第6話左薬指…

僕の性格上なのだろが女性と過ごしている時間のほうが楽しく感じる。

別にイヤラシイ下心を潜ませているわけではない。

男性が少し苦手なのだ。

高圧的だったり、無意味に威嚇をしてきたり…。

高校生男子なんてそんな人間ばかりだと言われればそれまでなのだが…。

とにかく僕は同級生の男子も身近な男性も少しだけ苦手だった。

それに比べて女性は優しく話も合うのだ。

別に僕が女性の趣味に詳しい訳では無い。

ただ単純に話しやすいということだ。


奏と歩いて家まで向かうと部屋に案内する。

「キレイになってるじゃん。掃除したの?」

彼女は数回僕の家を訪れたことがあった。

普段から仲の良い奏を家に上げることにそこまで抵抗はなかった。

けれど逆セクハラをしてくるぐらいだ。

少しの警戒心は忘れずに持っている。

ただそういう関係になったとしたら…。

それを想像すると少しだけ胸がときめくような不思議な気分だった。

「多分、母さんがしたんだよ。僕は何もしていない」

「あぁ〜お母さんにしてもらったのね。ダメだよ?自分でしないと」

「分かってるよ…。母さんだってついでに掃除してくれたんだと思うし」

適当に返答をすると制服のブレザーを脱いでハンガーに掛ける。

リモコンで暖房をつけると一度階下に降りた。

二つのコップにお茶を注いで脇にお菓子袋を挟むとそのまま部屋へと戻っていく。

部屋に戻ると奏はタンスの引き出しを開けていた。

「何してるの?」

「ん?パンツを物色してた」

「はぁ…そういうことするならもう家に上げないけど?」

「ごめんごめん!美少女からの小粋なジョークでしょ!?マジにならないでよ!」

それに仕方なく頷くとテーブルの上にコップとお菓子を置いた。

「ゲームでもしながら食べよ」

「やった♡いつものゲームが良い」

「またかよ。奏が強いから嫌なんだけど…」

「負けるのが嫌なの?子供だなぁ〜」

「そうじゃない。単純に何も出来なくて楽しくないんだ」

「えぇ〜。じゃあ一回だけやってから別のにする?」

「それなら良いけど…」

「負けたら罰ゲームね」

僕の言葉を途中で遮るようにして口を挟んだ奏はスタートボタンを押した。


結局僕は何も出来ずに敗北することになる。

「罰ゲーム決定♡」

奏は妖しく微笑むと隣に座る僕に身体を寄せてくる。

「なにする気だよ…」

「目閉じて?」

「え…嫌だけど?」

「じゃあ手を出して」

「はい」

そうして両手を前に出した僕に奏はポケットから銀のリングの様な物を取り出して左薬指にはめた。

「これからはずっとこれを付け続けること。もしも外したかったら…このゲームで私に勝つことが条件だから。絶対に外せないと思うけど…罰ゲームだから仕方ないよね?」

無理矢理に僕に指輪をはめ込んだ奏は少しだけ照れくさそうな表情を浮かべて顔を赤らめていた。

「じゃあ別のゲームしよ…」

奏は宣言通り別のゲームを起動させて僕らは日が暮れるまで家で遊び尽くすのであった。


僕の心にわずかに芽生えた恋心のような不思議な感触に気付くにはまだ時間がかかりそうだった。

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