組織に属さないダンジョン配信者としてスタートしました

第15話 特殊なアイテムを購入すれば、一般人でもダンジョン配信が可能になりました

 錬金術師ギルドの作った、遠距離通信可能なマジックアイテムですけど、正式採用された結果【ビジョニング・インタラクティブ・トランスフォーム】略して【VIT】という名前がつきました。


 まだまだ発展途上の商品ですが、全世界に爆発的に広まって、ありとあらゆる場所で使われています。


 医療にも使えるし、軍事にも使えるし、まぁなんだって使えますよ。


 当然、ダンジョン配信みたいなエンターテイメントにだって。


 完全なる技術革新ですね。


 ただし発売当初は、かなりの高級品だったし、生産量が限定されていたので、組織単位でしか運用できませんでした。


 しかし普及率が高まって、量産体制が整えば、いきなりコストダウンするので、私たちみたいな貧乏パーティーでも購入可能なお値段になります。


 VITが値下がりして、庶民でも購入可能になった日。


 私はパーティーを代表して、錬金術師ギルドから、VITを二台購入してきました。


 そう、二台ですよ、奮発しましたねぇ。


 やっぱり例の試験配信で、前金5000ゴールド手に入れておいてよかったです。


 私はウキウキしながら、拠点にしている安宿に戻りました。


 宿泊費用をケチるために、本来二人用の部屋に四人で泊っているので、足の踏み場がないほどモノであふれています。


 自分でいうのもあれですが、女四人で密集して生活していると、甘ったるくてけだるい女臭さが充満しますね。


 まさしく男子禁制の部屋です。だって男の子をこういう部屋に入れたら、理性を失って狼さんになるんでしょうし。


 そんな女の花園と化した一室ですが、誰がベッドで寝るのかは、毎晩ジャンケンで決めています。負けた人は寝袋にくるまって床で寝ます。


 ちなみに私はジャンケン弱いので、ほぼ毎晩寝袋です。そのせいでちょっと足腰の疲れが取れにくいです。


 くっそー、もうちょいジャンケン強ければ、ふかふかのベッドで眠れるのに。


 ああ、そうだ、恩着せがましいことを言って、ベッドの権利を手に入れましょう。


「みなさん、私はVITを買い物してきたんですから、今晩はジャンケンせずにベッドを使う権利があると思います」


 全員に無視されました。ひどい。


 若干の理不尽さを感じつつ、VITを机に置きました。


 僧侶のレーニャさんが、ぴょんぴょんとカエルみたいに跳ねました。


「さっそく見てみましょうよ! いろいろな配信があるんでしょ! っていうか、競馬配信あるんでしょ、ねぇ競馬配信!」


 うるさいですねぇ、このギャンブル中毒者は。


 私はレーニャさんの肩をつかんで落ち着かせると、一旦ベッドに座らせました。


「確かに競馬配信はありますけど、後回しですよ。我々が最初に見るべきは、ダンジョン配信です」


「やだやだやだー! もう馬券は買ってあるんだから、競馬配信見せてよ!」


 複勝一点勝負。500ゴールド(一週間分の食費)を賭けています。はっきりいってバカですね。


「せっかく前金5000ゴールドのうち、2000ゴールド分を四人で分割したのに、いきなりギャンブルに全力ツッパですか?」


「当たり前じゃない。だって今日はG1・皇帝賞(春)・芝3200メートルよ。競馬ファンなら、誰でも注目してるレースだわ」


「せっかくまとまったお金があるのに、無駄遣いして減らそうだなんて……」


「減らないの! 増えるの!」


 増えたことなんてないし、なんなら総額で赤字なのに、どうしてこんなに強気なんでしょうか。


 でも、ぎゃーぎゃーうるさいので、本機のVITをレーニャさんに渡して、私たちは予備のVITでダンジョン配信を見ることになりました。


 

+++++おまけ。皇帝賞(春)の出馬表++++++

1番 ラノンエスプレッソ  鞍上Y・カワータ 2番人気

2番 ワイネルベーグル   鞍上Y・タリル  9番人気

3番 ハラッパインパクト  鞍上H・ヨシータ 3番人気

4番 ナスティンコーヒー  鞍上A・ツムーリャ 7番人気

5番 カトノエメラルド   鞍上C・メルール 1番人気

6番 ヴィルピーラ     鞍上M・カムーロ 4番人気

7番 ゴイシンフラッシュ  鞍上K・ミューラー8番人気

8番 シルバーシップ    鞍上T・ヨヤーマ 5番人気

9番 ヴェイムゲーム    鞍上D・ペーン  6番人気


 レーニャはラノンスプレッソの複勝一点勝負。なぜならギャンブル中毒者のくせに手堅い勝負が好きだから。


 作者はこの物語を書いた時点で誰が勝つのか考えていないので、ワイネルべーグル単勝勝負をしている。なぜならY・タリルのファンだから。

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