第11話 みどころのある後輩
私の勤めてい病院は上下の関係がありませんでした。
仕事終われば、師長だってちゃんづけ。
上下の関係なんて新しい伸びる若い子の
想像力をぶち壊すしかないと思います。
中堅になると後輩の面倒を見る事になります。
こうした時に、やたら新人なのに仕事の呑み込みが早くて要領のいい子がいます。
かたや、検温に行ったきり行方不明??
ナースコール対応へどこまで行ってしまったんだろ?
と思うくらい仕事の優先順位お構いなし。
ひとつ、ひとつの業務に時間がやたらかかる子がいます。
一見すると、前者がいいように思いますよね。
ところが、前者の子の担当した患者さんを
見に行きますと、体位変換したのはわかるけど、枕の位置は首に合っていない。
着衣ははだけている。掛け布団をめくると
手足に床ずれ予防のクッションが全く意味なさない位置につっこんであります。
おまけに、清拭の後の着替えが床に丸めて放ってあります。
ため息がでます。
この子は業務を回すだけで、看護をしていない。
後者のいわゆる間に合わない子。
よくよく観察していると、意識の無い患者さんへの声掛け、耳の裏まできちんと清拭しています。交換した着衣も畳んで袋に入れてあります。
自分のペースでやってるのでは無く、あくまでも患者さんに合わせいます。
ああ、この子は安心だわ。時間はかかるけど
いい看護師になるな。
そう、思います。
新人に仕事の早さなど期待してないのです。
新人のうちから、荒い看護をしてほしくないのです。
ではどうするか?
お小言を言うのは簡単です。
それよりも、一緒に処置をするのが一番だと
思います。
身をもって示す方がいいように思います。
私も新人の時に、とにかく患者さんの肛門を舐めるように清拭する看護師の先輩がおられました。(これは、職場のみんなが話してました。)
とっても、仕事が遅いのですが、とにかく
丁寧なんです。
今、患者さんの清拭(体を拭く)方法が
使い捨ての紙タオルの二、三本でやるそうです。
本来、確かに、体を拭くことが目的なんですが、熱々のお湯にタオルを絞って背中に当ててしばらくそのままにすると、
「あーーっ、気持ちいい。肩や腰が楽になるわ」
と患者さんがおっしゃって下さいました。
体を拭けばいいのでは看護ではありません。
どうすれば、しんどい患者さんに寄り添えるかを考えてこそ。
感染予防や看護師の業務軽減が目的らしいです。
しかし、看護師は患者さんの
「ああ、気持ちがいい〜。」
この一言が、ものすごい嬉しいのです。
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