第七話 私に教えて
◆◇◆◇◆
アトリエに帰ることにはすっかりと日が沈み、空には白い星が転々と光り輝いていた。老人は天使の分の温かいスープを準備して、キッチンで彼女の帰りを待っていた。
「遅かったじゃないか。お使い、ご苦労様。ほら、冷めないうちにお食べ」
老人は優しく微笑むと、席に着き天使の顔をジロジロと見た。天使の椅子の横には沢山の絵本が積まれており、約束を守ってくれたことに天使は安堵した。これだけ多く食べれば、きっとこの修行を終えられ、尚且つ翼も元通りになると。しかし、天使は絵本に飛びつく前に、老人の方を見た。天使の視線に気づいた老人は、どうしたんだい?と小首を傾げる。天使は言い辛そうにモジモジしながら、一度深呼吸をし、真剣な顔で老人に言った。
「わたし、ずっとここにいていいですか」
老人は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに頷きスープをスプーンですくい口を付けた。天使の気まぐれか、と老人は思いつつも頬を緩まし、嬉しそうな表情を浮べていた。
「儂は大歓迎じゃよ。君の気が済むまでここにいるといい」
「それともう一つ」
天使は、間髪入れず老人に言う。
「わたしに、絵本の作り方を教えて欲しい……です」
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