第2話 婆さん女神
気が付くと人魂になっていた。
何を言っているか分からないと思うが俺も何を言っているか分からねぇ。
頭がどうにかなりそうだ。
催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ 断じてない。
もっと恐ろしいものの片鱗を今この瞬間、もろに味わっている。
何しろ青白い人魂の姿になって、ただ揺らめいているのだから。
自分自身でそれを認識出来る。
この事こそが恐ろしい。
声は出ない。
当然と言えば当然だが、この姿では発声が出来ないようだ。
そして動く事も出来ない。身体は全く動かない。
だから移動することなんで不可能だ。
ただその場で勝手に揺らめいている。
揺れているこれは何だ? 炎なのか? それとも魂なのか?
「ヒッヒッヒ。それは単なる形態じゃがな。そのフォルムで動いてないのも変じゃろう?」
単なる形にすぎんのかーい。
なんか意味があるのかと思ったぜ。
そりゃーまぁフォルム的に流動していないと変だけど。
まぁ気を取り直して。
何よりも恐ろしいのは、目の前には死神がいる事だ!
「ヒ? じゃから死神じゃないと言っておるじゃろう?」
どうやらそこは重要らしい。
個人的には神様だろうが死神くんだろうが、死んでお迎えに来た時点で変わらない。
おおコウヨウよ、死んでしまうとは情けない。もう一度チャンスをやろう。
なーんて具合にはいかないだろうし。
そもそもあれは神様じゃなくて王様の仕事だ。
じゃー駄目だな。
「ヒッヒッヒ。死んでしまうとは情けないことじゃなコウヨウ・アキノ。
あたしゃが女神としてとしてもう一度チャンスを上げても良いんじゃぞ?」
マジか。
おお、あなたが神か。
死神にしか見えないけど。
そして何故に西洋風の呼び方?
「ヒーヒッヒヒヒッ、いくつか条件を飲んでくれたら、なんじゃがな」
あー、やっぱ死神じゃん。
悪魔の契約じゃん。ってことは実は悪魔か?
あれか? 生き返るのに当たって色々パックになってるのか?
碌に説明もせず、承諾するとあれもこれもと不利な契約が一緒に付いて来るんだろ?
それも勝手に解約できない奴!!
今ならこちらも付いてきます。そしてこちらもセットです。
お客さん、運が良いですね。なんとさらにこちらまで! ってか?
アコギすぎるだろー。自分が神だと言えば何でも有りなのか。
さすが神。自分勝手だなぁおい。
今この瞬間、俺の中で神は死んだ。
人権はどこ行った?
ねーよ? ねーか? ねーだろうなぁ。
だって神様だもん。
人間の権利なんて言葉が届くとは思えない。
つまり今この瞬間目の前の老婆が、確かに俺の中で神になった。
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