第15話 ふとももと薔薇

消火器内科病棟でのお話し。


飲酒による肝臓を悪くしての入退院を繰り返してた女性の患者さん。


当時、70代だったと思います。

薄い色付きメガメをかけて、髪の毛はキチンと染めておられたのをお団子にしてました。

パジャマじゃなくてネグリジェというか色っぽい感じ。


面白い方で検温なんかであれこれと話して下さいました。

女の生き方みたいな話だったと思います。


ある時、

「ちょいと良い物見せてあげようか?

カーテン閉めてよ。」


カーテンを閉めましと、おもむろにネグリジェの裾をハラリと。

そこには、

真っ赤な一輪の薔薇の花と男の人の名前が

ありました。

そうです。刺青です。


「これはね、若い頃に好きで好きでたまらない人に出会ってね。入れたんだよ。

綺麗だろ?」


ご本人はうっとりですが、あの、刺青って

若くてパーンと張った皮膚の時には迫力があるんですが、、。


今やお孫さんもいて、ご家族も良く面会に

来られて楽しそうにされてる患者さんに

こーんな燃えるような過去があったんだわと

不思議な思いがしました。


だって、目の前の人と薔薇の花がリンクできないんですもん。


しかし、今のご主人はできた人だなぁ。

勿論、ごくごく普通の方でした。


刺青も賛否両論ありますが、こんな話もありまして。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る