世界の全てを管理をしちょる神もいれば、あたしゃらのように複数の神が関わって維持している世界もあるんじゃ。


 少し前からその別の世界を管理する神に頼まている事があってじゃな。

そやつの世界はお前さんのたち人間が言う所の〝剣と魔法の世界〟という世界線なんじゃが。

なんでもそやつが言うにはお前さんが生きていた下の世界では、それが流行しているそうじゃないか?」


 はて? 〝剣と魔法の世界〟?

ゲームか? 漫画? アニメ? ロープレ? 

んー流行っているというか、沢山あるジャンルの一つというか。


 違うな。そこじゃなくて、目の前には自称神、の婆さんがいる方向で考えよう。

別の世界がある。自称神。そして剣と魔法の世界。


 あー、異世界チーレムか。

流行はやっていたって言うか、多かったかと言われりゃそうかも知れない。

実は結構昔からある設定だけどね。そりゃ第二次世界大戦より前の話じゃなきゃ昔じゃないとか言われたらそれまでだけどさ。

 別の世界に迷い込んだ日本人、いや地球人のお話なんてそれこそ童話や昔話にもいくらでもある。

 つまり俺もいくつか読んだことがあり、むしろ普通に好きなジャンルだ。

ただ全部創作物の中の話ですよ?


「ヒ? えーっとなんじゃって? ちと聞いておらん言葉が出て来たぞ? チーム?」


 !? 誰かからなんぞ説明でも受けたんですか?

異世界チーレム。神様からチート能力をもらって異世界に行って、ハーレムを作る。そんな物語の通称ですかね。

 大半の男の願望ですが。

なんで俺が知ってるのはそっち系が多いです。


 最近は追放モノからの悪役令嬢モノに流行りが移っているらしいが。

そっちを全く知らんわけでもないが、俺にとっての〝剣と魔法の世界〟と言ったら異世界チーレムだ。

だって男の子だもん。ロープレの王道だしな。


「おうおう、それじゃそれじゃ。ヒヒヒ、別世界を担当しちょる神がな。

どうせ流行っているんだったらこっちに送ってくれないか? と言ってきておってな。段々催促がしつこくなって・・・・・・まぁそれはええじゃろう。

そしたら丁度、予想外の事故が起きてしもうてじゃな。知らん間に、あたしゃらが関与しない事で結構な人数が死んでしまっておったのじゃよ」


 なるほど。それが俺が死んだ事故ですか。


「うむ。死ぬ予定がなかった存在が随分死んでしまったんじゃ」


 その言い方だと俺も死ぬ運命じゃなかったように聞こえますが?


「ヒッヒッヒ、お前さんはもうちょっと長く生きる予定じゃったな。まぁ順調に行っても最後は刺されて死ぬ運命じゃったんだが」


 ・・・・・・・えー


「ヒーッヒッヒ、心当たりがありそうじゃな?」


 そんな楽しそうに言われてもね。

刺されて死ぬ心当たりは無いですよ。


「ヒヒヒヒヒ、本気でそう答えとる所をあたしゃは高く評価しておるんじゃがな。

兎も角じゃ、五十年も生きてたならもう充分生きたじゃろう。じゃが三十年しか生きておらんのは勿体ないとあたしゃは思うた訳じゃ。ここまで言えば分かるじゃろ?」


「あー、ハイ。俺にそれに行け、って事ですよね・・・・・・」


「ヒッヒッヒ、嫌そうじゃのう」


 嫌じゃない訳あるか。喜んで行きたがる奴なんて、


・・・・・・現実にはさすがにいないんじゃないかと思うけど。いるのかな?

どうなんだろう?


「イーヒッヒヒ。どうなんじゃろうな?

さて、話の枕が終わった所で説明に戻るぞ。お前さんには別世界に転生してもらいたい。

そこは魔法だけでなく武術、剣とか槍とかの戦う技術じゃな。そういった事がスキルという概念で存在しておる。

ヒヒヒ、代わりに魔物という存在が跋扈しちょるんじゃが。

ここまで聞けばお前さんになにをして欲しいかは分かるじゃろ?」


 うーん、その説明で分からない方がどうかしてるだろうに。


ズバリ! 魔物と戦え、ですよね?


「ヒヒヒヒヒ、残念外れじゃ。殺して欲しいんじゃと。それもどんどん、なるべく沢山じゃと。むしろ全滅させて構わんそうじゃ」


 それは・・・・・・個人の力でやるより、むしろ神の力でどうにかしたほうが良いと思うんだが。


「イーッヒッヒ、残念ながら神が直接手を出して関わる事は出来ないのじゃよ」


 あー、あるあるですね。

神が直接手を出せないから聖剣を授けたり、神託を下したりする。んですっけ?

まー、それしか選択肢が無いならやりますけど。やりますけどぉ。

やりたくはねーな。

そもそも疑問なんですが、魔物って俺が行けばそれで殺せるような存在なんですか?


 人間より小さい魔物ならやり方次第で何とかなるかもしれないが。

建物よりデカイ魔物なんかがいたら、普通の人間の力でどうにかなるとは思えない。

って事はそこは期待しても?


「ヒヒヒ、そこは少しサービスするとしようかね。では引き受ける、で良いな?」


 ・・・・・・そりゃーまぁ。


 どうせ嫌だ、って言っても無理矢理送り込む癖に。

 あ、ちなみに何で俺は刺されるんですか?

相手は誰でしょう?


「ヒーッヒッヒ。理由は言えぬが、相手は異性じゃな」


 ふむ。きっと逆恨みですね。何か誤解があったんでしょう。

俺がそんな死に方。有り得ない。


 うん、分かりました。

やりますよ。頑張ってやるよ。

誤解で刺されて死んで終わりよりかは、ここで新しくやり直すチャンスをもらえた方が全然良い。


 でもサービスは少しかぁ。そこは素直に行くって言ってるんだから少しじゃなくていっぱいサービスして欲しい。

むしろ大盤振る舞いして欲しいです。


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