第6話 不協和音<零>

「蓮本当に大丈夫か」

こいつ音楽一筋のはずなのに。バンドが再始動して時間もそこまで経っていない。蓮が復活したとはいえ、またいつ曲が書けなくなるかわからない。ドラマなんて出たら、好きな音楽に打ち込める時間が減ってしまう。本当にわかっているのだろうか。

「あぁ俺ももう少し見識を広げる必要がある」

「お前がやる気あるのはわかった。睡眠と食事だけは今以上にしっかりしないとまた倒れるぞ」

「……何とかなるだろ」

「お前のその謎の自信はどこから湧いてくるんだよ。この前のライブ最終日だって睡眠不足で倒れたばっかだろ」

「あぁそういえば」

忘れていたかのような口ぶりだ。

「暁音さんこいつ大丈夫かよ」

「暁音なら電話しに出て行ったよ」

先程までいたはずの暁音さんの姿が消えていた。

「悠さんもこいつの面倒見れそうですか」

「……あーどうかな。一応努力はするよ」

「俺らメンバーも使ってくれて構わないんで」

「いいね。友情ごっこ。でも君たちも忙しくなるから他人のこと気にしている余裕なくなるんじゃないかな?」

「えっ。そうなんですか」

暁音さんからは何も言われていないけど、何か水面かで調整しているのだろうか。

「まぁ君たちも社会人なわけだしね。もっと顔売るために頑張ってってことで」

「はぁ。まぁでもそれぞれの経験がバンドのためになるなら」

「おーいい心意気」

悠さんが俺と蓮をジトっと眺めた。

「それで……君たちどちらかが暁音と寝たのかな?」

「……はっ」

急に意味のわからないことを言われ、カチンとくる。

「いやそうだろ。どうして君たちをここまで売り出すのか謎じゃないか」

「そんなの蓮の曲がいいからに決まってるだろ」

「おーおーそんなに声を荒げなくても」

「お前暁音さん長く一緒にいるんじゃねぇーのかよ。あいつがそんな個人的な感情で動くやつだと思ってんのかよ」

俺らだけではなく暁音さんも侮辱した。どうしてこんなやつが暁音さんの近くにいるんだ。そしてこの人が暁音さんがいない間俺らのことを見ることになるのか。

「まぁまぁ冗談だよ。そんなに怒らなくても」

何を考えているのかわからない。

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