第11話 おパンツパワーは視聴者数の原動力
すべての女の子パーティーが、初心者向けダンジョンに進入して、ダンジョン配信スタートです。
初心者向けダンジョンの構造ですが、一本道の洞窟です。岩肌は滑らかであり、湿度もそこまで高くないです。
壁には、魔法のたいまつが掛けてあるので、自然界のマナが切れないかぎり、ずっとあたりを照らしてくれます。
初心者向けという単語からわかるように、このダンジョンは冒険者ギルドが定期的にメンテナンスしているので、洞窟内のあちこちが快適な状態に保たれていますね。
今日にかぎっていえば、魔法ギルドの職員たちが【念入りにお掃除した】ので、モンスターたちは八割ほどやっつけられたみたいです。
しかし魔法ギルドの職員たちは、ダンジョンから撤退したわけではなく、配信カメラに映らないように、そこらの物陰に隠れています。
あそこから風の魔法を使って、スカートをめくるつもりでしょう。
なんていやらしい。
といっても、うちのパーティーの場合、全身を覆う装備ばかりなので、スカートや露出とは無縁なんですけどね。
……いま、ちょっとだけ私の脳裏に『もし私がスカートをはいたら、美少女武道家のシーダさんより、ちやほやされるのでは』と悪魔のささやきが浮かんできましたが、ぱちんっと己の頬を叩くことで乗り切りました。
あぶなかった、これが承認欲求…………。
って、そんなことやっている場合じゃないんですよ。注意事項を一つ言い忘れていました。
配信用のカメラに映らないように、仲間たちに伝えました。
「みなさん、もしこの冒険で、宝箱やゴールドが手に入っても、絶対に拾わないでください」
僧侶のレーニャさんが、杖を落としかけるほど、びっくりしました。
「なんでよ。儲けるチャンスじゃない」
「契約書の末尾を見て下さい。このクエストで発生した利益は、すべて分配の条件に入っています。そう考えると、我々はわざとクエストを失敗して、このスキームから離脱するつもりなんですから、後腐れなく縁を切るためには、利益の分配そのものに関わるべきじゃないです」
武道家のシーダさんが、ちらりと他のパーティーを見ました。
「他のパーティーに、教えなくていいのか? 我々と同じように、わざと失敗したいやつもいそうなものだが」
「スカートに履き替えてきたパーティーには教えなくていいです。彼女たちはこのスキームに参加する気まんまんなので。逆に我々と同じように、スカートを拒絶したパーティーについては、こっそり教えてあげてください」
「わかった。こっそり教えてくる」
シーダさんは、フル装備だらけの女の子パーティーに大声で話しかけました。
「耳寄りな情報がある。このクエストをわざと失敗するためには――もがもが」
私は、あわててシーダさんの口をふさぎました。
こんな大声で話しかけたら、魔法ギルドの人たちに気づかれるじゃないですか。
ちらっと物陰にいる魔法ギルドの職員たちの様子を観察したら、どうやら風の魔法を練っている最中だから、シーダさんの発言に気づいていないようですね。
ふー、危なかった。
私は、シーダさんを洞窟の隅っこに引っ張っていくと、軽く説教しました。
「こっそりといったのに、なぜ堂々と大声で教えているんですか……!?」
「我の基準では、こっそりだった」
やっぱりこの脳筋、力加減を理解できないんですね。
そういっているうちに、戦士のアカトムさんが、目の前に落ちている宝箱を見て、歯ぎしりしています。
「ひ、拾いたい。目の前にお宝があるのに、手を出せないなんて……」
うんうん、代々騎士の家系なのに、ずいぶんと意地汚くなりましたね。
やはり貧乏生活に浸っていると、どんな高貴な生まれであっても、人間臭くなるんですよ。
実に良い傾向です。やはり由緒正しい血統なんてものは、我々庶民の位置まで引きずり下ろすべきですね。けっけっけ。
さてさて、こんな私たちの配信ですが、初期のころから変わらず、3人しか見ていません。まぁ当然でしょうね、だってなにもしてないんですから。
では他のパーティーの視聴者数がどんなもんかと調べてみれば、モンスターと交戦したところが10人ぐらい、宝箱を開けたところで15人ぐらいです。
うーん、いくら実験配信とはいえ、想像しているより視聴者の総数が少ないような?
これだけ若くて可愛い女の子が集まっているのに?
と思っていたら、違いました。むしろ視聴者の総数は、実験配信の割には多かったんです。
それはどういう意味なのか?
とあるパーティーの配信に、すべての視聴者が集中していたんです。
例のスカートに履き替えてきた、五人パーティーのところですよ。
彼女たちが、なにをやったのか?
無防備な姿勢で、宝箱を開けようとした瞬間、魔法ギルドの職員が風の魔法を発動。ひらーりとスカートがめくれたんです。
純白のおパンツが丸見えですよ。それも五人分。
な、なんていやらしい。女の私から見ても、これはセクシーと思ってしまうぐらいドキドキしますよ。
しかも、わざわざ自らの意志でミニスカートを履いてきたパーティーですから「きゃー! 風さんのえっちー!」とかいって、セクシーな配信を盛り上げています。
そんなえっちなハプニングを意図的に繰り返した彼女たちの配信の視聴者数ですが、すでに6000人を突破していました。
す、すごいですね、割り切った女の魔力と、スケベな男パワーが合体すると。
っていうか、こんな堕落した配信を昼間から見ている暇があったら、真面目に働いてほしいんですが……。
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