第21話 勇者の紹介と、盗賊の名前と、アルバイトの採用
勇者が、どんなやつなのか、語っていこうじゃありませんか。
ざっくりいえば、良いやつです。
裏はなくて、本当に良いやつなんです。
端正な顔立ちに、爽やかな笑顔。均整の取れた肉体美に、勇者のカッコいい装備。いかにも主人公キャラって感じのデザインですね。
最近の流行だと、一見まともそうな勇者が実は極悪人で、それと対立している腹黒キャラが正義の味方みたいなパターンが多いんですけど、うちの作品の勇者は、マジで良いやつなんですよ。
なんかこう、まぶしいですね。ただその場に存在しているだけで、神々しいんです。
いったいどんなモノを食べたら、こんなオーラが出るんでしょうね。
私みたいな腹黒キャラは浄化されてしまいます。まぁだからといって生き方を改めるつもりもないんですけど。
さて勇者なんですけど、私と盗賊の口論を仲裁してから、盗賊に声をかけました。
「イシュタルが、これだけ他人に入れ込むってことは、つまり彼女はアルバイトにふさわしいのかな?」
どうやら盗賊の名前は、イシュタルみたいですね。
勇者の名前がエリアフっていうのは有名すぎて知っているんですけど、他のメンバーの名前は知りませんでした。
さて盗賊のイシュタルですけど、私の顔をちらっと見てから、ふんっと鼻を鳴らしました。
「性格が悪いことは玉に瑕だが、機転が利くんだ。しかも今回はタダ働きで使い倒せる。悪くないんじゃないか?」
性格が悪いって本人に向かって言っちゃうんですか???
やっぱりこいつムカツキますね。
私が、盗賊イシュタルに怒りをぶつけようとしたら、勇者エリアフがぱちぱちと手を叩いて、騒動を強制終了させました。
「というわけで、遊び人の男の子を代表としたパーティーは採用決定ね。戦士ギルドに入って待っててくれ。俺たちは他の人材も採用しなきゃいけないから、仕事内容については、あとでまとめて説明するよ」
無事採用になったのはいいんですが、勇者エリアフは、私のことを男の子だと勘違いしましたねぇ。よくあるパターンです。
その点、盗賊イシュタルは、なんの説明もなく私を女だと理解したんですから、やっぱり匂いフェチの変態なんでしょう。
あんなかっこいい見た目のくせに、変態趣味の持ち主だなんて、もったいないやつ。
僧侶のレーニャさんが、にやにやしながら、私の耳元でささやきました。
「当たり屋がきっかけで、好みの男と仲良くなるなんて、ユーリューらしい強運ね」
あれのどこが仲良くなったんですか。しかもまったく好みじゃないですよ、あんな腹の立つ自信過剰匂いフェチ男。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます