第8話 クリスマスの夜勤

クリスマスは夜勤と決まっていました。


家族持ちは夜勤を外されます。

これは、どの病棟でも同じ。

文句を言うのは、彼氏がいる子達くらい。


聖夜なんて言うけれど、こんな夜は

馬鹿騒ぎして急性アルコール中毒で救急車で運ばれてくる同年代の若者が多いんです。

または、中年のおじさんが飲み過ぎて、

心筋梗塞を起こすんですね。


こんな夜だって、病棟の業務は何も変わらないんです。

救急外来から電話が鳴ります。

急性アル中の若者の入院依頼。

全くもって、ため息しかでないのである。

正直、バカじゃないの?

と思います。


そんなの一泊二日の入院だろうし。

点滴を入れて、排尿させるだけ。


その為だけに、空いてるベットを使うことの

虚しさ。


ストレッチャーで上がってきた若者は

「気持ちわるい、おぇー。看護師さん、

苦しいんだけどーーっ。」


はぁ、、。

飲み過ぎだ自分のせいじゃない?

貴方のこの入院の準備でどれだけの

時間と労力が取られると思ってるの?

そんな時間があったら、終末期の患者さんの

足や腰をマッサージできるのに。


そう言いたいのを堪えて、

「大丈夫ですよ。

点滴してアルコールを体から出せば

楽になりますよ。

それと吐き気止めの注射もしますからね。」


入院を受けるのは楽じゃない。

まして、夜間は二人体制。

ある程度の問診の聞き取りや記入。

医師の指示受け。

指示の通りに点滴を準備、明日の朝の

入院時検査をスピッツを作り、伝票を記入する。

患者さんの情報が直ぐにわかるように

カーデックスがあったから、それにも

年齢や名前、病名。 

指示、緊急時指示。

入院時看護計画の立案。


この看護計画が大変なのですね。

こんな急性アル中の看護計画を立てるって。


しかも、こういう患者さんに限り、ナースコールをやたら鳴らします。

訪室すると、ベッド中に嘔吐物が、、。

泣きたい気持ちになります。


ご本人は吐いてスッキリしたようす。


やれやれ、この大量の吐物。

シーツやマトレスパット、全然交換する訳です。

汚れた物は洗い流して消毒に漬けます。


これだけでも1時間は過ぎていきます。


クリスマスって大騒ぎするなら

自己責任でと叫びたかったのは

私だけではありませんでした。




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