秋ノ巻 闇見と歌合 11
時刻は深夜となった。続々と里のモノたちが、見越の
人間は夜になれば
庭では早速、歌合が始まっており、歌を
「真っ暗すぎて、何も見えない!」
この里
「いやぁ。今年もよい夜じゃ!」
「真っ暗闇は、やっぱり落ち着くのぉ!」
妖怪たちは、
「これでは宴の様子が、書けないではありませんか……」
「いっきゅー、げんきだせよ」
「ぼくたちが、うたげのしょうさいを、おしえてあげるから」
「そうだぜ? そのためにおれたちが、いるんだからよ」
「その優しさが、心にしみます」
雑鬼たちに
「あ! ふらりびと、ばばあ!」
「そうだ、ばばあがいるよ!」
「ふらりびと、ばばあが、あかりになるぞ!」
一九が顔を上げると、目の前に姥が火の顔があった。
「うわぁ!?」
「なんだい! 人様の顔を見て悲鳴を上げるんじゃないよ!!」
姥が火が
「よく来たな、ばばあ!」
「ばばあでもやくにたつよ!」
「ばばあ! いいところにきた!」
「ばばあを連呼するんじゃないって言ってるだろうが!」
雑鬼たちが「ばばあ」を連呼し、彼女の怒りの
炎をまとった宙を浮く老婆の顔は、暗闇も相まって、明るい湯屋で会う時より怖さが増す。さらに小さな雑鬼たちを追いかける様は、飛んでいる勢いが速く
「こんばんはです。一九さん」
「こんばんは、ふらり火さん。……なんだか、落ち込んでいませんか?」
湯屋で見たときよりも、
「気にしないでくださいです。闇見のときは、いつもみんなに
「はぁー」とふらり火は、ため息をつく。するとますます火の勢いがなくなる。だが、一九は目を輝かせた。
「ふらり火さん!」
「わわぁ!」
一九が自分を掴もうとしているのに気づいたふらり火は、一九の手が届かない所まで一気に炎の羽で飛び上がる。
「危ないです! 僕は火の
「あ、あぁすみません。うっかり、興奮してしまって」
一九はふらり火に謝る。
ふらり火はふよふよと、一九の顔の高さまで戻る。
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