崇高な愛 4
朝、目覚めた時には、どんな夢を見ていたのかすっかり忘れてしまっていた。しかし酷い夢だったのは確かだったようで、ネグリジェが汗にぬれて体に張り付いていた。
「おはようございます、フィーネ様」
フィーネは眠い目をこすりながら、なんでこんなに眠いのだと、思考を巡らせつつ、いつものルーティンである今日のやることを頭の中でチクタク考えながら、昨日の就寝前に起きた一連の出来事とカミルの事を思い出した。
しかし部屋の中のどこにも彼はの姿は見当たらず、フィーネの前にいるのは、フィーネの専属の側仕えである、ロミーだけだった。
ロミーは不思議そうな顔をしながら、目覚ましの紅茶を入れて、ミルクをたっぷり注いでから主の元へと差し出した。
「昨日は夜遅くまで、勉強をされていたのですか?」
「ありがとう、うん。そんなところです」
「フィーネ様は努力家でいらっしゃいますね、お若いですのに」
「そんなことないですよ。……今日の予定は、何か変わったことあったっけ?」
そんな日常的な会話をしながら、紅茶を飲む。しかしフィーネの頭の中には、やり直す前の記憶で知った、ロミーの裏切りのことが頭に浮かんでいた。
「とくにはございません。ビアンカ様はご当主様と、本日は王宮のお茶会、ベティーナ様は、キースリング侯爵邸にて魔法の勉強会があるそうです」
「魔法の……」
「ええ、ベティーナ様は魔法の才能があるようですから、御呼ばれをうけたのですね」
ロミーは、いつもの通りに家族の予定まできちんと、説明してくれて、ふんわりとした女性に見えてもきちんと仕事をこなしてくれる、幼いころから仕えてくれている特別な側仕えだった。
そんな彼女を前の記憶で見たのは、デビュタントのすぐ後の事、王宮からの脱走を試みたフィーネを彼女自身が捕らえて、ベティーナに差し出す未来。
フィーネの信頼していた数少ない人間の裏切りだけあって、その時の苦い気持ちは前の記憶を手に入れた時に強烈に伝わってきた。到底、許せない、そんなふうに考えていたと思う。
……しかし......だから、決してロミーは信頼できない相手なのだと考えるのは簡単。でもそれは、大きな権力を前にした無力な平民がどれほど力のないものなのかを知っている人間はやってはいけない事だと思う。
「……そうね。ベティーナは多彩でうらやましいわ」
考えながら惰性で返事をして思考を続ける。
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