第10話 患者さんの死との向き合い
看護師は人の死に慣れるのか?
これ、みんなで飲みに行ったりすると
変なナンパ野郎が一緒に飲みましょなんて
声かけてきますとね、必ず聞くんですよ。
この質問に一気に私達はむっとします。
何にもしらないくせに、バカじゃないの!
患者さんが亡くなりますと、死後の処置という事を行います。
この時、新卒の看護師はあまりの事に
呆然としてます。
そして、処置が始まるとぽろぽろと涙が
流れてしまいます。
看護師は病棟で泣いてはならない。
何故なら、こうしている最中でも
ナースコールは鳴ります。
その時に泣き顔は見せてはいけないのです。
患者さんが看護師が泣いていたら不安になります。
患者さんは敏感です。
誰かが亡くなったのではないか?と感じて不安になられます。
私も一年目は泣いてはいけない、いけないと
必死なんですが、涙がとまりません。
長い入退院の患者さんなら思い出もいっぱいあります。
突然の緊急入院でご家族が間に合わなかったり
すれば、最期にご家族に会いたかったに違いないと思えば感情が溢れてしまいます。
では、何年か過ぎたら患者さんの死に慣れるのでしょうか?
それは違うと思います。
患者さんの死に立ち会いたくないと願うようになります。
経験年数も重ねると後輩との夜勤を組まれます。
泣いてる後輩には初めてなんだから
泣けるのも当たり前だしなぁ。
泣かせてやりたいと思います。
じゃあ、代わりにナースコールはこっちが
対応しよう。
後輩の前では、しゃんとした姿を見せなきゃならない。
そうなると、もう、泣くことが本当に許されない。
ただ、胸の奥に無理やりに感情を抑え込みます。
患者さんが亡くなると、誰からでもなく
飲みに行こうと言い出します。
そこで、みんな酔っ払って泣きます。
「私達、あの患者さんに何ができたんだろう」
これは、大切な事なんです。
まだ、20代の人間なんですから。
人の死が怖かない訳ありません。
悲しい訳ありません。
胸が苦しくて潰れてしまいそうなのを
みんなで共有することで、明日も
仕事を続けられる訳なんです。
コロナ禍に、あるテレビ番組で
大きな病院の看護師、助産師が集まり
そこで、カウンセリングをやると言うのが
ありました。
みんな、話しているうちに涙が止まらない。
尋常ではない状況下で、患者さんと
マクス、防護服、フェイスシールド、手袋。
患者さんとの距離感があって、これで
いいのか?と辛かったようです。
ご家族はそこにいるのに、会うことができない。それも、どうしようも無くて、、。
そのまま亡くなられた方への無念さが
のしかかって苦しいと話してました。
看護師は患者さんの死に慣れて、何も感じなくなったら、それは看護師としては
終わりと思っています。
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