第53話 今回の配信のリザルト

 町に戻りましたから、今回のアスレチック渓谷で、どれぐらいの広告収入を得られたのか計算していきましょう。


「広告料が150ゴールドで、クエスト報酬が50ゴールド。合計で200ゴールドですね。ギリギリ宿泊料は稼げましたが、それ以上は望めない計算です」


 僧侶のレーニャさんが絶句しました。


「す、少なすぎるわ……200ゴールドを四人で分配したら、50ゴールドしかない……これなら日雇いで働いて100ゴールド手に入れたほうが効率がいいもの」


 戦士のアカトムさんも収支表を見ました。


「ピーク時には500人の視聴者がいたけど、あれは瞬間最大風速であって、性格反転キノコでおもしろくない解答をした瞬間、100人まで減ったんだね。平均すると、だいたい150ゴールドの収入しかないわけか……」


 武道家のシーダさんは、ふんふんとシャドーボクシングしました。


「次はお宝ざっくざくのダンジョンを攻めればいい。それを売り飛ばせば、たくさん稼げる」


 実のところシーダさんの発想が、冒険者としては正統派なんですよね。


 でも私たちは弱小パーティーなので、お宝ざっくざくのダンジョンにチャレンジしたら、下手すると死んじゃいますからねぇ。


 だからこそダンジョン配信による広告収入なんですけど、やっぱりお客さんをたくさん集めるのは難しいです。


「長期的な目線で考えると、ダンジョン配信路線を突き詰めたほうがいいんですよね。もし勇者パーティーが魔王を退治したら、強いことのアドバンテージが薄れてしまいますから」


 レーニャさんは、むーっと唸りながら、配信チャンネルの統計データとにらめっこしました。


「チャンネル登録者数は地味に伸びたけど、勇者パーティーとか、お色気配信のところと比べたら、ぜんぜん足りてないのよね」


 うちのチャンネルは、現時点で登録者が1000人います。


 勇者パーティーは100万人突破していますし、お色気ジェナーディのところも30万人近くいます。


 うーん、大人気の大手と比べたら、やっぱり固定客が少ないですねぇ。


 でも駆け出し配信者で、チャンネル登録者数1000人まで到達したことは、幸先明るいと思うんですよ。


「回数を重ねて登録者数を増やしていけば、平均視聴者数も増えると思うんですけど、もし既存のお客さんに飽きられたら、むしろ減ることだってありえますね」


 戦士のアカトムさんは、VITで冒険者ギルドの公式チャンネルを開きました。


「ボクたちの現状をふまえて、次はどこのクエストを受注して、チャンネル登録者数を増やしていくかだね」


 武道家のシーダさんが、びしっと黄色い文字を指さしました。


「四天王のダンジョンを攻めたらどうか?」


 アリっちゃアリですね。だって敵を倒す必要はないんですし。


 なんなら四天王のダンジョンの入り口で、ごちゃごちゃ雑談して、それをおもしろおかしく配信できるなら、敵と戦闘せずに広告収入稼げますし。


 私の腹黒思考回路が、最適解を導き出しました。


「強そうなパーティーが四天王のダンジョンに突入したら、彼らの後ろをくっついていきいましょう。我々の役割は、ずばり応援です」


 戦士のアカトムさんが、それはもう呆れた顔で挙手しました。


「もしかしてボクたちは戦闘に参加せず、応援だけするのかい?」


「その通り! 強そうなパーティーに向かって『きゃーがんばってー! かっこいいー!』と黄色い声援を送れば、彼らは女の子に応援されたバフで、鼻の下をデレデレ伸ばしながら、モンスターをばったばったなぎ倒してくれるはず」


 応援した我々は、クエストのクリア報酬が手に入るし、広告料だって稼げます。


 応援された強そうなパーティーは、経験値とお宝をゲットできますし、女の子に応援されたことで自尊心が満たされます。


 おぉ、すばらしい、まさにウインウインの関係じゃないですか。


 いやぁ、これでまた楽して稼げますねぇ。


 はっはっは、私ってば、本当に腹黒。

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