第22話 帝国騎士団のみなさんと一緒にアルバイトすることになりました

 私たちは、戦士ギルドに入ると、しばらく待機になりました。


 採用予定人数は十人前後ですから、私たち四人に加えて、あと六人ぐらいは採用するはずですね。


 私は無給で働かないといけないですが、他の三名に関してはちゃんと給料出るみたいですから、まぁまぁ悪くない条件といっていいでしょう。


 寄生配信も問題なくできそうですし、幸先のいいスタートを決められそうです。


 なお戦士のアカトムさんは、ちょっと浮かれていました。


「まさか本当に勇者パーティーに同行できるなんて、夢みたいだ。きっと悪いやつをやっつけて、困った人たちを助ける冒険だ。騎士の血が騒ぐね」


 いや私たちは、勇者人気にあやかって、寄生配信するんですから、そんな高尚なノリじゃないんですよ。


 ……まぁいいですか、やる気があるのは良いことですから。


 武道家のシーダさんは、悔しそうに地団太を踏んでいました。


「勇者パーティー、いくらなんでも強すぎる。我の力では、まるで歯が立たない」


 あー、それはほら、ないものねだりというか。


 彼ら常軌を逸した強さですから、私たちみたいな弱小パーティーが張り合うところじゃないと思うんですよ。


 自分たちの持ち味を活かしましょう。冒険者として勝負するんじゃなくて、配信者として勝負するんですから。


 そんなこんなで、私たち以外に採用された人たちが、戦士ギルドの内部に入ってきました。


 帝国騎士たちでした。良質の鎧と盾には、帝国の紋章が入っていますし、雰囲気も堅苦しいので、本物でしょう。


 戦士のアカトムさんが飛び上がって、私の背中に隠れます。


「な、な、なんで騎士団がアルバイトに応募するのさ」


「もしやお知り合いですか?」


「兄たちの同僚だよ。でもなんで騎士がアルバイト? お金には困ってないでしょう、高給取りなんだから」


「そもそもアカトムさんは、なんで隠れているんです?」


「だって兄たちとケンカして実家を飛び出したのに、いまさら兄たちの関係者に会いたくないだろう?」


 んー、まぁそれもそうですね。


 とりあえず、アカトムさんには机の下に隠れてもらって、私は騎士たちに質問しました。


「騎士のみなさん。なぜアルバイトに応募したんです?」


 騎士の代表が、闘志を燃やしながら、こう答えました。


「勇者パーティーの腕前を知ることが目的だ。だから騎士団長の許可も取ってある」


 どうやら腕試しが目的みたいですね。


 帝国騎士はエリート集団ですから、中途半端な冒険者よりレベルが高いですし。まぁライバル意識も芽生えますよねぇ。


 ちなみに騎士の代表が、ステータスを見せてくれたんですけど、レベル35でした。


 おー、さすが帝国騎士、一般団員ですら、高レベルですよ。


 ってことは、騎士団長とか、もっとレベルが高いんでしょうね。


「もしかして、将来的には、騎士団も配信に参入する予定があったりします?」


「うーん、どうだろうなぁ。広報のためにやることはあるかもしれないが、冒険者たちみたいに広告収入目当てってことはないと思うぞ」


 騎士団員募集中とか。騎士団のイメージアップとか。


 まぁ、たしかに広報として使うだけでも、VITは有用ですか。


 彼らへの質問は終わったので、仲間たちのところに戻ろうとしたら、女性騎士が、私を呼び止めました。


「あなた、どこかで見たことのある顔だけど、もしかして親族に有名人がいて、その人とそっくりだったりしない?」 


 ぎくりっ。私は一瞬動揺しました。


 女性騎士のいっている有名人というのは、私の父のことです。


 ちょっといろいろありまして、父は現在指名手配中です。街中の広報掲示板に、賞金首として貼り出されています。


 指名手配犯の娘だと知られると、いろいろ面倒なので、ポーカーフェイスを維持しました。


「い、いやぁ、他人の空似でしょう。よくある不細工な顔ですし」


「そうよねぇ。その顔じゃあ、女の子にモテなそうだもんね」


 男の子だと勘違いされた状態で、不細工であることを肯定されてしまうなんて、とても複雑な胸中になりますねぇ。


 では女の子だと知られた状態で、不細工であることを肯定されたら、どうなるんでしょうか?


 ……考えるのはやめましょう。ネガティブを越えて、怒りが湧いてきたので。


 こんな感じで騎士たちと交流していたら、勇者エリアフと盗賊イシュタルが入ってきました。


 勇者エリアフは、仕事内容を説明するために、黒板に簡素な図を書いています。


 その間、盗賊イシュタルは暇そうでした。


 どうせなら暇を持て余したまま干からびてしまえばいいのに、なぜか私の顔を見るなり、にやーっと底意地の悪い笑みを浮かべました。


「おいタダ働きの雑用。レベル1の遊び人らしく、おとなしくいい子で待ってたか?」


 こ、こいつ本当にムカツク!

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