第9話 年末年始

病院は当時は29日が仕事納めと言う建前でした。

外来が閉まるだけです。


救急外来や病棟は普段以上の忙しさに

忙殺されます。


私の勤めていた病院は、救急車を断らないところでした。

年末年始に向けて、医師は空床を作りたがります。

安定してる患者さんは退院方向へ。

患者さんも年末年始は自宅に帰りたいので

文句はありませんでした。


すると、病棟に空床が15ベットくらい

作られます。


48人で満床。

そのうちの15床空き。

これには、年末年始勤務がこれでもかと入ってる者にとってはビビリまくります。

家族持ちや田舎に帰る看護師は休みが優先されます。

独身で地元住まいは狙いうちです。


休みの日は裏門の救急車が止まるドアだけが空いてますから、そこから出入りするのです。


そこのドアには急外の待ち合いがありました。

普通の日の外来くらいの患者さんが

待っておられます。


正直、はぁーー、、、。

こりぁ、病棟も悲惨だろうなぁ。

白衣に着替えて、病棟に入ると、

交換した点滴が捨てる暇も無かったのでしょう点滴台にやまもり。

カルテは散乱。処置カートの上はやりっぱなしの残骸。

ナースステーションには誰もいない。


思わず、患者さんの病室配置を見ます。

うわー。緊急入院三人もか、、。


これは、まずい。

とにかく、早めに業務に入らないとと

夜勤業務に取り掛かる。

できる事は早め早めに。


引き継ぎの為に戻ってきた看護師の

疲れ果てた様子をみながら、ここからも

入院の嵐だろうと覚悟を決めます。


脳梗塞、脳出血、心筋梗塞、肺炎など

さまざまな患者さんの入院依頼が来ます。

大抵は、すでに心肺停止状態からの蘇生。


人口呼吸器の準備やらで走り回ります。

どこの病棟でも呼吸器がいるので、

取り合いです。

最後は、オペ室の呼吸器まで出します。

これも、病棟の師長へ報告して、オペ室師長へOKを貰ってもらったりと。

その間はアンビューバックで補助呼吸を

手動でやり続けます。

手が痺れて力が入らない。

もう、気力だけです。



そんなこんなでバタバタの夜勤の朝方。

後輩が、

「おしたしさーん!」と呼ぶので、何かあったのかと走ります。

「見てください。初日の出ですよ。」


ええっ!この忙しいのに!!

と思いながら初日の出を見たら、なんだか

少し緊張でガチガチになってた気持ちが

緩みました。





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