第33話 インタビュー対象その3 スタッフに食糧を配給する戦士ギルドの中年女性

 今回インタビューしていくのは、水と食糧を配給する担当者です。


 腹が減っては戦ができぬ。


 どんな超人だって、しっかり食べておかないと体を動かせないわけですね。


 となれば、作業スタッフの食べ物を用意することは、とてつもなく大事な仕事になります。


 しかも現地は、陸路と繋がっていない遠征地なので、船に積み込んだ食糧が供給量の上限になっています。


 おおよそ四日分の食糧を持ってきましたが、敵が四天王であることを考えたら、やや頼りない量でしょう。


 もし安全マージンを確保するのであれば、ダンジョン攻略は三日間で終わらせるべきですね。


 しかし配給担当者が優れていれば、四日間に引き延ばせるはず。


 そんな滞在期間の要となる配給担当者ですが、戦士ギルドに所属する中年女性でした。


 名前はハルさんです。今年四十歳。かつては冒険者でしたが、帝国弓兵の旦那さんと結婚して引退。現在は三人のお子さんを子育てしながら、戦士ギルドの兵站を担当しています。


 ハルさんですが、肝っ玉母さんです。冒険者時代に鍛え抜いた筋肉は今でも残っていて、ちょっとした荷物なら片手で放り投げられます。


 なんなら大切な食糧を盗み食いしようとしたやつの襟首をつかんで、ぽいっと海に投げ捨てました。


 うーん、パワフル……!!!


 うちの武道家であるシーダさんも、ぐっと握りこぶしを作りながら、ハルさんを激賞しました。


「やはりパワー……! 圧倒的なパワーが、すべてを解決する……!」


 脳筋美少女に絶賛されるほど、ハルさんの上腕二頭筋は仕上がってるわけですね。


 そんなパワー系の中年女性に、私はインタビューしました。


「三人もお子さんがいるのに、船で離島に遠征するのは大変だったでしょう」


「子育ては親戚一同でやってるから、なんとでもなるよ。それに今回の遠征は比較的近場だったから、そこまでキツくないかもね。前回のダンジョン攻略は、船で三日ぐらいかかる距離だったから、あれは本当に大変だった」

 

 たとえ成人男性の襟首をつかんで投げられるパワーがあっても、遠征地での長期滞在は大変なんですね。


 食事だけではなく、睡眠やトイレだってコストになるわけですから。


「船で遠征するとなれば、積載量に限界があるじゃないですか。食糧以外にも、キャンプ用品なんかも積んであるわけですから、食糧庫を圧迫することになって、自然と滞在期間が狭まると思うんですよ。なにか工夫していることはありますか?」


「ここは海に面してるからね。現地で魚を釣ることで食べ物を余分に用意するんだ。そうすれば、船に積み込んだ保存食を温存できるだろ?」


 食糧配給チームは、船上で釣りををしていました。釣れた魚は、すぐにハラワタを抜いて、浜辺で塩焼きにしています。


 うーん、魚の脂がこんがりと焼けて、いい匂いが漂ってきますねぇ。


 どうやら勇者パーティーの盗賊イシュタルは、素潜り漁が得意らしく、銛を掲げると、


「おいユーリュー! 俺様のスピードは素潜り漁でも役立つんだぜ! ちゃんとVITで映せよな!」


 と言いながら、服を脱ぎ捨てて全裸になりました????


 なんで全裸になってるんですか!!!!!!!?????


 あー! 股間……! 私だって女の子ですからね!? そんなモノいきなりオープンになったらパニックですよ!?


 そもそも、アレをVITで映したら、私たちの配信chがBANされるでしょうが!!!!!


 あわててVITのカメラを別の方向にそらしたら、肝っ玉ハルさんの喜ぶ顔が映りました。


「若い男の裸はいいねぇ!!!!」


 正直ですねぇ……子育て中なのに。まぁ、これぐらい生命力がないと船での遠征に耐えられないんでしょうけど。


 コメント欄にいる、勇者ファンの女性陣も大喜びでした。


『イシュタルってあれだけ細いのに、ちゃんと筋肉ついてるわね』『眼福よ、眼福、主婦業の清涼剤だわ』『盗賊イシュタルも見せてくれたんだし、勇者エリアフも見せてほしいわ』


 うーん、みなさん恐ろしいぐらいに正直ですねぇ……帝国の女たちは生命力があふれているというオチで、CMタイムです。


 ****CM***


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