第2話 ご自由に独立してくださいな

 マナマイト辺境伯親子は、転移魔法陣で王都に転移すると馬車で王城に向かった。


「国王陛下。マナマイト辺境伯ラナトス」


「マナマイト辺境伯ラナトスが子ララバルト」


「「馳せ参じました」」


「ご苦労。そなたらが話があるというのでな。聞いてやる。話してみよ」


「我が息子ララバルトとマリアンヌ王女との婚約と聖女に関することでございます」


「マリアンヌとララバルトのか……

しかしララバルトは聖女マリアと婚約しておっただろう」


 国王は渋いかをしながらそう言った。


「聖女マリアとは婚約破棄いたしました。

平民にも関わらずマナマイト辺境伯領で好き勝手をしておりましたし、聖魔法が多少使える偽聖女だということも判明致しましたので」


「マリアが偽聖女……しかしマリアは神殿で女神から加護を受け聖女に任命されたのだぞ」


「マナマイト辺境伯家も伝がありまして神殿のそれなりに高い地位の者から神殿長が私欲でマリアを聖女に任命したこと、王女が本物の聖女であると聞いております」


「王女が聖女なのは本当ではあるが……神殿長がのう……」


「ですのでマナマイト辺境伯領に本物の聖女であるマリアンヌ王女の派遣と我が息子ララバルトとマリアンヌ王女の婚約をお願いしたくございます」


 そう言ってマナマイト辺境伯はニヤリと笑った。


「マリアが偽物であるなら本物の聖女を派遣するのは構わぬが……王女とララバルトの婚約に関しては別の話だ」


「何故です!!聖女は派遣された領地の領主の年が近い令息と婚約する決まりでありましょう」


「そんな決まりはない。近年は各辺境伯家の令息と婚姻した例が多いと言うだけで歴代の聖女は聖女を引退し、実家に戻り婚約者と婚姻した者が多い」


「国王陛下。よろしいでしょうか?」


「ララバルト。許すから申してみよ」


「想い合っていれば問題ないですよね。

私とマリアンヌ王女は将来を近いあった中でございます」


 これは父である辺境伯と話し合って決めたことである。

 国王が渋ったらそう言えと


「一方の話では真実か分からなぬ。マリアンヌを呼んで参れ」


 国王は近衛騎士の1人に王女を呼んでくるように命令した。


 しばらくして近衛騎士がメイドと共に謁見の間に戻ってきた。


「国……」


「マリアンヌ!!何で王女である君がメイド服を着ているんだ」


 近衛騎士と共に入ってきたメイドが話始めるのを遮るようにララバルトがそう言った。


 アリストリス国王には子が3人いて王子2人と王女が1人だ。


 辺境伯家はほとんどパーティに参加しないが新年議会兼国王の生誕祭には参加する。


 ララバルトは成人をむかえたので初めて父である辺境伯と共に先月行われた国王の誕生日パーティに参加したのだが、そこで初めて見た王女に一目惚れしたのである。


「国王陛下。マリアンヌ王女殿下の入室許可を願います」


 メイドはララバルトからの問を無視して国王に王女の入室許可を求めた。


「許可する」


 ララバルトは混乱していた。

 屋敷に招いたり、パーティに出席していたマリアンヌ王女はメイド姿の女だ。

 だがそのメイドはマリアンヌ王女の入室許可を求め、国王も了解した。


「父上……どういうことでしょうか?あのメイドがマリアンヌ王女ですよね?

父上も一緒に挨拶しましたし、私の見間違いではないですよね?」


「あぁ、パーティに参加していた王女はあのメイドだ。

辺境伯邸にも何度か招いて会って話をしたし、間違いようがない」


 マナマイト辺境伯親子がコソコソ話をしていると豪華なドレスを身に纏った見覚えのある平民が入室してきた。


「国王陛下。私に聞きたいことがあるとのなので参りましたわ」


「おいマリア!!平民の貴様が何故、この場にいる」


 予想外にも婚約破棄し、辺境伯領から追放した平民聖女のマリアが入ってきたことでララバルトは混乱してそう叫んでしまった。


「あら?ララバルト様。数時間ぶりですわね。婚約破棄していただきありがとうございます」


「ララバルトよ。マリアンヌと想い合っているというのは嘘だったよだな」


 マリアに婚約破棄宣言したのだ。

 そのマリアがマリアンヌ王女であるのならばララバルトが言った王女とお互い想い合っているというのは嘘になる。


「国王陛下。これはどういうことでしょうか。

生誕祭のパーティに参加していたのも我が屋敷を訪れていた王女もメイドの彼女です」


「そのメイドが王女の名を騙って我が屋敷に来ていたのですか」


 ララバルトだけでなくマナマイト辺境伯も混乱していた。


 辺境伯邸に訪れただけだったら王女の名を騙ってというのもありえるが、パーティに参加し王女として国王の側に居たのだから国王が自身の娘である王女を間違えるはずもないのだ。


「あぁ……パーティにはマリアンヌの代わりにマリッサを出席させていたな」


「では……メイドはマリアンヌ王女ではない。

平民聖女のマリアが本物のマリアンヌ王女なのですか?」


「そうだが問題でもあるか。一部の者しか理由は知らなくてもほとんどの貴族は聖女マリアがマリアンヌ王女だということも知っているぞ」


「我が家は辺境伯家故、魔の森の対処が忙しく、王都を訪れることも年に数回ですし情報に疎いですからな」


 マナマイト辺境伯は冷や汗をかきながら国王にそう言い訳した。


「そうか。辺境伯なのは関係なかろう。マナマイト辺境伯以外のギルベルト辺境伯、ハルセルス辺境伯、アルカナ辺境伯は聖女マリアがマリアンヌ王女であることを知っているのだからな。

我がアリストリス王家に成り代わりアリストリス王国を我が物にしようと企んでばかりいたかられではないのかな」


 国王に悪事がバレていたことに顔を真っ青にしてただ呆然と立ち尽くすことしか出来ないマナマイト辺境伯親子。


「国王陛下。アリストリス王国をマナマイト辺境伯の物にされると国民が困ってしまいますから独立をお許しになられては如何ですか?」


「マリアンヌは優しいな。反逆者であるマナマイト辺境伯家を処罰するのではなく、独立を許してやるなんて」


 マナマイト辺境伯は王になりたかったんだから独立許してあげたって問題ない。


 左右はギルベルト辺境伯領、ハルセルス辺境伯領隣接し、前後はアリストリス国王と魔の森に挟まれていますからマナマイト辺境伯が王になったとしても脅威ですらない。


「よろしいのですか?許していただけると……」


「お主の反逆を許すわけではない。でもアリストリス王国はマナマイト辺境伯の独立を許してやる。

ここはアリストリス王国だ。お主らマナマイト辺境伯家はアリストリス国王の者ではなくなった私の気が変わる前にさっさと出ていけ」


 アリストリス国王からそう言われ慌てて出ていったマナマイト辺境伯親子。









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