第4話 パワータイプの美少女武道家・シーダさんです

 武道家のシーダさんが、私の楽観論に対して、どんな異論を唱えたかというと、実にパワーな内容でした。


「筋肉さえあれば、すべて解決する。四の五の言わずに鍛えよ、我のように」


 シーダさんは、なんでもパワーで解決しようとします。


 それだけの実績もあるんですよ。


 彼女はレベル5なんですけど、ステータスを見ると、あきらかにパワーの値だけバカみたいに高いです。


 冒険者ギルドの測定によると、一般的な冒険者におけるレベル40クラスのパワーがあるそうです。


 ただし、それ以外の数値が低すぎて、おそらくこの先レベルが上がっても、ずっと低いままだろうと。


 うーん、まさしく脳みそまで筋肉で出来た女の子。


 だから今回の野宿でも、彼女には個別の仕事を頼んでいなくて、他のメンバーたちのお手伝いをしてもらいました。


 だって複雑な指示を出しても理解できないから……。


 そんなパワー自慢の彼女ですけど、なぜか美少女なんです。


 美術品のごとき白い髪。宝石みたいな赤い瞳。流線型の輪郭。まるで設計図で作ったのではないかと思うほど整った鼻筋。乳房から臀部まで黄金比率で膨らんでいる。


 あぁ、見た目が整いすぎて、本当にムカつく。


 でもこの美貌のおかげで、たまにバカな男たちが貢物をしてくれるので、うちのパーティーは臨時収入と補給物資が手に入るので、文句を言えないっていう……


 くそー、なんで神様は人間の見た目を平等に作らなかったんでしょうか。私なんて男子に間違えられるぐらい可愛くないのに。


 そんな嫉妬するぐらい可愛い女の子に、脳筋な言いがかりをつけられたんですから、きっちり反論しておかないと。


「シーダさんの場合、異論があるというより、悩んでる暇があったらトレーニグしろって言いたいだけでしょう?」


「うむ、その通り」


 シーダさんは、ふんふんと腕立て伏せを開始しました。


 お金があっても、なくても、彼女はずっとこんな調子です。


 なんなら彼女の親・兄弟・親戚すべてがパワータイプです。


 容姿、資産、地位、そんなもの一切関係なく、パワーがあるかどうかに重きを置いている一族です。


 そういう環境で育った女の子なので、あえて過酷な環境に身を置いて己を鍛えるために、うちみたいな弱小パーティーに参戦したわけですね。


「もう、こんな調子だから、うちのパーティーには私の世間知が必要なんでしょうよ……」


 美少女なのに、脳筋だと、わけのわからない詐欺に引っかかるんですよ。


 普通の詐欺よりも、屈折した詐欺に引っかかるというか。


 さきほどから話している、私がパーティーに入るきっかけになった詐欺だって、元はといえば、シーダさんがパーティー内に引っ張ってきたんです。


 そのことを蒸し返そうとしたら、なんと当時うちのパーティーを騙そうとした張本人がやってきました。


 クエスト手配師のゼランです。


「ちょっとお前らに耳寄りの儲け話があるんだが、手伝ってみないか?」


 いかにも怪しい儲け話であり、これが私たちの配信稼業の入り口になったんです。

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