第32話 インタビュー対象その2 水攻め用の水路を作る大工の親方

 本日のプロジェクト情熱大陸Xは、勇者パーティーを支える人々が主役です。


 現在、ダンジョン前には、水攻め用の水路が作られています。


 作業員のみなさんが、船から石材を運んできて、土台として固定。その上に木製の経路を敷いていました。


 これらの土台と経路ですが、すべて錬金術師が作った特注品です。


 となれば、この現場を管理する責任者は、肉体労働スタッフと、魔法関連スタッフを、同時に使いこなさないといけません。


 かなり難しいお仕事ですから、ただ知識があるだけでは足りなくて、経験と人柄が必要になってきます。


 それが大工の親方です。名前はブノイクさん。今年で五十歳。少し白髪が目立つ年齢になってきましたが、現場労働で鍛えた肉体は壮健そのものです。


 親方用の赤い作業着を着ているんですが、まるでお祭りに参加しているみたいに粋な姿でした。


 そんな渋い中高年男性である親方が、煙管をくわえて休憩所のテントに入っていきます。


 どうやら一服するみたいなので、さっそくインタビューしてみようと思います。


「親方。休憩中失礼します。四天王のダンジョンを水攻めするための土木工事ですが、かなり手慣れた様子でした。もしや初めてではないんでしょうか?」


 親方は、タオルで汗を拭きながら、こう答えます。


「ああ。何度も勇者たちの仕事を手伝ってるからな。慣れたもんだ。おかげさまで、オレのレベルもバカみたいに上がっちまったよ」


 といいながら、親方がステータスを見せてくれたんですが、レベル45です。


 えっ、レベル45!?


 なんですか、この高レベル親方は…………。


 帝国騎士団のみなさんより強いじゃないですか。


「どうして堅気の仕事をしている親方が、戦闘職である帝国騎士よりレベルもステータスも高くなってしまったんですか……?」


「大がかりなギミックでモンスターを倒すと、親方であるオレに経験値が入るんだよ。そのせいで強くなりすぎちまった。もはや作業現場をモンスターに襲われても、自分で倒せばいいだけだ」


 と言っているそばから、タコみたいな水棲モンスターが、船着き場に上陸してきたんですが、親方がトンカチを投げ飛ばして、一撃で沈めてしまいました。


 強すぎです、この親方!


 でもなんだか納得いかないような……???


 帝国騎士のみなさんも「どうして我々より大工の親方が強いんだろうか……」と悲しそうでした。


 うーん、まぁいいでしょう。細かいことを気にしていたら、こんなギャグ作品の主役は張れませんよ。


 気持ちを切り替えて、水攻めの話題を掘っていきましょう。


「名高い勇者のサポートとして、水攻めの責任者をやるとなれば、かなりの重圧があると思いますが、どうやって克服したんですか?」


「職人の仕事ってのはな、時と場所を選ばないんだ。きちんと手を動かして、きちん作る。それだけだ」


 うーん、渋くてかっこいいですねぇ。こんな大人になれたら、仕事も楽しいんでしょうねぇ。


 と感心していたら、親方直属の部下が、プライベートの弱点を暴露しました。


「うちの親方、ギャンブル弱いくせにノメりこむんだよ。とくに競馬」


 あぁ……うちの僧侶と同じ弱点を持っているんですね……。


 ちなみに競馬という単語に反応して、僧侶のレーニャさんが、ウッキウキで配信画面に飛び込んできました。


「ねぇねぇ親方、この前の皇帝賞・春、誰に賭けたの!?」


 親方の表情が、ぴきーんっとギャンブル狂に変化しました。


「ワイネルベーグル単勝勝負! オレの給料全部賭けた! 漢を見せろY・タリル!」


「四着だったじゃん」(競馬は三着以内が馬券内なので、四着以下は全部ハズレです)


「なんでだタリル……! お前はいつかG1を勝つ男のはずなのに……!」


 親方、このままじゃ夢が叶う前に破産してしまいますから、給料全部賭けるとかやめましょうね。


 というわけで、次回は現場の水と食糧を管理するスタッフにインタビューしていこうと思います。


 いったんCMでーす。


 ***CM***


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