第17話 業務と看護は違う

以前にも書きましたが、病院勤めの時の残業時間は物凄かった。


何故?


例えば、業務を淡々とこなすだけなら、残業も減ったと思います。


しかしながら、その当時の私の勤めてた病院の看護師達は業務をこなせばいいと思ってませんでした。


看護師なんだから、看護がしたい訳です。


例えば、意識が無く、人工呼吸器を付けていて、排尿は留置カテーテル。

食事は無しで、点滴やら経鼻カテーテルで

栄養補給剤を入れる。

排便は浣腸。


こうした状態の患者さんの部屋を訪室すると

まずは、人工呼吸器が指示どおりに設定されているかの確認、呼吸器の蛇腹に水が溜まっていないかの確認、呼吸器の加湿器の水があるかどうかの確認。

留置カテーテルがつまってないか?

排尿がきちんとされているかの確認。

点滴が時間通りに管理されてるかの確認と調整。

経管栄養の確認。


そして、バイタルチェック。全身状態の観察。

吸痰。

体位変更。


これは、業務です。

看護ではありません。


本来なら、患者さんにいろんな話をしたり、

固まった手足をマッサージしたり、

口から食べたり、飲むことは禁止されてても

ガーゼを濡らして唇に当てて感触を感じてもらう。

それが看護なんです。


それをやっていると時間はどんどん過ぎていきます。


だけれど、看護師は業務をこなすだけになると

ストレスが溜まります。


走りまわり、業務に追われるだけなら

なんの為に看護師になったのかわからなくなり

虚しくなるんです。


意識が無いし、意識が戻ることなんて無いし

患者さん自身も何もわからないから

それでいいじゃない?


そうでしょうか?

本当に何もわからないのか?

そんな事はわからない。

もしかしたら、何かの感覚は感じていても

自分からの発信ができないだけかも知れません。


こんなの看護師の自己満足じゃない?

そう言われると、そうかも知れません。


それでも、やはり、看護がしたい。

だから、みんな、残業になっちゃうんですね。

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