第2話一旦ヒロインズ揃い踏み?

「奏って本当に下ネタ嫌いだよね〜」

「清楚ぶってんじゃねぇよ」

「下ネタぐらい軽く躱せないと男ウケ悪いぞ」

数名の女子グループに囲まれている奏は会話の中心になっていた。

その会話の内容を耳にした僕はその言葉を疑っていた。

「下ネタはちょっと…」

完全に皆の前では猫を被っている奏に嫌気を差すが、ただ呆れて嘆息することしか出来ない。

その光景を見ていられなくて逃げ出すように教室を出るとお手洗いに向かう。

用を足して手を洗うと男子便所を出る。

「ちゃんと手洗った?」

便所を出るとすぐそこに上級生女子が立っている。

「永野さん。洗いましたよ。子供じゃないんですから…」

苦笑して永野に相対すると彼女は残念そうに息を吐いた。

「はぁ。洗ってなかったら匂い嗅ぐつもりだったのに…」

永野鏡ながのきょうも端的に言えば変態であるだろう。

僕の性質は変態を呼び寄せるものなのかもしれない。

本日は上級生女子である永野に捕まってしまう。

「何言ってんですか…あまり品の無いことを言っていると下級生に嫌われますよ」

「それは大丈夫。皆の前では清楚を演じているから」

「奏もそうでしたけど…どうして僕の前では変態になるんですか?」

問題の核心を突くかのような言葉に永野は薄く微笑む。

「なんでだろうね。悩む必要はないよ。それだけ魅力的ってことだから」

「あまり嬉しくないですね。素直に好意を告げられた方が嬉しいですけど…」

「そんな普通なことして何が楽しいの?誰かの特別になるには印象に残ることをしないとでしょ?」

「それで変態行為ですか?逆効果だと思いますが…」

僕の言葉を途中で遮った永野は手を前に出して首を左右に振る。

「それが意外にもこれからボディブローの様に徐々に効いて来るんだよ」

「そうですかね…そうは思えませんが…」

「ふふっ。これから秋彦くんの変わっていく姿を楽しみにしているよ」

永野はそれだけ言い残すと下級生の階の廊下を我が物顔で歩いていく。

余談ではあるのだが永野にはファンクラブがあるほど人気の女子生徒である。

同級生にも下級生にも人気の美しい女子生徒だ。

そんな彼女が変態発言をしているなど誰も想像していない。

僕だけが知っている事実に少しだけ背徳感を覚えると教室に戻っていくのであった。


無事に本日の授業は全て終わり放課後を迎える。

一人で教室を抜けて大人しく帰路に就こうとしていると後ろから声を掛けられて振り返った。

「先輩!今日は家庭教師の日ですよ!忘れてないですか!?」

後方から僕を追いかけてきた下級生女子生徒。

尾灯白瀬びとうしらせは息を切らせながら僕のもとまでやってくる。

「悪い。普通に忘れてた」

「酷い!これは罰が必要ですね!」

「はいはい。良いから行くぞ」

「わぁ〜い!蔑ろにされた〜♡」

尾灯の性癖らしきものに嘆息すると僕と彼女はそのまま校舎を抜けていくのであった。

僕は尾灯に勉強を教える家庭教師の様なものをしている。

週に一回彼女の家で勉強を教える約束だ。

それが今日だということ。


次回。

後輩宅にて…。

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