新年ノ章 ご挨拶 3
次から次へと来る妖怪たちの姿を描いていたら、資料が
「これはまとめるのが、大変そうです」
一九は資料を一つ一つ見ていきながら、清書内容を考える。
「これは一つにして、こっちは使って、こっちはなし。これも……なしですかね」
使わない資料をぽいぽいと後ろに放り投げて、いつものように部屋を散らかす一九。鎌鼬がこの光景を見たら、尻尾を
「うん。考えがまとまりました。これでいきましょう」
書く内容が決まった一九は、文机に
『里のみんなで一緒に、頭領・見越入道へ新年のご挨拶。
今日の見越は
祝いの品も山のよう。お六と鎌鼬で
おっと新年の挨拶が遅れてすみません。化けましておめでとうございます。今年も一年、よろしくお願いします』
「一九さん。
「あ、はい」
お六に部屋の外から声をかけられ、一九は立ち上がって
お六は一九の部屋の散らかり具合に、目を丸くする。
「おやまあ。これはまたすごい散らかり具合で」
「あ! えっと、その、すみません! すぐ片づけますから!」
慌てふためく一九に、お六はころころと笑う。
「構いんせんよ。お仕事の最中でありんしたのでありんしょう? 瓦版は書けんしたか?」
「はい。ちょうど終えたところです」
「一九さんは、本当に仕事が早うていらっしゃいんすね。部屋の片づけが終わりんしたら、居間まで来ておくんなんしえ」
お六はしゅるしゅると音をたてて、首を縮めて戻っていく。
一九はせっかくの料理を冷ますわけにはいかないと、大急ぎで部屋を片づけた。完成した原稿は、下書きのものに
部屋の片づけを終えて、一九が早足で居間に行くと、雑鬼たちを含め、全員が食事に手をつけず、一九を待っていた。
「いっきゅー、おそいぞ!」
「すみません、お待たせいたしました」
「一九、また部屋を散らかしてたんだって? 部屋を散らかさないと仕事できないわけ?」
「うっ。で、でも、今は、ちゃんと片づけましたし……」
鎌鼬に
「鎌鼬、一九の説教はあとにせい。飯が冷めてしまうわい」
「……そうだね。食べようか」
見越の助け船に、一九はほっと胸をなで下ろした。
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