第5話ノルマでもあるのか!?

放課後のこと。

僕と奏は約束通り新規で出来たカフェへと向かうこととなる。

二人並んで校舎を抜けると奏は唐突に決まりきった逆セクハラをしてくる。

「今日体育あったじゃん…体操服持って帰ってきてる?」

いや、ここまでならまだお節介な世話焼きにも思えるだろう。

「持って帰ってきてるよ。洗濯しないと…」

「ちょっとカバンから出してみて?」

「なんで?」

「匂い嗅ぎたいから♡」

一日にノルマでもあるかのように口を開けば逆セクハラをかましてくる奏に嘆息する。

「やめなさい。セクハラで訴えられるよ」

「私を訴えるの?」

「僕はそんなことはしないけど…」

「じゃあ大丈夫。秋くんにしかしてないから♡」

「やめてほしいな…」

諦めるような言葉を口にして嘆息するが奏には取り付く島もない。

校舎を抜けて駅方向まで歩くこと数分で新規のカフェが見えてくる。

「ここだよ。外観からしていい感じじゃない?」

「そうだね。おしゃれな感じだ」

「入ろ♡」

それに頷くと僕らは店内へと入っていく。

キレイに着飾ったウエイトレスが席へと案内してくれるとメニューを開く。

「全部のメニュー制覇したいな〜」

奏は甘えるような口調で僕の様子を窺っていた。

「また来ればいいでしょ」

「また来てくれるの!?」

「当然でしょ」

「やった♡ありがとう♡」

奏は嬉しそうに喜びを顕にすると本日はブレンドコーヒーとパフェを頼んでいた。

僕はブレンドコーヒーとチーズケーキだった。


注文したものが運ばれてきて二人で談笑しながら時間が過ぎていく。

入り口の鈴の音がカランコロンと鳴り何気なくそちらに目を向ける。

そこには上級である永野鏡が友人と数人で立っていた。

永野は僕らに気付くと軽く苦笑して目をそらす。

慌てた訳では無いが少しだけ後ろめたいような気分に陥る自分を不思議に思った。

永野のグループが席に案内されてメニューを開いている最中に僕のスマホが震える。

「彼女とデート?浮気かな?」

当然、永野からのメッセージであり胸がドキリと跳ねる。

浮気を見つかった男性の心境にも似ているかもしれない。

「そんなんじゃないですよ。そもそも僕は誰とも付き合っていません」

「酷いわ。私とは遊びだったのね…身体だけが目当てだったんでしょ…!」

「何を馬鹿なこと言ってるんですか…僕らにそんな関係は一切無いですよ」

「あの日のことを忘れたっていうの?それとも無かったことにしたいんでしょ!?」

「虚言癖が凄いですよ?目の前の友人と楽しんでください。では」

それだけ言い残すと強制終了とでも言うように適当なスタンプを連投して奏に向き直る。

「何かあったの?」

奏は軽く心配するような表情を浮かべて僕に問いかける。

「いいや。何でも無いよ。堪能できたし、そろそろ出ようか」

「うん。この後はどうする?」

「ん?帰る?」

「えぇ〜まだ一緒に居たいなぁ〜♡」

「じゃあ何処か行く?」

「うん。秋くんの家が良い」

「うち?何するの?」

「ゲーム?外は肌寒いし…家以外じゃお金掛かること多いし」

「わかった。じゃあ行こ」

奏はそれに頷くと僕らは会計を済ませて店の外に出るのであった。


そして次回。

奏が家にやってくる…

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