第17話 勇者パーティーの視聴者数はどんなもの?
正統派ダンジョン配信の大手である、勇者パーティの分析を続けていきます。
彼らは、戦士ギルドの顔役として、ダンジョン配信に参入しました。
戦士ギルドにしてみれば、ギルドのイメージアップを図るために。
勇者パーティーにしてみれば、魔王討伐の資金を得るために。
両者は手を組んで、広告収入を得るようになったみたいです。
その成果ですが、ぶっちぎりでした。
「うわーお、同時視聴数、10000人突破ですか。さすがに勇者ですね。人気者の面目躍如って感じです」
正統派の配信ですから、お色気要素なんて一ミリもありません。
いやまぁ、勇者パーティーはイケメンだらけだから、女性の視聴者めちゃくちゃ多いんですけどね。
そういうのを差し引いても、老若男女問わずお客さんが集まっていました。
たぶんですけど、廉価版VITを発売日に買った人たちが、最初に開いた配信って、勇者パーティーだと思いますよ。
だって抜群の知名度があるし、むちゃくちゃ強いですし。
いま私、勇者パーティーのダンジョン配信をリアルタイム視聴しているんですけど、常識外れの強さですよ。
ミノタウロスとか、グレーターデーモンみたいな、上級モンスターを、おやつ感覚で倒していくんです。
いや本当に強すぎます。はっきりいって人間やめてますね。
そんな勇者パーティーの平均レベルは60でした。
なんですか、レベル60って。
私、レベル1ですからね。しかもうちのパーティーの平均レベル3ですからね。
つまり単純計算で、うちのパーティーの二十倍強い、ってコト!?
わぁ、泣いちゃった、私が。
戦士のアカトムさんも、勇者パーティーのダンジョン配信を偵察して、すぐに両手を挙げました。
「降参だよ、降参。勇者パーティーに人気で勝てるはずがない。それに正統派路線も、ボクたちには向いてないね。だって勇者の生配信を見続けてたら、視聴者の目が肥えてきて、普通の冒険じゃ満足できなくなるでしょ」
正しい分析です。
しかしダンジョン配信者というのは、正統派以外にも戦い方があるんですよ。
私は、パーティーのみなさんに、今後の方針を語りました。
「というわけで、私たちが目指すべき配信は、ネタ枠です。わかりやすくいうと、うちの美少女脳筋武道家みたいな、普通じゃないことを繰り返して、笑いを誘うんですよ」
武道家のシーダさんは、腹筋を終わらせると、今度は腕立て伏せを開始しました。
「普通じゃないトレーニングによって、勇者パーティーを追い越せるほどの筋肉を手に入れるということか?」
こういう斜め上の発想が大切なんです。
私たちには、お色気配信で勝てるだけの可愛さはないです。
正統派配信をやれるだけの実力もありませんし、そもそも世間に信頼されていません。
しかし、私をふくめて、四人全員が、ちょっと頭がおかしいわけですから、それを武器にすれば、配信者として勝負できるわけですね。
しかし戦士のアカトムさんは抵抗しました。
「ち、違うんだ。ボクは、まだ染まりきってないはずなんだ。騎士の家系に生まれたこのボクが、ネタ枠なんて恥知らずな生き方を選択するなんて……」
私は、戦士のアカトムさんの肩に優しく手を置きました。
「おとなしく認めましょうよ。たとえ騎士の家系に生まれても、お笑い向きの生き様ってあるんですよ」
「やめてくれ、ユーリュー、君は僕に、なんてことをやらせようとして……」
「お金、欲しくないんですか?」
「うわあああ、貧乏が憎い……!!!」
こうして私たちの配信方針が決まったとき、僧侶のレーニャさんの競馬も佳境を迎えていました。
「カワータ、逃げ切れるのよね、そのペース!? あれ、もしかして足残ってないの……? うそうそうそ、あー、馬券外に吹っ飛んだ! なんであたしが買ったときは飛ぶのよカワータ、買ってないときは来るのに!!!」
どうやら夢は砕け散ったようです。まぁいいでしょう、好きに使っていいと渡したお金ですし。
しかしレーニャさんは、まったく懲りていませんでした。
「ねぇねぇ、お金貸して。次のレースで倍にして返すから」
お断りに決まっているでしょう。まったくもう。
++おまけ 皇帝賞(春)の着順表・馬券内のみ++
一着 5番 カトノエメラルド 鞍上C・メルール 1番人気
二着 6番 ヴィルピーラ 鞍上M・カムーロ 4番人気
三着 8番 シルバーシップ 鞍上T・ヨヤーマ 5番人気
長距離のメルールめっちゃ強い。
強い馬に乗るとカムーロは馬券内に入ってくる。
シルバーシップは長い直線で伸びきれなかった。ヨヤーマの騎乗は悪くなかった。
作者の好きなYタリルは、そこまで強くない馬を四着にねじ込んで、馬主と調教師は満足した。
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