ダンジョン配信のチャンネル登録者数を増やすためには、やっぱり四天王のダンジョンでしょう
第54話 そもそもなんで四天王の居場所がバレてるんでしょうね
新戦略・応援配信をやるために、下調べを開始しました。
まずは四天王の状況を調べたいので、冒険者ギルドで調査しましょう。
いつものバケツみたいなヘルメットをかぶった受付のおじさんに、四天王の現状について尋ねたら、ちょっと驚かれました。
「四天王のダンジョンだって!? お前らレベルが低いパーティーなのに、そんな危ないところに挑戦して大丈夫なのか?」
私は完全無欠のブイサインで答えました。
「大丈夫です。だって倒すつもりがないですし、ただ応援したいだけですし」
「ん……? 応援とは……?」
「『がんばれー、かっこいいー』と黄色い声で殿方を応援して、我々はクエストのおこぼれだけ、かっさらうんですよ」
「そうはっきりとハイエナ行為だと宣言するんじゃない」
「我々はクエストのクリア報酬と、配信の広告料だけ欲しいので、四天王を撃破した実績とかいらないんですよね。でも強いパーティーは四天王を撃破した実績と経験値と宝箱が欲しいわけですから、ウインウインの関係でしょう」
「お前がウインウインの関係というだけで、一気に胡散臭くなったな」
「そんなこといわずに、四天王の居場所だけ教えていただければ」
私と受付のおじさんが漫才みたいなやりとりを続けていると、僧侶のレーニャさんが小動物みたいに首をかしげました。
「そもそもさ、なんで冒険者ギルドって、四天王の位置を把握できてるの? それって魔王軍にとって大事な情報だと思うんだけど」
受付のおじさんは、ひそひそ小声で教えてくれました。
「実はな、魔王軍にも金に困ってるやつらがいてな。そいつらが機密情報を売ってくれるんだよ」
いやはや人類もモンスターも世知辛いですねぇ。お金のために身内を裏切るんですから。
でもまあお金がない苦しみはわかりますから、それを全否定できない自分が悲しい。
……念のために言っておきますが、私がお金のために仲間を裏切るという意味じゃないですからね。
さすがにそこまで腹黒じゃないですよ。っていうか仲間を裏切るのは腹黒とは別の概念です。
それはさておき、受付のおじさんに四天王の位置を教えてもらったので、あとは強いパーティーの動向を探るだけです。
「たしか冒険者ギルドって、同じクエストを受注した人たちをリストアップしてましたよね」
「それが最近非公開になったんだ」
「なぜです?」
「お前たちが勇者パーティーで寄生配信しただろう? あれをモノマネするやつらが続出したから、禁止になったんだ」
はい、私たちのせいで非公開になりました。
一度バレたおいしい手法は、簡単に真似されるわけですね。
ふーむ、腹黒いのは私だけじゃなくて、人類全体の業かもしれません。
それはともかく、寄生配信は対策済みになったわけですから、今後難しくなるでしょう。
戦士のアカトムさんは、受付カウンターに肘をついて、ため息をつきました。
「……どんどん汚れキャラになっていくのに、昔ほど悲しめないのは、ボクもすっかり悪に染まってしまったんだろうか?」
そんなに落ち込まないでください。うちのパーティーのあくどい方針は、私の腹黒が原因ですから。
でも汚れたアカトムさんも魅力的なので、そのまま騎士の家系だとは思えないほどに堕落してほしいなーって。
武道家のシーダさんが、冒険者ギルド内部を見渡しました。
「リストが非公開になっても、強いパーティーは見ればわかるぞ」
いいところに気が付きましたね、さすが力がすべての武道家です。
いくらリストが非公開になっても、自分たちの足で情報収集すれば、強いパーティーがどこのクエストを受注したのかわかるわけです。
腹黒な手段が対策されたなら、その隙間を狙って新しい腹黒をぶつければいい。
いわゆるイタチごっこです。
たぶん、一般的な物語の主人公って、イタチごっこをされることに頭を悩ませる側だと思うんですけど、私の場合はイタチごっこを仕掛ける側ですからね。
愉快痛快というやつですよ、はっはっは。
というわけで、私たちは強いパーティーの下調べを開始しました。
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