第14話 前金ゲットしてからのお話し
私が担架で外に運ばれたあと、他のパーティーは普通にクエストをクリアしました。
となれば、予測通り、彼女たちは魔法ギルドの職員から、専属契約について勧誘を受けました。
「君たちには、お得な選択肢がある。王宮か教会と契約して、配信広報官として働くことだ。発言に制約は生まれるが、国家のバックアップを受けた状態で、ダンジョン配信ができるから、リスクを最小限に抑えられるだろう」
やっぱり私の読みは正解でしたね。
配信者に七割なんておいしい条件で、これだけ巨大な組織が全面バックアップするはずがないんですよ。
配信広報官なんてかっこいい名前がついていますが、要はプロパガンダマシーンです。
王宮か教会にとって、ひたすら都合のいい情報を流し続けないといけないんです。
最初のうちは面従腹背で配信できるでしょうが、たとえ不正や不義を発見しても、それを告発してはいけないわけですから、かなりストレスがたまるはずです。
なお、例のぶっちぎりで視聴者の多いミニスカートパーティーですが、配信広報官の仕事に、なんの迷いもなく着任しました。
というか、彼女たちの場合、この案件の裏側に隠されていた諸々の条件をすべて見透かしたうえで、おパンツ配信をやったわけですからね。
面従腹背も平然とやれるし、金のためなら不正だって見逃せるでしょう。
はっきりいって脅威ですよ。
彼女たちのことは、覚えておいたほうがいいでしょう。将来、私たちのライバルになるはずですから。
とくに覚えておいたほうがいいのは、参謀役です。
吟遊詩人の女の子です。
透き通る青い髪、なよっとした細身の体型、おっとりした表情。手足も枝みたいに細くて、いかにも守ってあげたくなる女子です。
それでいて、脱いだらすごいタイプでしょうね。
たぶん清楚なイメージを守るために、あえて締めつけの強い洋服を選んで、胸元を押し潰しています。
そんなイメージ戦略を実行するだけあって、彼女は私に負けないぐらい腹黒いですよ。
表向きは、優しくて温和な穢れ無き乙女のように振る舞っています。
しかし、その裏側では、複数の男を手玉にとって、相手の金がなくなったとみるや、ぽいっと捨てるタイプなんです。
こういうやつって、本当にいるんですよ、女社会には。
さて、この銭ゲバ吟遊詩人ですが、担架で運ばれていく私を見て、ほんの一瞬だけ目を合わせました。
「あなたの顔、よーく覚えておきますわよ、腹黒ユーリューさん」
どうやらあの吟遊詩人、私の当たり屋作戦を見破ったみたいですね。
なるほど、やるじゃないですか。
私は、彼女の銭ゲバオーラに負けないように、腹の底から声を出して、質問しました。
「そういうあなたの名前は?」
「ジェナーディ」
「二面性の激しいジェナーディさんですね、私も忘れませんから、あなたの顔」
ばちばちっと火花を散らして、私たちの初対決は終了しました。
いつか彼女と争う日が来るでしょう。配信者の立場で視聴者数を競うために。
その日がくるまで、前金5000ゴールドを使って、しばし休息です。
ケガした足、直さないとですねー。
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作者です。ちょうど区切りのいいところなので、よろしければ作品のフォローと☆による評価をお願いします。次の話を書くための原動力になります。
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