第2話

 俺は別に、何も感じていない。

 が、昔からではない。

 もっと前はかなり感情豊かに笑ったり悲しんだり、今では想像すら難しい煌めきに満ちていたのだ。

 まず、俺はさ、家族が嫌いだった。

 家族なんて、生易しくて嘘だらけで、別に良かったけれどしっくりこなかった。

 かといって何度も試みた通り家出をするのは本望ではない。やっぱり家族と笑っていたくなるし、でも逆も然り、俺は何をしても常に不安定な満足の中を泳いでいた。

 けど、自分に対して微かに抱いていた不信感は、学校に通っている間には顕在化しなかった。

 それは、良かったのだ。

 けれど、友人は作れなかった。なんとわがまま人間なのだろう、とか自分を責めてみたけれど、そんなことではないのだと今は分かる。


 俺、だってさ、普通じゃなかったんだ。

 普通なんかじゃなかったんだ。

 俺の家族は普通ではなかった。

 それに、俺自身もすでに普通ではなくなっていた。

 奴ら、何か普通だから境界線を平気で踏み荒らす、そんな感覚が肯定されているからか、どこかいつも嫌な感じが漂っていた。

 俺は知りたかった。

 ただ、知りたかった。

 殴られるのは当たり前だと思っていた、けれど違う。

 俺には殴れる拳があって、それは奴らより先鋭で殺伐としていた。

 「俺は…。」

 としか喋れない。

 奴らは、ただ悪魔のようにしか、思えない。

 

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