第6話 ゼランで求人・ゼランで高収入♪ 中編
前回、クエスト手配師のゼランは、シーダさんの鉄拳で制裁されまして、そのまま後方へビューンっと吹き飛びました。
いやぁ、とんでもない威力ですねぇ。さすが脳筋パンチ。
さて、ぶっ飛ばされたゼランですけど、都市の外壁に背中から激突して停止。サングラスがパキンっと割れて、グヘっと血反吐を吐きました。
HPゲージがギュイーンっと減って、あと一発かすり傷を負うだけで死ぬ状態になりました。
っていうか、死ねばいいのに。
でも、ゼランはしぶといので、大量の薬草を食べてHPを回復させつつ、怪しい営業を継続しました。
「だからいきなり殴るなよ! 本当に好条件なんだからな! だってケツモチが魔法ギルドなんだぞ、魔法ギルド! 国家の認めた公的な組織が依頼主なんだってば!」
まったく、ゴキブリみたいにしぶといだけじゃなくて、熱にうなされたオークみたいにうるさいですねぇ。
そもそもの話として、ケツモチなんて関係なく、ゼランなんて信用できるはずないでしょう。
「あなたみたいなグレードの低い手配師が、私たちみたいな低レベルパーティーに紹介できるクエストは、赤字になるのが丸わかりな不良債権って相場が決まってるんですよ」
この世界にクエストは二種類あります。
冒険者ギルドが配る【公営クエスト】と、クエスト手配師の配る【私営クエスト】です。
公営クエストは、その名のとおり、国家の責任でクエストを配布しています。
私営クエストは、各地に点在するクエスト手配師たちが、自己責任で配布しています。
どちらにもメリットとデメリットがありまして、公営クエストはリスク評価が安定していて、その代わり冒険者が受け取れる利益がやや少なめ。
私営クエストは、リスク評価が不安定ですが、『まともな案件であれば』冒険者の受け取れる利益が多いです。
つまり私営クエストで、まともではない案件を掴んでしまった場合、リスク評価が不安定でありながら、たとえクエストをクリアしても赤字になるという最悪の結果になるわけですね。
そんな案件を誰が扱っているかといえば、グレードの低い手配師。
すなわちゼランのことです。
彼にしてみれば、自ら信用を投げ捨てることで、どんな怪しい案件でも扱えるようになったわけです。
後ろめたい依頼主にしてみれば、こんな手配師だからこそ利用価値があるので、必要悪として存在しつづけることになります。
我々みたいな冒険者にしてみれば、どこぞの誰かに殺されることを願うか、完全な意味で信用を失って廃業するのを心待ちにするばかりですね。
というわけで、私たちはゼランを無視して、野宿の準備に戻ることにしました。
しかしゼランは、トリモチのようなしつこさで踏んばりました。
「もう一度だけ言うが、この案件は魔法ギルドがケツモチなんだよ。だから本当に安全だ。しかもこの仕事を手伝ってくれたなら、前金で5000ゴールド出す。もちろん成功報酬は別だ。それでもやらないのか?」
ご、ご、ご、ご、ご、5000ゴールド!?!?!?!?!?
それだけあったら、私たちの宿代を一か月まとめて払えるじゃないですか。
しかも前金だけで5000ゴールドということは、成功報酬も同じぐらいあるはずですね。
もしやゼランのくせに、本当にまともな案件を持ってきたんじゃ。
…………おっと危ない、危ない。私たちは女の子パーティーなんですから、高額報酬にホイホイ誘われたら、それこそ洞窟キャバクラの二の舞になりますよ。
私たちは、アイコンタクトで意思を疎通させると、全員で石ころを投げることにしました。
「「「「やっぱり帰れ疫病神」」」」
ばしばしと石ころが当たりまくって、ゼランは大ダメージを喰らいました。またもや死にそうになりました。っていうか死んでほしい。
なんなら衛兵が巡回していて、私たちが石ころをぶつけるシーンを目撃したんですが、「なんだ相手はゼランか。死ねばいいのに」と見過ごしました。
うーん、ゼラン、本当に嫌われていますねぇ。自業自得というか、信用ゼロというか、タフさだけが取り柄というか。
さてゼランは本当に死んだのか、それともしぶとく生き延びたのか、次回のお楽しみです。
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