第3話 生真面目で苦労人の戦士、アカトムさん

 戦士のアカトムさんですけど、野宿の準備としましては、火起こし担当です。そのため、乾いた木を集めて、井戸の水をくんできました。


「火起こしの材料を集めるついでに、野ウサギもゲットしてきたよ」


 アカトムさんのたくましい腕には、ノックアウトされた野ウサギが二匹もぶら下がっているではありませんか。


 すばらしい。きっちり火を通しておけば、明日の朝まで持つので、魚と一緒に焼いてしまいましょう。


 そんな有能戦士であるアカトムさんですが、もちろん女の子です。


 私より背が高くて、顔も大人っぽくて、鎧を脱いだら凄いんです(いやらしい意味じゃなくて、肉食獣みたいに筋肉がムキムキ)


 でも私みたいに男と間違えられないのは、きつねっぽい美人顔であり、そしてなによりも胸が大きいからでしょうねぇ。


 うらやましいですねぇ。私の胸もあれぐらい大きければ、きっと商店で買い物しても、割引されましたよ。


 そんな綺麗系のアカトムさんですが、うちのパーティーでは年長さんで、今年十九歳。しっかり者であり、かつ身分がお堅いので、パーティーのリーダーです。


 どう身分が堅いかといえば、なんと騎士の家系に生まれています。彼女のお父さんもお兄さんたちも騎士団に所属していて、魔王軍と戦っているんですよ。


 立派なお家柄ですね。


 だからこそ、他のパーティーによく指摘されることがありまして。なんで彼女みたいな堅い人間が、こんな弱小パーティーに所属しているんだって。


 その理由は、兄弟への反発と修行のためですね。


 彼女の兄たちは優秀だからこそ、平凡な妹に冒険者なんて無理だとあざ笑ったので、怒って飛び出してきちゃったんです。


 そのせいで彼女は騎士団のコネを使えないため、自分の足で冒険の仲間を探した結果、私たちと組むことになりました。


 うーん、苦労人ですねぇ。


 まぁいいんですけどね。私たちにしてみれば、ありがたいことですから。彼女みたいなしっかり者と組めるなんて。


 そんな生真面目でお堅い彼女ですから、レベルは4です。うちのパーティでは二番目に高いです。


 一番レベルが高そうに見えて、実は二番目というのが、いかにも運のない彼女らしいと思います。


「アカトムさんって、ものすごくしっかり者なのに、どうしてあの日は、詐欺に引っかかってしまったんですか?」


 私の直球の質問に対して、アカトムさんが悲しい顔で答えた。


「契約書のトリックというか、詭弁に翻弄されたというか、シンプルにお金に困っていたというか……本当に反省しているよ。あれはボクが詐欺だと気づくべきだったんだ」


 まぁ詐欺師は巧妙に騙してくるので、ただしっかりしているだけだと回避できないわけですね。


「うんうん、やはり世間知に優れた私は、このパーティーに必要ですね」


 という私の楽観論に対して、アカトムさんは財布を逆さにすることで答えた。


「君の世間知が優れていることに異論はないけどさ、我々がお金を稼ぐ能力が低いことにも異論はないだろ。毎度毎度野宿じゃカッコがつかないし、アルバイト三昧で冒険に出る回数が少なくなっていくのもバカげてるよ」


 レベルが低いパーティーは、お金がないんです。冒険で手に入る利益がほとんどないから。


 宿に滞在すれば固定費用が発生するわけですから、それを上回る報酬を手に入れないと、赤字で冒険することになります。


 でも低レベルパーティーが、実入りの良いクエストを受注できるはずがないので、しょうがなくアルバイトする日々になります。


 あれ、私たちって、フリーターだっけ? 冒険者のはずでは…………。


「アカトムさん、私は遊び人になったおかげで、一つの真理に到達しました。生活が苦しいときに、現実を見すぎると、メンタルが追い詰められるので、野宿の間ぐらいは楽しいことを考えましょう」


「たしかにある意味で真理だ。ただし、うちのパーティーにおける腕力自慢は、そうは思ってないみたいだけど」


 どうやら私の楽観論に対して、武道家のシーダさんが反論したいみたいですが、詳しいことは次回に持ち越しですね。

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